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1 暗躍する者→男爵令嬢編① 私は、主人公!。

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乙女ゲーム。

それは、いわゆる成り上がりの男爵令嬢が、身分が上の公爵令嬢に下剋上をすることを言う。

そこでは、身分の低い者が“作った行動”で、面白いように高位貴族が堕ちていく。



まぁ、生まれつき前世の記憶があったし、このゲームもしたことがあったから、途中までは順調に事を進めることができたのだけど。

乙女ゲームは3部作だったけれど、お小遣いが少なかったこともあって、最初だけしか買えなかった。


それでも、シナリオはばっちり覚えているわ。


公爵令嬢は、シナリオ通りに動いたし、王太子や宰相令息、大商人の息子や軍部の将軍の息子、魔王を討ち取った勇者の息子など、よりどりみどりだった。


婚約、結婚、そして王妃。

王妃教育はダメダメだから、私は専ら国王の癒やしとしての公務を行い、外交や内務などは側室にやってもらうつもりだった。


一応、計画は立てたのよ。

乙女ゲームでの最難関は、王妃教育だから。


シナリオでも、王妃で終わっていなかった。

でも、それは第2部で描かれたものだったから、その内容を又聞きして回避方法を考えたの。



最も、婚約式で自爆してしまったのだけど。

ちょっと、公爵令嬢たちの最期を思い出し笑いがてら、どんな事だったのかを口を滑らせたのが原因。


前世での最期の記憶は、王太子が私に剣を振り下ろしている姿。

その一瞬あとに、身体が熱くなって痛む間もなく、貧しかった村で生まれた私になっていたわ。


もちろん、その後に起きた事なんてしらないわ。



村での過ごし方や今後の身の振り方は、前に一度やっているから、それを踏襲すればいいだけ。

少しだけ、魔力はもちろん能力を上げることを忘れずに。



しかし、私が生まれた時から見えるローブを被った人が近くにいる。

男か女か分からない。

声を出していないのに、言葉が聞える。



この人、私以外には見えない・聞えない・知らないらしい。

しかも、どこへ行くにも付いてくる。

これって、背後霊?



ストーカーの強力版のような気がするけれど、なんなのかしらね。



ある時…



『ふむ、右へ行った方が良いだろう』



そんな言葉を聞いたのは、私が裁縫を習うために近くのおばさんの家に行く途中のことだ。



その右道に行くと、何もないはず。

ただし、左道に行くと馬車に跳ねられそうになった際に、私の本当の父親たる男爵と会うはずなのだが…



だから、私は言葉に従わずに左へ行こうとしたのに、いつの間にかに手を捕まれて、ずるずると右側に連れて行かれてしまった。

しかも、振りほどけないと分かるほど捕まれているのに、痕が残っていない。

器用な…


それよりも、男爵と会わなければ、私が貴族になることも出来ない!

どうしてくれるのよ!


『…そのうち、良いことがあるだろう』


そんな言葉を投げてきても、今の私には余裕がなかった。
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