98 / 99
98 還俗
しおりを挟む
「良かった。間に合った」
突然部屋に現れたのは、ともえさんでその第一声がこれだった。
「突然来て、何が間に合ったのですか?」
「え、融合異世界のことよ。全部が真っさらになる前に、魔法側だけ分離複写したの。今は、細々とゲームという形で時を刻んでいるわ。これで、しばらくは安泰ね」
「結局、融合異世界は消えてしまったのですか」
「そうね。いつかは消えると思っていたけれど、思ったより早く消滅するっていう測定結果が出たから、ちょっと慌てちゃって。でも、一部でも残ることができたから、今は満足よ」
忘れていたけれど、融合異世界の前の世界はともえさんが趣味で持っていたもの。例えれば、水槽の中にいる金魚みたいな感覚だろう。
2つの水槽のお魚を間違えて、1つにしてしまった的な。
そうなると、一部でも残すことが出来れば、全体ではないものの趣味な世界として利用できるのか?
たぶん。
「これで、前とほぼ同じなものが戻ってきたということね。まぁ、自分の物としてもどった訳では無いけれど、そこはいいわ」
「すると、あの世界に行くことはできなくなるということですか?」
「そうね。私の物として戻ってきた…と言いたいところだけど、行く末を見るために天界と地界の共同管理領域にしたのだから、私の物とは言えなくなってしまったわ。行くことは可能だけど、朝日は行くことは無理でしょうね」
「なぜ?」
「還俗が決定しているからよ」
「還俗。つまり、天使をやめるということですか」
「そうよ。あなたは、あの町に神主見習いとして戻るの。ああでも、この天界にも出入り出来るから少し違うのかもしれないけれど」
「婆ちゃんと同じ」
「…そういえば、そうよね。なぜ気がつかなかったのかしら」
ともえさんは、その事に気がつくとぶつぶつ言っていたがよく聞き取れなかった。
しかし、通り魔が無かったことになって失踪に変わり、天界でこれからずっと暮らしていくものだと思っていたら、ここにきて還俗で町へ戻れるとは思わなかった。
「あ、この姿形のまま戻るのか」
別にあの町から出なければ、事情を知っている人ばかりだから問題がないと思うが、ここ天界と地上では時間の流れが違ったはず。
「サービスで、少し若返りして戻す予定よ。ええと、いくつくらい若返りたい?」
「選べるのかよ」
「10年以内にしてよね。寿命は影響しないから」
「そうか、寿命。いくつまで生きられるのかによるな」
「寿命ないわよ」
「ない?」
「不慮の事故以外なら、100年だろうが1,000年だろうが生きられるわよ。あれ?還俗するのにおかしいわね」
「気がつかなかったのか。最大で10年なら、10年で」
「10年ね。…はい。終了」
「…変わった感じがしないのだが」
「確実に10年分の若返りを実行しました。でも年齢は変えない方がいいわよ」
「まぁいいか」
突然部屋に現れたのは、ともえさんでその第一声がこれだった。
「突然来て、何が間に合ったのですか?」
「え、融合異世界のことよ。全部が真っさらになる前に、魔法側だけ分離複写したの。今は、細々とゲームという形で時を刻んでいるわ。これで、しばらくは安泰ね」
「結局、融合異世界は消えてしまったのですか」
「そうね。いつかは消えると思っていたけれど、思ったより早く消滅するっていう測定結果が出たから、ちょっと慌てちゃって。でも、一部でも残ることができたから、今は満足よ」
忘れていたけれど、融合異世界の前の世界はともえさんが趣味で持っていたもの。例えれば、水槽の中にいる金魚みたいな感覚だろう。
2つの水槽のお魚を間違えて、1つにしてしまった的な。
そうなると、一部でも残すことが出来れば、全体ではないものの趣味な世界として利用できるのか?
たぶん。
「これで、前とほぼ同じなものが戻ってきたということね。まぁ、自分の物としてもどった訳では無いけれど、そこはいいわ」
「すると、あの世界に行くことはできなくなるということですか?」
「そうね。私の物として戻ってきた…と言いたいところだけど、行く末を見るために天界と地界の共同管理領域にしたのだから、私の物とは言えなくなってしまったわ。行くことは可能だけど、朝日は行くことは無理でしょうね」
「なぜ?」
「還俗が決定しているからよ」
「還俗。つまり、天使をやめるということですか」
「そうよ。あなたは、あの町に神主見習いとして戻るの。ああでも、この天界にも出入り出来るから少し違うのかもしれないけれど」
「婆ちゃんと同じ」
「…そういえば、そうよね。なぜ気がつかなかったのかしら」
ともえさんは、その事に気がつくとぶつぶつ言っていたがよく聞き取れなかった。
しかし、通り魔が無かったことになって失踪に変わり、天界でこれからずっと暮らしていくものだと思っていたら、ここにきて還俗で町へ戻れるとは思わなかった。
「あ、この姿形のまま戻るのか」
別にあの町から出なければ、事情を知っている人ばかりだから問題がないと思うが、ここ天界と地上では時間の流れが違ったはず。
「サービスで、少し若返りして戻す予定よ。ええと、いくつくらい若返りたい?」
「選べるのかよ」
「10年以内にしてよね。寿命は影響しないから」
「そうか、寿命。いくつまで生きられるのかによるな」
「寿命ないわよ」
「ない?」
「不慮の事故以外なら、100年だろうが1,000年だろうが生きられるわよ。あれ?還俗するのにおかしいわね」
「気がつかなかったのか。最大で10年なら、10年で」
「10年ね。…はい。終了」
「…変わった感じがしないのだが」
「確実に10年分の若返りを実行しました。でも年齢は変えない方がいいわよ」
「まぁいいか」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる