ヴァンパイアの誘惑

ボアレア魔法学園

熱血教師

　私は彼の魔術から逃れられる自信がない。魔女がなぜ魔術を避けたのか。死に絶えた魔女は魔術の造詣ぞうけいに深かったのは事実として語られている。だが、魔女が狩られていった歴史が魔女を今の衰退した現状の原因を作ってしまった。しかし、はるかに人間社会に潜むのが上手いヴァンパイアはまるで人であると装いながら、魔女裁判の裁定が行われるのを嗤う嗜虐趣味があった。

　太古の時代から連綿と繋いできた血脈を絶やさぬよう隠れた魔女はしかし若い魔女でしかなかった。魔女裁判は魔女から魔術のなんたるかを奪ったのだ。

(魔女裁判なんて……私の世界でもあった話だよ。でも魔術ってなんだか不気味な気がして私は苦手だった。秘密主義だもの、嘘がきっと溢れているような気がしたのよね)

　唯美の言葉に違和感がある。――そうだ、確かに魔術のない世界から来た、そう唯美は言ったはずだ。なのに魔女裁判？　おかしな話だ。


(いやぁ私は幻想とか盲信だとしか思えなかったんだよね！　頭よりまず体が先に動く質だったから)

　暑苦しいとは思っていたが、脳まで筋肉で出来ているのか。この女は、私とは真逆のような気がする。だが魔術的な繋がりが何かあるようなそんな予感を彼女から感じた事がある。まるで磁石が引き合うように。だとしても今は反発を感じる。

「少し静かにしてもらえない？」

　頭の中を整理しようと必死に回転させているのに、まるで彼女はそれを拒むような態度で語りかけてくる。言葉通りに彼女を信じるのは出来ないそんな苛立ちを感じてしまう。

　ジークが私を感情的にさせる。

(部屋にこもってるだけじゃダメだよ街に繰り出して気分を変えなきゃ！　さあ太陽が私たちをよんでいる！)

　暑苦しいやつだ。

「今は月だがな？　夜だぞ」

(てへぺろ！)

　もう、ツッコまない。芸人ではないぞ私は。