ロードオブヴァンパイア

山波斬破

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真なる我に目覚めた俺氏

血に刻まれた記憶―夢―

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 ぼんやりと、浮かぶ記憶の残滓のような。ひどく懐かしいこの気持ちはなんであろうか。母の叱る声に身をすくませ、父の剣の指導にいやいや付き合わされた。そこには、姉もいた。母は、父のようになれとしきりに言うのだ。強く、自分を律して民を守るためにと。父は辺境の貴族だった。俺みたいな筋肉もない、女みたいな男にはない男らしい姿をしていた。でも、父ゆずりの白銀の髪は自慢だった。でも、俺は異端だった。普通の人間の夫婦から僕は産まれたはずなに、ある時から成長がピタリと止まった。

 こいつは忌み子だと、国中の民から家族は俺を殺すように命じられた。それでも、家族は……戦ったのだ。この子はただ成長が遅いだけだからと。エルフでもないのに、なぜ成長が遅いんだ。ドワーフでもないのに、なぜ小さいんだ。その紅い瞳は魔の象徴ではないか!

 家族は、果てた。槍に貫かれ、目玉をくりぬかれ、魔法で焼かれて……。変わり果てた姿になっていた。俺はそれでも生きた。胸を剣で貫かれようと……生きた。ただ、復讐を誓って。戦い一人で国を相手に生き抜いた。気づけば復讐は終わっていた。大切なものは何一つ残っていなかった。俺は……なんなんだ。

 その時を境に血に餓えるようになった。渇きを覚えた。容姿が優れた俺は女の生き血を啜った。ただ、溺れて。

 俺は何かが違う。他の人間とは。だから人の体を切り裂き研究した。どこが違うんだろうかと。

 辿り着いた答えは魔核が俺の体にあったということ。それは、魔族という存在を世に知らしめる証だった。俺は魔族なのかと。人間であるのに。人間から産まれたはずなのに。

「おとうしゃま」

 場面が変わる。アウラがいた。まだ蝙蝠からヴァンパイアになったばかりの姿。俺の魔核を分け与えて娘にした。ただ、寂しかったのかもしれない。俺は家族を失い、希望がほしかったのかもしれない。アウラには悪いことをしたかなと思っていた。でも、アウラはただなついてくれた。父だと言ってくれた。

「アウラよ。我が眷属。決して離れないでくれ私を一人にしないでくれ。頼む……」

 アウラはニコリと微笑んだ。首をこてんとさせて。今は意味がわからなくても。きっと、アウラは俺を大切だと思ってくれる日がくるだろうか。

 俺はもうアウラを家族だと思っている。変わらない紲。ずっと大切にしよう。

 俺には過ぎた娘だ。かわいいアウラよ。
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