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第1話 お父様
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今日は、婚約者さまのお父様に会う日。
毎月1回セッティングされていて、将来の家族となる時の前準備みたいなもの。
しかし、最近の婚約者さまは、学校で一緒になった知り合いの女の子に夢中。周囲の人からの好奇に満ちた視線を浴びても関係ないみたい。
私も何度も言ったのだけれど、「関係ない」とばっさり言われてしまう。
関係ないわけないでしょう、私たちの婚約関係は幼い時に決まったもの。幼馴染みで婚約者さま、実際幼い時は頻繁に会っていたし遊んでもいた。
それが今こうなっているのだから、時間は無慈悲だ。
私の心と周囲の声に背を向けて、今婚約者さまはどこへ行こうとしているのかしら。
お父様に会うために自宅を出発する。
自宅からお父様への距離は、ほとんどない。
お隣さんだからだが、家の規模は桁違いに違う。
こっちは一般庶民なのに婚約者さまは、国家元首を何人も出す国の重鎮一族。
2人のお父様が学友で、ほぼ同じに出生した子どもを何かの縁があると思って婚約させたのだ。
私としては、婚約者さまのご兄弟。双子のもう一人のお兄さまの方が良かったなと密かに思っていたりする。
そんなささやかな思いが通じているのか、お兄さまの方には婚約者がいない。
お父様が寄った席で話していたことがある。
「あいつがダメなら、誠を当てよう。そのために…しているのだからな」
これが何を言っているのかは、事情を知っている人なら直ぐに分かる。
そして、こうも思うのだ。
「婚約者が結婚するまで、お兄さんは結婚できないのか?」
「不遇だ。できの悪い弟にできのいい兄。婚約相手が逆だったら良かったのに」
実際のところ、私の婚約者さまはバカだ。
お兄さまがすらすらできるところも分からずに放り投げる。そして、こう言うのだ。
「将来に役に立たない事だから、出来なくても問題ない」
それで済ませるから成績は、中の下くらい。
教師が、お情けで与える成績なのだから、実際はもっとヒドイ。
風のウワサで、女の子の成績は上の下。
婚約者さまより出来ている。
婚約者さまが、女の子に勉強を教えていると公言しているけれど、それは違うと誰でも思う。
むしろ、成績が上がっているようにも。
「婚約者さま。私の婚約者である以上は、特定の女性と付き合うのは問題かと思います」
一応、苦言はしておかないと外聞が悪いと思った。
幼い時の思い出を胸に秘めながら、そう言う。
「何が問題なんだ。だれと仲良くするのか、自分で決める。だいたいなぁ、お前が婚約者というのも気に食わない。お前なんか、兄の婚約者だったなら問題ないんだ」
婚約さまの悪意のある言葉に愕然としてしまう。
そんなに私が否定されるとは思わなかった。
幼い時の思い出も壊された感じがした。
もうダメ。
毎月1回セッティングされていて、将来の家族となる時の前準備みたいなもの。
しかし、最近の婚約者さまは、学校で一緒になった知り合いの女の子に夢中。周囲の人からの好奇に満ちた視線を浴びても関係ないみたい。
私も何度も言ったのだけれど、「関係ない」とばっさり言われてしまう。
関係ないわけないでしょう、私たちの婚約関係は幼い時に決まったもの。幼馴染みで婚約者さま、実際幼い時は頻繁に会っていたし遊んでもいた。
それが今こうなっているのだから、時間は無慈悲だ。
私の心と周囲の声に背を向けて、今婚約者さまはどこへ行こうとしているのかしら。
お父様に会うために自宅を出発する。
自宅からお父様への距離は、ほとんどない。
お隣さんだからだが、家の規模は桁違いに違う。
こっちは一般庶民なのに婚約者さまは、国家元首を何人も出す国の重鎮一族。
2人のお父様が学友で、ほぼ同じに出生した子どもを何かの縁があると思って婚約させたのだ。
私としては、婚約者さまのご兄弟。双子のもう一人のお兄さまの方が良かったなと密かに思っていたりする。
そんなささやかな思いが通じているのか、お兄さまの方には婚約者がいない。
お父様が寄った席で話していたことがある。
「あいつがダメなら、誠を当てよう。そのために…しているのだからな」
これが何を言っているのかは、事情を知っている人なら直ぐに分かる。
そして、こうも思うのだ。
「婚約者が結婚するまで、お兄さんは結婚できないのか?」
「不遇だ。できの悪い弟にできのいい兄。婚約相手が逆だったら良かったのに」
実際のところ、私の婚約者さまはバカだ。
お兄さまがすらすらできるところも分からずに放り投げる。そして、こう言うのだ。
「将来に役に立たない事だから、出来なくても問題ない」
それで済ませるから成績は、中の下くらい。
教師が、お情けで与える成績なのだから、実際はもっとヒドイ。
風のウワサで、女の子の成績は上の下。
婚約者さまより出来ている。
婚約者さまが、女の子に勉強を教えていると公言しているけれど、それは違うと誰でも思う。
むしろ、成績が上がっているようにも。
「婚約者さま。私の婚約者である以上は、特定の女性と付き合うのは問題かと思います」
一応、苦言はしておかないと外聞が悪いと思った。
幼い時の思い出を胸に秘めながら、そう言う。
「何が問題なんだ。だれと仲良くするのか、自分で決める。だいたいなぁ、お前が婚約者というのも気に食わない。お前なんか、兄の婚約者だったなら問題ないんだ」
婚約さまの悪意のある言葉に愕然としてしまう。
そんなに私が否定されるとは思わなかった。
幼い時の思い出も壊された感じがした。
もうダメ。
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