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44 帰省するための儀式?

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身分証明書と名刺をもらって、なんとなく違う会社の所属だと思ってしまった。
いや、実際はそうなっているのだろうけど、実感が湧かなくて。

こんな時は、外へ行って気分転換するのもいいなと思ったが、時間も早かったしお婆ちゃんと話をもっとしたいなと思ったら、故郷の町に行ってみてもいいかなって思った。

「よし、行こう。久しぶりの長期帰省でもいいはず」

実際のところ、数日実家に泊めてもらって知り合いと会うのもいいなぁと思っていたのだが、これが数日どころか1か月に及ぶとはこの時思っていなかった。
しかも、町とここの時間の流れそのものが違いすぎるなんて気が付く訳もなく、管理人さんに帰省してきますなんていう挨拶もなしで出掛けてしまった。


特殊な場所である町に帰省するには、面倒くさい方法取るしかない。
自動車では行けない場所にあるので、どうしたって電車を利用するしかないのだが、やっていることが儀式みたいで大変なのだ。

都市部にある環状線に乗って3周。時間にして3時間。
町へ行くためのローカル線に乗って終点まで。2時間。
終点で降りたら、町へ駅の電話機を使って送迎を頼む。待ち時間1時間。
駅に特別な列車が到着するので、それに乗って奥地へ。移動時間1時間。
町に移動するまで、なんと7時間もかかる。
でも、こういうことをしないといけない場所にある町へは、かなり特殊な場所。
聖地と言っても過言ではない。
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