【完結】いわゆる婚約破棄だったが、見ているだけではない。

86 苦労人→秘書長補佐編⑧ 卒業

「フユ、早いよ」

「アキ、ごめん。珍しい人に逢っちゃった」

「誰？あ、補佐さんだ」

「名前？そうだ、なんで名前…なんだろう」


何かを思い出しそうだ。

そうだ、名前があるはずだ。

何で、そんな簡単なことを忘れていたんだ。


「ここから出たい？」

そうアキさんが言う。


「ここよりも大変だけど、いい？」

フユさんが確認してくる。


「もう、ここには居られない感じはあります」

そう、つぶやく。



「なら、目覚めなさい。私たちとも、またきっと逢える。今のままなら大丈夫」



アキさんがそう言ってすぐに、自分の中の何かが急速に上がっていくのが分かる。

病室に眠る自分の目が覚めたのは、すぐに気がついた。

視界の端の方で、家族が喜んでいる。

あの世界を卒業したんだとふと思った。