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世界一の暗殺者死す
破-2
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確かに刺した筈なのに、真新しいナイフは血にまみれていなかった。刺した感触も他とは違う不思議で体験したことのないもので魁斗の心に異様な気持ちをもたらした。
「カッカッ、まだまだ青いな」
魁斗に反論する余力はなかった。あるのは自分という曖昧な意識。いろいろな思いがあふれてくる。矮小な自分も、自信家な自分も。
「ターゲットはドナミエトの幹部。つまり重徳、あんただ」
惰弱な虚勢でしかないが、魁斗は自分を偽れない事を自覚した。
「父だからと気を抜けば……」
フッと気配が消えていた。たった一瞬、いや瞬を超えた速さで重徳の輪郭がぼやけたように消えたのだ。
「こうなる。シュッ!! てな、具合に」
手刀で、スゥっと服だけ綺麗に切られていた。鮮やかな手並みで魁斗は微動すら出来なかった。
重徳は既に、魁斗の後ろをとっていた。暗殺者にとって屈辱でしかない。僅かな、嫌悪感と自分への怒りが魁斗に湧いた。
「ボクの後ろに立つな!」
右拳を左手で覆いながら流れるように右肘を打ちこんだ。だが、柔軟な筋肉からくる繊細な動きに力をそらされた。
「随分と直情的。素直でかわいいねー」
スッと真横に重徳は立ち、魁斗の頭を撫でた。父と息子のただのコミュニケーションだとでもいうように。
「父ちゃん、あんたを超えたい……いや。超えてやる!!」
丹田から、全身に血液が沸騰したように流れ出す。練気という技だった。
「思えば、仕事してるのに煙草を吸うあんたはおかしかったよ。臭いをわざわざ消していたのに」
「カッカッ、今さらだな」
「カッカッ、まだまだ青いな」
魁斗に反論する余力はなかった。あるのは自分という曖昧な意識。いろいろな思いがあふれてくる。矮小な自分も、自信家な自分も。
「ターゲットはドナミエトの幹部。つまり重徳、あんただ」
惰弱な虚勢でしかないが、魁斗は自分を偽れない事を自覚した。
「父だからと気を抜けば……」
フッと気配が消えていた。たった一瞬、いや瞬を超えた速さで重徳の輪郭がぼやけたように消えたのだ。
「こうなる。シュッ!! てな、具合に」
手刀で、スゥっと服だけ綺麗に切られていた。鮮やかな手並みで魁斗は微動すら出来なかった。
重徳は既に、魁斗の後ろをとっていた。暗殺者にとって屈辱でしかない。僅かな、嫌悪感と自分への怒りが魁斗に湧いた。
「ボクの後ろに立つな!」
右拳を左手で覆いながら流れるように右肘を打ちこんだ。だが、柔軟な筋肉からくる繊細な動きに力をそらされた。
「随分と直情的。素直でかわいいねー」
スッと真横に重徳は立ち、魁斗の頭を撫でた。父と息子のただのコミュニケーションだとでもいうように。
「父ちゃん、あんたを超えたい……いや。超えてやる!!」
丹田から、全身に血液が沸騰したように流れ出す。練気という技だった。
「思えば、仕事してるのに煙草を吸うあんたはおかしかったよ。臭いをわざわざ消していたのに」
「カッカッ、今さらだな」
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