私が大聖女の力を失った訳

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二人の結婚式(本編完結)

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 王都を抜けて、二日目。
 馬車の窓には平和な田舎の風景が広がっていた。

「ここの土地は被害が少ないのね」
「うん。ここは元々人の往来も少ないし、局地戦も無かったしね……」

 二人で窓から外を眺めていたら小さな可愛い教会があった。大勢の人が礼拝に訪れている。平和な日常のありふれた光景。みんな、笑顔で家族連れも多かった。

 王都や、ウィルトス領は戦争の爪跡が色濃く残り、教会は臨時の避難所や治療施設になっている。こんな風にのんびりと礼拝する人々を見るのは久しぶりだった。

「ねえ、ノヴァ。ここの教会で二人だけの結婚式をしましょう!」

「え?」

 私がそんな事を言うとは思わなかったのだろう。ノヴァがびっくりした顔でこっちを振り返った。私だってこんなこと、急に言うつもりは無かったけど、今思い付いたのだ。

 きっとウィルトス領に着いても、当分の間結婚式なんて出来ないから。

「え……今から?」

「そう今から。馬車を止めて欲しいの。」

 驚く彼を引っ張るようにして馬車から飛び降りた。
 丁度礼拝が終わった時間みたいで、次々に人々が教会から出てくる。人々の流れが途切れたのを見計らって教会へと入ると、私は神父さんに二人だけで結婚の誓いをしたいのだとお願いした。

 優しそうな神父さんは直ぐに快諾してくれて、私たちはそのまま神様の前で誓いを立てた。



~~~



 誓いのキスの時
「心の準備がまだだから。」 
 そう言って彼は額にそっと口づけてくれた。
 なに?
 心の準備って?

 何だか物足りなくてノヴァの襟元をぐいっと引っ張ると、驚いている彼の唇に自分の唇を押し付けた。ブワッと赤くなる彼を見ていたら嬉しくて、声を出して笑ってしまった。

 ちょっと勢いがよすぎてぶつかった唇が痛くて……。でも、それが私達の始めてのキス。

 ギロリと横目で睨む彼に、目一杯の笑顔を向けると、彼は怒るのを諦めて手をきゅって握ってくれた。

「これで私達、夫婦だね」
「ああ」

 二人で手を繋いで教会を出ると小さな男の子がノヴァを指差して叫んだ。

「あっ!英雄ノヴァ様だっ!!」

 ノヴァの青い眼帯は目立つ。たちまち住民たちに囲まれた。

「わぁっ!フェリチュタス様も一緒だわ」
「ご結婚ですか?おめでとうございます」
「フェリチュタス様、ノヴァ様を治してくれてありがとうございます」
「これから、ウィルトスに行かれるんですか?叙爵おめでとうございます」

 住民たちは笑顔で次々と祝福してくれる。ノヴァは照れくさいのか、困ったように私を見た。

 最近、ノヴァの色んな表情を見るようになった。困った顔、怒った顔、意地悪な笑顔。

 どのノヴァも素敵で繰り返し彼のことが好きになる。囲まれて困っているノヴァに助け船を出そうと、彼の方へ歩いていったら、不意に後ろから

「ノヴァ様っ!!この国を守ってくれてありがとう。」

と、男の人の声が聞こえた。

 その声を聞いた瞬間、何故だか涙が滲んだ。ノヴァの今までの思いが報われた気がして……。見上げると見開いた彼の目も潤んでいて……。

「良かったね。」小さく呟いた声は彼の耳にも届いたみたい。ノヴァの目から流れた涙は何よりも綺麗に見えた。

 二人で顔をくしゃくしゃにして、変な泣き笑いみたいになった。

 待たせていた馬車に乗り込むと、祝福してくれた住人たちに大きく手を振った。
 
 見渡す限り広がる青空に、途切れ途切れの薄雲が模様を刻む。畑では均した土地に、種を撒いている人々が見える。

 この種が実を結ぶ頃、この国が元通り豊かで平和な国に戻っているといいな、そんなことを思いながら、馬車の窓に流れる風景を見ていた。

 
ーー完ーー

 辛い展開のこのお話を読んでくださった皆様、ありがとうございました。

 番外編で二人のその後を書きたいと思います。R18エロになる予定です。




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