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アシュレッド視点
殿下の視察に同行中、その知らせは入った。
「レンザ様からの報告です。」
定期連絡とは違う分厚い報告に、不安が過る。
「殿下、我が家にキャサリーン一行が来たようです。どうやら今度は俺に寄生しようと目論んでるようですね。」
殿下は気まずそうに目を反らせた。
こういう反応をするって事は殿下はキャサリーンの行動を予想していたのだろう。
「公爵家の事だ。安全だよな?」
「何を言ってるんですか、殿下。」
「うん?」
「テティスに迷惑掛けたら見張り役を降りる約束だろ?」
「ああ、そういう約束だったな。」
殿下が惚けようとしたので腹が立って、部下が居るにも関わらず敬語を忘れ口調が戻る。
「キャサリーンの標的がテティスになった以上、俺は降りる。後は王家で何とかしてくれ。」
「ああ、アシュ。すまない。」
もうキャサリーンの面倒を見なくて済む。
それはいいが………
「殿下、視察は中断してください。王都に戻りますよ。」
「あ?」
「勿論殿下がキャサリーンを連れてってくれるんでしょ?」
「え?あーそうか、そうなるな。」
当たり前だ。俺はもうキャサリーンには関わらない。
「捕縛するにも罪名が必要だな?」
「公爵家への無断侵入で。一旦身柄を拘束すれば、後はどうにでもなるでしょう?」
「それにするか。分かった。視察は中止だ。」
「もう二度と公爵家に乗り込めないようにしてくださいね。」
「ああ。彼女達が平民に経って随分経つ。他の貴族との関わりが無い事は確認出来ている。姿を消そうと気にする者はいないだろう。」
あれほど彼女を慕っていた取り巻きも、平民となった彼女からは離れた。
馬車で帰ろうとする殿下を馬に乗せ、俺は帰路を急いだ。
はやる気持ちを抑え手綱を握る。
あのキャサリーンだ。
絶対に公爵家に何回も押し掛けるだろう。
人の良いテティスは彼女の要求に応じてしまうかもしれない。
テティスと結婚出来て浮かれていた自分がうらめしい。
ーーーー
公爵邸に着くと、丁度キャサリーンたちが来ていた。図々しくも昨日宿泊したらしい。
久しぶりに見る彼女の顔に虫酸が走る。
俺は遅れて部屋に入ってきた殿下に全ての対応を任せた。
★★★
テティス視点
アストマイオス殿下は疲れた表情で息を切らせて入ってきた。
「アシュ、はえーよ。」
「殿下!」
キャサリーン様は自分に冷たいアシュレッド様を諦め、涙を浮かべ殿下に駆け寄った。
殿下はアシュレッド様のような冷たい視線では無く、呆れたように彼女を見ていた。
「やることが何も変わってないね。キャサリーン。今度はアシュレッドに寄生するつもりだったの?」
「…殿下…。」
誰も自分を助けてはくれないと悟り、キャサリーン様は俯いて唇を噛む。
「アシュレッドは私の指示で君に援助していただけだし、学園にいる時だって君の見張りとして付けていただけだよ。」
「あ、あの、それじゃあ、娘の純潔を守って欲しいって言ってたのは………」
エルザ様が戸惑いがちに会話に割って入る。
「別に純潔なんてどうでもいいよ。君たち娼館ぐらいでしか働けないでしょ?娼館ってさ、妻を持てない裏稼業の人間がよくいくからさ、そんなところで王宮の事をベラベラ喋られるのは困るからね。もうどうでもいいよ。君たち二度と自由には外へ歩けないし。」
「そ、そんな………。」
あの高飛車な態度が鳴りを潜め、エルザ様はへなへなとその場に座り込んだ。
「二度と……。」
エルザ様も状況が不利だと漸く諦めたらしく、力なく呟いた。
「で、で、殿下、き、キャサリーンお嬢様は、あ、アシュレッド様の初恋の…」
「黙れ!!!」
侍女のコリーの言葉を遮るように殿下が大声を出した。
自分の話題が出た事で今まで静観していたアシュレッド様も口を開いた。
「俺がキャサリーンを好きだった事なんて一瞬も無いよ。」
「で、でも………。噂では……」
「キャサリーンが家にくれば、家の庭園の虫退治が出来る、そんな話さ。」
「む、虫退治………。」
「そんな話はどうだっていい、殿下こいつら連れてって。」
「ああ、分かった。アシュ今までの働き感謝する。お蔭でフローラを守れた。」
「ああ、さっさと俺の視界から消してくれ。それと、丁度よくこいつらテティスの服を着てるな。」
「あー、そうだな。」
アストマイオス殿下はニヤリと笑う。
「公爵邸への無断侵入と窃盗だ。」
その笑い方は王子様には似合わない。悪役専門の役者のように堂に入っていた。
「ほら、行くぞ。」
放心している彼女達を殿下と護衛は雑にずるずると引き摺って行った。
