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6.鍛練いやだぁー

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オースティン視点


 ヴァネッサに言われて身体を鍛えることにしたんだ。だけど、涙が出ちゃう。だって運動は苦手なんだ!

 まずは体力づくりのランニングとけが予防のための柔軟。

 トレーニングの間のヴァネッサは鬼みたい。僕が何回もサボっちゃうからなんだけど……。

 母上なんて、僕が辛そうにしているのを涙を拭いながら見ている。

 ヴァネッサも苦手なダンスの練習では足が痛いって涙ぐんで頑張っているのを僕は知ってる。それでも彼女はサボらないんだ。僕だって頑張ろうっ!

 朝の鍛練の後、母上が応援に来てくれた!
 あっ!
 母上が持っているのは……。

「僕の大好きなケーキだ!母上、ありがとう!」

 クリームのたくさん乗ったホールケーキ!
 僕、これが大好物なんだ!





ヴァネッサ視点





「王妃様、こんな大きなケーキを食べたら昼食が……。」

「昼食はティンの嫌いなお野菜たっぷりのサラダがあるの。それは食べなくてもいいと思うのよぉ。」

「駄目です、王妃様。」

「だってぇ、ティンがほっぺにクリームを付けてケーキ食べてるところ、可愛いでしょう?わたくし、ティンの満足そうに食べてるお顔を見るのが大好きなのよぉ!」

 ホールケーキなんて多すぎる!

 確かに美味しそうに口いっぱいにケーキを頬張る殿下は可愛い!
 けれど、ほっぺにクリームをつけるなんて全くマナーがなっていない!

 だいたい、野菜食べないなんて身体に悪いわ!!
 栄養バランスの感覚が無いのかしら?

 殿下はケーキが食べられないと思ったのか、悲しげに私を見ている。
 うるうると見つめるものだから、私も思わず甘くなっちゃう。

「じ、じゃあ、一切れだけ。」
「食べていいのぉ?やった!」

 ぱくりと大きなお口をあけてケーキを食べる殿下は幸せそうで……。私に弾けるような笑顔を見せた。思わず胸がキュンとしちゃう。

「美味しいよぉ!ヴァネッサも食べなよ!」

 うーん。
 マナーとか色々言いたいことはあるけど今回はこの笑顔に免じて……。

 殿下と『美味しいね。』って微笑み合うと、心がほぐれていくのを感じた。
  
 殿下ってホント不思議。
 王妃様だけじゃ無くて、厳しい家庭教師も陛下も、みんなが結局殿下の笑顔に絆されちゃう。

「ね!ティンって可愛い顔で食べるでしょおー。だから『きちんとしたお食事を!』って言ってた料理長も最近はケーキばかり焼いてくれるのよー!」

 これは……殿下に厳しく出来るのは、私だけじゃなかろうか?

 こういうのが持って生まれた魅力なのかもしれない。

 料理長もあてにならないのなら、まずは栄養バランスを整えた食事が急務かも。

「殿下、これからは朝の鍛練の後、わたくしがサンドウィッチか野菜ジュースをお持ちしますわ。」

「わあ!ヴァネッサが作ってくれるの?僕楽しみだよっ!」

 ニコニコと笑う殿下を見ると、私まで楽しくなってくる。

 しょうがないなぁ……。この笑顔には負けちゃうよ。

 王妃様みたいに甘やかすことは出来ないけど、私は私の方法で殿下に尽くしてあげよう、そう思った。
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