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いち!
しおりを挟む「ん゛……ん゛……」
女性はベッドの上で手と足を大きく広げ括り付けられていた。
上には体躯の大きな男が覆いかぶさり女性の身体を貪っている。
女性の口には分厚い布が巻かれており、隙間から小さな声が漏れている。苦しげに、何かに耐えるように目を閉じ……そして室内には淫靡で湿った水音が響いていた。
☆
ずっと好きな人と身体を重ねるのはどんなに素敵なんだろうって想像してたーー
8歳頃から始まった性教育では、植物の雄しべと雌しべの話を聞いた。私の成長に合わせ、それは動物同士の交尾や繁殖の話になり、そして人間の夫婦の話になった。
その夫婦の生々しい行為を初めて聞いた日は、ショックで……。両親も、祖父母も周りの大人たちも、全てこの行為をしていると思うと世界がひどく不謹慎で不潔に見えた。
近所に住んでた4歳年上のリシェルにその事を相談したら、子供ねぇって笑われたけど……。
教本に乗っていた絵。下腹部からニョキンの飛び出た男性の証。
男の人ってこんなものが生えていて、自分で気持ち悪くないのかなぁ?なんてまじまじと眺めた。
その頃はあんなモノ……見るのも触るのもイヤだって思ってたけど……。
「よく考えてよフロウ。自分の子供が男だったらついてるモノでしょ?それでも気持ち悪い?」
そう言われて、弟が子供の頃お風呂から出た後裸で走り回り、よくメイドたちに追い掛けられていたことを思い出した。
「……怖くないし、気持ち悪くもないわ」
「そうよねー、だから大丈夫よ」
だって弟のはあんな変なものじゃ無かったもの。むしろちょんとしてて可愛かった。
「アレが少し大きくなっただけよ?身体が大きくなるのと同じだわ」
「……でも……」
「他には見たことないの?お父さんとかは?」
そう言われて遠い記憶を思い出した。
「あっ……そういえば、昔ね、湖で舟遊びをしていた時に水に落ちたことがあるの。その時助けてくれた男の子のね、……見たわ」
家族で近くの湖に遊びに行った時に溺れた私を助けてくれた男の子。その子は助けるために私を抱きかかえてくれたのに暴れて……。バタバタさせた足が水着に引っかかって……勢いよく下げた気がする。その子に悪いことをしたなって今でも思う。
でも、あの時は怖くて混乱していたのだ。
自分が水の中から助け上げられたことにも気付かないほどだった。
目の前に衝撃的なモノが飛び込んできて、急に冷静になったことを覚えている。
「確かにライリーよりは大きかったけど、こんなグロテスクじゃ無かったわ」
私は教本の男根の絵が乗ったページを天に翳した。
ひゃあ~、血管まである、
うん。やっぱり気持ち悪い。
「好きな人と閨に入るなら、大丈夫よ」
「好きな人ならいいかもしれないけど、私の両親って考え方が古いのよ?私は両親に結婚相手を決められると思うわ」
「え?そうなの?最近は恋愛結婚の方が多いのに……」
「うーん。お父さん私の結婚相手は自分で決めるって言ってるのよ。絶対に私の好みなんて聞いてくれないと思う」
お父さんの妹、すなわち叔母さまが恋愛結婚をして酷い目に合っているのだ。それ以来、我が家では恋愛結婚に積極的な人は居ない。
私の話を聞いて、リシェルは「うーん」と唸りながら腕を組んで考え込んだ。そして次の瞬間、思いついたように私の手を取り顔を近づけた。
「じゃあさ、結婚する前に好きな人を作って『初めて』をあげちゃえば?初体験だもの。政略結婚の相手よりも、パーティーで見つけたお洒落な貴公子の方がずっと優しくしてくれるし想い出になるよ。私が今読んでる恋愛小説がそんな内容なの。とってもロマンチックでね、憧れてるの」
「でも……結婚する時、純潔じゃなくてもいいのかしら?」
「今時、そんな事誰も気にしないって。結構みんな婚前交渉してるわよ。嫁ぐ相手が王族レベルだとまずいと思うけど……。」
「そっか……」
「女の身体は初めての人を忘れないの。初めて身体を拓いた男性のカタチを憶えちゃう。だから絶対に初体験は好きな人とがいいんだって」
その後、リシェルから借りた恋愛小説を読んだ。内容は叶わぬ恋をしたお姫様が、初恋の相手に純潔を捧げた後、政略結婚のために他国の王族に嫁がされ、愛する二人は離れ離れになったっていう悲恋物。
『嫁ぐ前に貴方に愛された証を私の身体に刻み込んでください。わたくしはその想い出だけを胸に生きていきます』っていうセリフが素敵だった。
ああ、私もこんな想い出が欲しいなー。
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