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邪族の村―タダシ人間らしさを説く

第九話

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 僕は嘘つきだ。よく、自分にも嘘をつく。でもさ。

 僕はさ、とにかく生きているならやっぱりあきらめが必要だと思うんだ。毎日仕事つらいなぁ、そう諦めるのではなくて。毎日仕事がある暇しなくていいねぇ、とあきらめるのだ。ちょっと明るいことを考える。でも、本当に必要なことかよく考える。

 ちょっと考えればわかる。どこへ行っても理不尽な力は働くのだ。不可視の強制力か、運命とは違う、言葉遊びのようだけど宿命というやつだ。自分が一番よくわかるだろう。

 どれだけ人を好きで愛していても、報われない愛と気づくときのように。宿命はやってくる。それを諦めるも、奪い取るも分別さえ出来ていれば、自由だ。報われない愛だから、叶わないことは決まっているが。

 人の価値観はそれぞれ違うだろう。正義も悪もカッコいい、かわいい、なんて理由でいいかげんなものでも僕はかまわないと思う。

 だから、僕は自分のいいかげんさで生きている。明らめるのも、また僕のカッコいいと思ういいかげんさである。

「あきらめろ、お前らはもう邪族とやらに目をつけられただろうな。僕が邪族を殺したから」


 ぅ、とか、あぁ、しか言わなくてもわかるんだよ。お前らはあきらめていない。まだ、誰かが助けてくれる。なんて、な。僕はそれをカッコいいとは思わない。

「今していることがお前らのあきらめなら、僕はそれを明らめさせる」

 間違ってはいけない。僕が君らを助けるんじゃない。君らはただ与えられた、つかの間の泡沫を見るか僕の明らめに巻き込まれて一緒に笑うかどっちかを選びあきらめて欲しい。

「さあ? どうする。君たちは抗うか、受け入れるか」

 ぅ、とか言いながらも彼らは考えているのがわかる。決してまだ壊れてはいない。ただ、忘れているだけだ。生きる欲望や食べる楽しみ。いろいろなものをあきらめて戦わなかった、戦えなかった。

「立ち上がれば、君らには生きる場所を与えよう。この村は邪族の村ではない」

『人間の村にしよう』

 僕は漆黒の神殿に、拳を叩き込む。

「さあ、邪神なんて怖くない! 繰り返せ」

「ぁ、ぅ、あぁ、ぉ、い」

「よし。ついてこいよ? 君らにはのんびりをさせてあげられるように。僕と一緒に考えよう」

「だから……貴方はわかっていない。邪神を甘く見ているから」

「おう、いいんじゃないか? それでも僕は諦めない明らめはするけどね」

 もっと感情が揺さぶられる何かを女の子よ、君にも見せよう。誰かが命を果てても、まだそいつはいるんだ。魂になってな。俺のように。もしかしたら邪族になんて生まれ変わっているかもな。そしたらまた、会えるだろ?

 違う、別人になっていてもな。
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