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ご!
しおりを挟む(乱交パーティーに連れて行かれちゃう……)
思いっきり手足を動かしてもがいてみるけど……力の差は如何ともし難くて……。
(こ、怖いよ。どうしよう)
その時、
「何をしている」
低くて威圧的な声が聞こえ、私を羽交い締めにしていた男はパッと手を離した。
振り向くとそこにはーー
「ラティオー卿?」
私の婚約(予定)相手、ラティオー伯爵が仁王立ちしていた。
無表情で立っているだけなのに、もの凄い覇気。
その顔を見た瞬間、キース様がすごい勢いでこっちを見た。
「まさ……か、君の婚約相手って」
気まずい空気の中、私はそっと頷いた。
助かったのは嬉しいけれど、私が彼に嫁ぐ前にキース様に身体を許そうとした事もバレた。
ラティオー伯爵がこんな私をどう思っているのか分からなくて、私は彼の顔を見れなかった。
「フローレンス嬢、君はこの婚約が嫌なのか?オクリース卿からは娘は婚約に同意していると聞いたが……。俺が嫌でこんな自暴自棄を起こしたのか?」
「い、いいえ。知らなかったんです。キース様がこんな人だったなんて……」
情けなくて涙が出る。
「そうか、なら帰ろう」
自分の選んだ人が良いと思ってた。けど、こんなヤリ○ンに引っかかるなんて……(※何度も言いますが、自主規制)
「ふんっ!白けたな。止めだ、止めだ。どーせこんな女、つまんねーよ」
カチン!
ソー○ー、ホー○ーめ!
心の中で悪態をついて、一応あっかんべーもおまけしておいた。
キース様のしようとした事は犯罪行為。だけど婦女暴行未遂で騒いでしまえば私の評判にも傷がつく。
その事を分かっているのか、ラティオー伯爵はキース様を追いかけたりはせず、逃げる彼を鋭い眼光で睨んでいた。
☆
「君は……」
ラティオー卿は私を馬車に乗せると、自分も素早く隣のシートに腰を下ろした。
体格差のためか、シートがどしんと一段沈んだような感じがする。キース様も私より大きかったが彼は更に二周りほど大きい。全てが圧倒的なサイズ感。
彼はすごく険しい表情。
無言だし……そりゃあ、怒っているよね。婚約の話は白紙になるのかな?
当然だと思う。自分の結婚相手になる女性があんな男と初体験済ませようとしてたんだから……。
「君は、あんな下衆野郎……。すまない、言い過ぎか……。つまり相手をした女性の数を自慢するような男(キース)のどこが良いんだ?」
「……」
彼の言うことが直ぐには飲み込めずに黙り込んだ。
「自慢?」
「アイツは仲間うちで食った女の数を自慢して、その女性の身体の特徴や、具合がいまいちだとか、そんな下卑た話をする男だぞ?定期的に貴族の仲間や裕福な商家の子息を招いて、卑猥なパーティーを開催していると聞く……」
「……キース様が?」
みんなの憧れのキースさまが、裏ではそんな事を?
「危険だと思い助けに入ったが、本当は行きたかったのか?」
真剣な顔でそんな事を言われ、私は首を大きく横に振った。
「まさか……、彼は社交界でも女性たちの憧れの的で……。私も好意を寄せていたんです。あ、あんな人だなんて知らず……」
「そうか……」
それきりラティオー伯爵は黙り込んだ。
私もそれ以上は何も言わなかった。
沈黙の空間が息苦しい。本当は何か言い訳をした方が良いのかもしれないけど、何を言っても白々しい気がして……。
「おやすみ」
「は、はい。送ってくださりありがとうございます」
破談になるかもしれないな。
そう思いながら私は彼の馬車を見送った。
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