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95 魂魄文明

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巨大な水槽に浮かぶ球体…しかも所々で脈っているように動く不気味なもの。
水槽の水は、血液を彷彿とさせる真っ赤で、そこにも血管らしいものが浮かんでいる。
そして、上から雨のように赤いシャワーが降り注いでいる。

「これはなんなのだ?」

見当も付かない。
大きさも人と比べても比較にならないほど大きいと推定できる。

「これは救済船を成長させているところよ」

そんな言葉と共に、どこからともなく、ともえさんの声が響いた。

「船の主は、みどり。正確にはコピーだけど、提供者に代わりはないから問題なし」
「みどりの船だって。そんなこと一言も言っていなかったぞ」
「彼女には、血液の数滴の提供を受けただけだから詳細は知らない。救済船を作るというのは知っていてもね」
「この救済船?は、どうするのだ」
「成体まで培養して、他の救済船と同じように世界の救済を行わせるのよ。ただし、みどりの意思に誘導されるようになるけれど」
「今、どのくらいの成長なんだ」
「時間に換算すれば、約80年ね。成体にするには約100年以上だからあと20年。ここは時間を加速させているから、このままで行けば約2日といったところかな。成体になっても成長は止まらないから、どんどん大きくなるわ。月や地球の大きさよりも大きい惑星規模もあるわ。恒星レベルの船も存在しているから、大きさだけを考えれば無制限ね。エネルギー量も桁違いな船も多い。みどりはどういう方向の船を希望なのか、成体になったら聞く予定よ」
「滅亡する世界を救済に行くのが救済船だと思ったのだが」
「そうね。基本は。そうとも限らないけれど」

モニター越しに見るそれは、そう言われても生体にしか見えない。
船と言われても、人工な部分はなく全部生体に見える。

「この船は、魔法文明と科学文明の目指す果て。精神文明の先、魂魄文明の技術が詰め込まれているものよ。全ての文明は、この魂魄文明を目指して発展を重ねていくの」
「ともえさんの持っていた、科学文明と魔法文明、今は融合異世界になってしまった世界の目標点は、この魂魄文明だった?」
「そうね。まずは精神文明だったけれど、それは潰えた。精神文明の先は魂魄文明だけじゃない。他にもいくつか進化の先があるの。まだ誰も見たことの無い文明社会が生まれるかなぁ~と思っていたのに、今は後始末に追われるなんて予想にしなかったわ」

うーん、ともえさん後始末に追われると言っているけれど、後始末をしているのは主に俺ではないだろうか?
いや、巻き込まれたと言うべきか…。
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