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6.セリーナ視点
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※虐待描写あり。
ルピナス……シャルロッテの母親
セリーナ……パメラの母親
ギデオン……シャルロッテの父親
私は貧乏が嫌い。
料理屋を営んでいた両親は馬車馬のように働いていて真面目な人だった。生活に困った事は無いけれど、それでも私は不満だった。
だってどんなに真面目に働いても、貴族女性が身に付けるようなドレス一枚だって買えやしない。
そんな私は玉の輿を夢見て、貴族男性の通う高級服飾ブランドに働きだした。
そして、出逢ったのがギデオン様。ソレイクス伯爵家の跡取りだった。
彼は既婚者だったけど、私を一番好きだと言ってくれる。私に仕事を辞めてもいいって言ってくれて、小さな家を用意してくれた。
我が儘な客の相手にうんざりしていた私は、直ぐに仕事を辞めて彼の愛人になった。
「俺の好きなのはセリーナだけだ。」
「妻とは政略結婚で冷めた関係なんだ。」
私に本気だと囁くくせに彼はなかなか離婚してくれない。
業を煮やして、彼の妻に会いにいった。
「ギデオン様と別れて!私のお腹には彼の子供がいるの。私たちが本当に愛し合って出来た子供なの。貴女との間には愛情なんて無いって彼は言ってたわっ!!」
ギデオン様の愛情は私一人のもの。
内心、勝ち誇ってそう言った私に向かってルピナスは蔑んだような眼を向けた。
「彼が貴女に本気でも、伯爵家のために彼は私とは別れないわ。それが貴族ってものよ。
お腹の子は本当に彼の子供なのね。仕方ないわ。最低限の生活は保証しましょう。」
毅然として美しいこのルピナスという女はまったく取り乱すことがなくて……。これじゃ私が惨めな女みたいじゃないの。
憎くて、憎くて、憎くて……。
あの女、いつか復讐してやる。
☆
私があれほど憎んだルピナスは呆気なく死んだと連絡を受けた。
あの女が死んだ後、私は後妻としてソレイクス伯爵夫人になった。
あの女の娘は、母親そっくりの顔。エメラルドブルーの瞳は、母親と同じように私を蔑んでいるようで……。
まずはシャルロッテを使用人部屋に放り込んで、全ての持ち物を、奪ってやった。けれど、流石は気位の高いあの女の娘。反抗的な目でじっと私を見ているだけで弱音なんて吐かなかった。早朝に起こして掃除と洗濯をさせて、朝食なんて食べさせなかった。
死んでしまうのは困るから食事は最低限だけ与えた。
逆らえば容赦なく叩いた。いずれお金をたんと出す好色爺にでも売ればいいから、身体に跡がつかないように叩いた。時々顔を水に沈めて、涎と涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て笑った。
でも、一番効果的だったのは、シャルロッテの代わりにあの子の味方になっていた使用人に鞭打つ姿を見せつける事。
幼い頃から自分の面倒を見ていた使用人が鞭打たれ、肌が裂けて血が出る様子を見ると、私に涙を流しながら懇願するの。
「止めてください。お願いです。」
シャルロッテが泣いて私に跪く姿を見ると胸がスッとする。まるでルピナスを跪かせているみたいな気分!
シャルロッテの味方をするとお仕置きされることが分かったら、使用人たちは辞めるか、私たちと同じようにシャルロッテを虐めるようになった。
自分に仕えていた使用人にこき使われる彼女をみるのは気分が良かった。
一番最後まであの子を庇った侍女が辞めた後、あの子の心は壊れた。
確か、ミアという名前だった。
恋人との結婚を控えていたミアの顔に熱湯の入ったポットを投げつけた。その子の結婚は火傷の跡が原因で破談になった。
失意の中辞めるミアを見送るあの子の絶望した顔。
それからシャルロッテの様子はおかしくなっていった。
どうやって虐めても何も反応しなくなってつまらない。
あの子は何処かに閉じ込めておいて、金を出す好色爺を見つけたら売ってしまおうと思ってサナトリウムへと送った。
☆
「セリーナ、どういう事だっ!!こんなに高額の請求書がきているぞっ!!」
ギデオン様はこめかみに青筋を立てて私の部屋に怒鳴り込んできた。最近彼はお金の事に細かくなってグチグチと煩い。こんなに余裕の無い男だったのかしら?
