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第27話 ペナルティーと損害賠償
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その言葉が彼女に届くやいなや、温かい気持ちが凍り付き、どす黒い冷気がじわじわ漏れ出し始めたのが分かる。
周りを飛んでいた精霊も、温和なものはこちらへ飛んできたし、ちょっと不穏な精霊があちこちからにじみ出てきた。
「それは、低ランクへの依頼受領命令にて動員した際の依頼であるエラの回収・焼却は、湖を広げた際に余波で壊滅し、回収・焼却を行う必要がなくなったこと。また、仮に動員されて、その作業に従事されていた場合、生死にかかる被害を被った可能性が高いことからです」
そこまで言うと、セレネはこちらをちら…と見たので、
「続けてください」
その言葉に、いささか優越感を覚えているのか、嫌みな笑みを浮かべると、
「次に、高ランク冒険者への依頼におけるエラの進化形態やそれに付随する事態の変化による討伐依頼についてですが、エラが進化しなかったこと。暴塩龍への進化の原因とも言えるヒキルトは、今回の討伐対象ではなかったことから、そもそも依頼が成立していない。」
こちらが劣勢であることを煽ろうとするのか、他のギルドマスターも、”そうだそう”と声をあげる。
「この事から、2つの依頼は、ペナルティーがなくてもいいと判断したのよ。」
いきなり、強気になって言い切るセレネだったが…。
「なるほど。ペナルティーなしですか。最初の依頼の段階で、うまく命令が伝わらなかったことまで、棚に上げられるとは思いませんでした。」
ギルドマスターの中でも、一番付き合いの長いの・を見ると、真っ青になっているのが分かった。たぶん、爆弾を落とすと分かっているだろうな。
「だから何ですか。こちらとしては、ペナルティーなしで決まった話で、これ以上の譲歩はない。これで決まりですか。」
「いいえ、きちんとペナルティーは頂きますよ、永続的にしてもいいのですけれどね。」
「永続的?」
その言葉には、回答せず、
「まず、塩山がなくなっても、こちらからの塩の供給は、これまで通り行います。」
「な…」
おそらく、塩山がなくなったから、こちらが強気に出られないと思ったんでしょうねぇ~。
「次に、湖は淡水ですが、そこからの水の利用に関しては、こちらから制限を付け加えさせて頂きます。」
「何を言っている。湖は、自然にできたものだから、利用制限など付けられる訳がなかろう」
そう言ったのは、比較的大きな街を抱えているギルドマスター。
たぶん、大量の水が労せずに手に入ったと思っているのだろう。
「あれは、精霊の湖です。利用を制限するなど、簡単にできますよ。」
精霊の湖とは、その湖を精霊が作ったものであることを指し、精霊に認められない場合は、水の使用ができないことを指す。
「何を言っている。あれは、魔法によるものだろうが。ただ、暴走していたから規模は桁違いに大きかったようだったが」
隣にいる彼女が、セレネのネックレスから滲み出た赤黒い精霊と話している。
「あれは、精霊魔法ですよ。知らなかったのですか?」
「そんな報告は受けていない。こちらでは、暴走魔法によるものとなっている。そもそも、あの場所にあった山々は、薬草の宝庫と呼ばれていた。それを消し飛ばしたのだから、逆に賠償金を頂いたいくらいだよ」
そう言うと、会議は終了したと言わんばかりな表情で、
「最後に何かあれば?」
では、最後通告とするか…
「この件は、既に周辺国や街、ギルド本部には連絡、承認済みです。ここには、ペナルティーに関することも含めてで、私たちは、各ギルドに対して、金貨100枚以上を要求するとともに、支払いが遅くなれば要求量も増えます」
セレネは、この言葉が虚偽だと思ったらしく
「何を言っているのやら?それでは、それ以上を賠償金として求める。会議は、終了だ。早く金を払えよ」
そう言うと、笑いながら会議室を出て行った。
周りを飛んでいた精霊も、温和なものはこちらへ飛んできたし、ちょっと不穏な精霊があちこちからにじみ出てきた。
「それは、低ランクへの依頼受領命令にて動員した際の依頼であるエラの回収・焼却は、湖を広げた際に余波で壊滅し、回収・焼却を行う必要がなくなったこと。また、仮に動員されて、その作業に従事されていた場合、生死にかかる被害を被った可能性が高いことからです」
そこまで言うと、セレネはこちらをちら…と見たので、
「続けてください」
その言葉に、いささか優越感を覚えているのか、嫌みな笑みを浮かべると、
「次に、高ランク冒険者への依頼におけるエラの進化形態やそれに付随する事態の変化による討伐依頼についてですが、エラが進化しなかったこと。暴塩龍への進化の原因とも言えるヒキルトは、今回の討伐対象ではなかったことから、そもそも依頼が成立していない。」
こちらが劣勢であることを煽ろうとするのか、他のギルドマスターも、”そうだそう”と声をあげる。
「この事から、2つの依頼は、ペナルティーがなくてもいいと判断したのよ。」
いきなり、強気になって言い切るセレネだったが…。
「なるほど。ペナルティーなしですか。最初の依頼の段階で、うまく命令が伝わらなかったことまで、棚に上げられるとは思いませんでした。」
ギルドマスターの中でも、一番付き合いの長いの・を見ると、真っ青になっているのが分かった。たぶん、爆弾を落とすと分かっているだろうな。
「だから何ですか。こちらとしては、ペナルティーなしで決まった話で、これ以上の譲歩はない。これで決まりですか。」
「いいえ、きちんとペナルティーは頂きますよ、永続的にしてもいいのですけれどね。」
「永続的?」
その言葉には、回答せず、
「まず、塩山がなくなっても、こちらからの塩の供給は、これまで通り行います。」
「な…」
おそらく、塩山がなくなったから、こちらが強気に出られないと思ったんでしょうねぇ~。
「次に、湖は淡水ですが、そこからの水の利用に関しては、こちらから制限を付け加えさせて頂きます。」
「何を言っている。湖は、自然にできたものだから、利用制限など付けられる訳がなかろう」
そう言ったのは、比較的大きな街を抱えているギルドマスター。
たぶん、大量の水が労せずに手に入ったと思っているのだろう。
「あれは、精霊の湖です。利用を制限するなど、簡単にできますよ。」
精霊の湖とは、その湖を精霊が作ったものであることを指し、精霊に認められない場合は、水の使用ができないことを指す。
「何を言っている。あれは、魔法によるものだろうが。ただ、暴走していたから規模は桁違いに大きかったようだったが」
隣にいる彼女が、セレネのネックレスから滲み出た赤黒い精霊と話している。
「あれは、精霊魔法ですよ。知らなかったのですか?」
「そんな報告は受けていない。こちらでは、暴走魔法によるものとなっている。そもそも、あの場所にあった山々は、薬草の宝庫と呼ばれていた。それを消し飛ばしたのだから、逆に賠償金を頂いたいくらいだよ」
そう言うと、会議は終了したと言わんばかりな表情で、
「最後に何かあれば?」
では、最後通告とするか…
「この件は、既に周辺国や街、ギルド本部には連絡、承認済みです。ここには、ペナルティーに関することも含めてで、私たちは、各ギルドに対して、金貨100枚以上を要求するとともに、支払いが遅くなれば要求量も増えます」
セレネは、この言葉が虚偽だと思ったらしく
「何を言っているのやら?それでは、それ以上を賠償金として求める。会議は、終了だ。早く金を払えよ」
そう言うと、笑いながら会議室を出て行った。
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