殿下の視察に同行中、その知らせは入った。
「レンザ様からの報告です。」
定期連絡とは違う分厚い報告に、不安が過る。
「殿下、我が家にキャサリーン一行が来たようです。どうやら今度は俺に寄生しようと目論んでるようですね。」
殿下は気まずそうに目を反らせた。
こういう反応をするって事は殿下はキャサリーンの行動を予想していたのだろう。
「公爵家の事だ。安全だよな?」
「何を言ってるんですか、殿下。」
「うん?」
「テティスに迷惑掛けたら見張り役を降りる約束だろ?」
「ああ、そういう約束だったな。」
殿下が惚けようとしたので腹が立って、部下が居るにも関わらず敬語を忘れ口調が戻る。
「キャサリーンの標的がテティスになった以上、俺は降りる。後は王家で何とかしてくれ。」
「ああ、アシュ。すまない。」
もうキャサリーンの面倒を見なくて済む。
それはいいが………
「殿下、視察は中断してください。王都に戻りますよ。」
「あ?」
「勿論殿下がキャサリーンを連れてってくれるんでしょ?」
「え?あーそうか、そうなるな。」
当たり前だ。俺はもうキャサリーンには関わらない。
「捕縛するにも罪名が必要だな?」
「公爵家への無断侵入で。一旦身柄を拘束すれば、後はどうにでもなるでしょう?」
「それにするか。分かった。視察は中止だ。」
「もう二度と公爵家に乗り込めないようにしてくださいね。」
「ああ。彼女達が平民に経って随分経つ。他の貴族との関わりが無い事は確認出来ている。姿を消そうと気にする者はいないだろう。」
あれほど彼女を慕っていた取り巻きも、平民となった彼女からは離れた。
馬車で帰ろうとする殿下を馬に乗せ、俺は帰路を急いだ。
はやる気持ちを抑え手綱を握る。
あのキャサリーンだ。
絶対に公爵家に何回も押し掛けるだろう。
人の良いテティスは彼女の要求に応じてしまうかもしれない。
テティスと結婚出来て浮かれていた自分がうらめしい。
ーーーー
公爵邸に着くと、丁度キャサリーンたちが来ていた。図々しくも昨日宿泊したらしい。
久しぶりに見る彼女の顔に虫酸が走る。
俺は遅れて部屋に入ってきた殿下に全ての対応を任せた。
★★★
テティス視点
アストマイオス殿下は疲れた表情で息を切らせて入ってきた。
「アシュ、はえーよ。」
「殿下!」
キャサリーン様は自分に冷たいアシュレッド様を諦め、涙を浮かべ殿下に駆け寄った。
殿下はアシュレッド様のような冷たい視線では無く、呆れたように彼女を見ていた。
「やることが何も変わってないね。キャサリーン。今度はアシュレッドに寄生するつもりだったの?」
「…殿下…。」
誰も自分を助けてはくれないと悟り、キャサリーン様は俯いて唇を噛む。
「アシュレッドは私の指示で君に援助していただけだし、学園にいる時だって君の見張りとして付けていただけだよ。」
「あ、あの、それじゃあ、娘の純潔を守って欲しいって言ってたのは………」
エルザ様が戸惑いがちに会話に割って入る。
「別に純潔なんてどうでもいいよ。君たち娼館ぐらいでしか働けないでしょ?娼館ってさ、妻を持てない裏稼業の人間がよくいくからさ、そんなところで王宮の事をベラベラ喋られるのは困るからね。もうどうでもいいよ。君たち二度と自由には外へ歩けないし。」
「そ、そんな………。」
あの高飛車な態度が鳴りを潜め、エルザ様はへなへなとその場に座り込んだ。
「二度と……。」
エルザ様も状況が不利だと漸く諦めたらしく、力なく呟いた。
「で、で、殿下、き、キャサリーンお嬢様は、あ、アシュレッド様の初恋の…」
「黙れ!!!」
侍女のコリーの言葉を遮るように殿下が大声を出した。
自分の話題が出た事で今まで静観していたアシュレッド様も口を開いた。
「俺がキャサリーンを好きだった事なんて一瞬も無いよ。」
「で、でも………。噂では……」
「キャサリーンが家にくれば、家の庭園の虫退治が出来る、そんな話さ。」
「む、虫退治………。」
「そんな話はどうだっていい、殿下こいつら連れてって。」
「ああ、分かった。アシュ今までの働き感謝する。お蔭でフローラを守れた。」
「ああ、さっさと俺の視界から消してくれ。それと、丁度よくこいつらテティスの服を着てるな。」
「あー、そうだな。」
アストマイオス殿下はニヤリと笑う。
「公爵邸への無断侵入と窃盗だ。」
その笑い方は王子様には似合わない。悪役専門の役者のように堂に入っていた。
「ほら、行くぞ。」
放心している彼女達を殿下と護衛は雑にずるずると引き摺って行った。
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