「パメラのドレス代です。パメラは適齢期ですのよ。もっと着飾らないと。わたくしだって、伯爵夫人として、同じドレスばかり着ていられませんもの。」
「は?何を考えているんだ!金は無尽蔵にあるわけではないぞっ!!」
あーあ、鬱陶しい。貴族のクセに妻のドレス代をけちるなんて……。
伯爵家ってたいしたお金が無いのね。
私はうんざりとして、大きくため息を吐いた。
ルピナス……シャルロッテの母親
セリーナ……パメラの母親
ギデオン……シャルロッテの父親
私は貧乏が嫌い。
料理屋を営んでいた両親は馬車馬のように働いていて真面目な人だった。生活に困った事は無いけれど、それでも私は不満だった。
だってどんなに真面目に働いても、貴族女性が身に付けるようなドレス一枚だって買えやしない。
そんな私は玉の輿を夢見て、貴族男性の通う高級服飾ブランドに働きだした。
そして、出逢ったのがギデオン様。ソレイクス伯爵家の跡取りだった。
彼は既婚者だったけど、私を一番好きだと言ってくれる。私に仕事を辞めてもいいって言ってくれて、小さな家を用意してくれた。
我が儘な客の相手にうんざりしていた私は、直ぐに仕事を辞めて彼の愛人になった。
「俺の好きなのはセリーナだけだ。」
「妻とは政略結婚で冷めた関係なんだ。」
私に本気だと囁くくせに彼はなかなか離婚してくれない。
業を煮やして、彼の妻に会いにいった。
「ギデオン様と別れて!私のお腹には彼の子供がいるの。私たちが本当に愛し合って出来た子供なの。貴女との間には愛情なんて無いって彼は言ってたわっ!!」
ギデオン様の愛情は私一人のもの。
内心、勝ち誇ってそう言った私に向かってルピナスは蔑んだような眼を向けた。
「彼が貴女に本気でも、伯爵家のために彼は私とは別れないわ。それが貴族ってものよ。
お腹の子は本当に彼の子供なのね。仕方ないわ。最低限の生活は保証しましょう。」
毅然として美しいこのルピナスという女はまったく取り乱すことがなくて……。これじゃ私が惨めな女みたいじゃないの。
憎くて、憎くて、憎くて……。
あの女、いつか復讐してやる。
☆
私があれほど憎んだルピナスは呆気なく死んだと連絡を受けた。
あの女が死んだ後、私は後妻としてソレイクス伯爵夫人になった。
あの女の娘は、母親そっくりの顔。エメラルドブルーの瞳は、母親と同じように私を蔑んでいるようで……。
まずはシャルロッテを使用人部屋に放り込んで、全ての持ち物を、奪ってやった。けれど、流石は気位の高いあの女の娘。反抗的な目でじっと私を見ているだけで弱音なんて吐かなかった。早朝に起こして掃除と洗濯をさせて、朝食なんて食べさせなかった。
死んでしまうのは困るから食事は最低限だけ与えた。
逆らえば容赦なく叩いた。いずれお金をたんと出す好色爺にでも売ればいいから、身体に跡がつかないように叩いた。時々顔を水に沈めて、涎と涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て笑った。
でも、一番効果的だったのは、シャルロッテの代わりにあの子の味方になっていた使用人に鞭打つ姿を見せつける事。
幼い頃から自分の面倒を見ていた使用人が鞭打たれ、肌が裂けて血が出る様子を見ると、私に涙を流しながら懇願するの。
「止めてください。お願いです。」
シャルロッテが泣いて私に跪く姿を見ると胸がスッとする。まるでルピナスを跪かせているみたいな気分!
シャルロッテの味方をするとお仕置きされることが分かったら、使用人たちは辞めるか、私たちと同じようにシャルロッテを虐めるようになった。
自分に仕えていた使用人にこき使われる彼女をみるのは気分が良かった。
一番最後まであの子を庇った侍女が辞めた後、あの子の心は壊れた。
確か、ミアという名前だった。
恋人との結婚を控えていたミアの顔に熱湯の入ったポットを投げつけた。その子の結婚は火傷の跡が原因で破談になった。
失意の中辞めるミアを見送るあの子の絶望した顔。
それからシャルロッテの様子はおかしくなっていった。
どうやって虐めても何も反応しなくなってつまらない。
あの子は何処かに閉じ込めておいて、金を出す好色爺を見つけたら売ってしまおうと思ってサナトリウムへと送った。
☆
「セリーナ、どういう事だっ!!こんなに高額の請求書がきているぞっ!!」
ギデオン様はこめかみに青筋を立てて私の部屋に怒鳴り込んできた。最近彼はお金の事に細かくなってグチグチと煩い。こんなに余裕の無い男だったのかしら?
「パメラのドレス代です。パメラは適齢期ですのよ。もっと着飾らないと。わたくしだって、伯爵夫人として、同じドレスばかり着ていられませんもの。」
「は?何を考えているんだ!金は無尽蔵にあるわけではないぞっ!!」
あーあ、鬱陶しい。貴族のクセに妻のドレス代をけちるなんて……。
伯爵家ってたいしたお金が無いのね。
私はうんざりとして、大きくため息を吐いた。
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