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第10章 大事な記憶と魔法のお話
97 そして、私は1人になってしまった。
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友達が家族と共にいなくなったと分かってショックを受けていたが、その日から数日後、友達の1人が引っ越すことになった。理由は、何故か恥ずかしいから内緒というよく分からない返答。家族とともに、深夜に出ていったようだった。私の家族は誰も気が付かなかった。
私たちが暮らす平民街は、商人街と違って夜になると、ほぼ真っ暗な状態。家屋から漏れる光も極力外に漏らさないようにしているから、闇に慣れている人くらいしか出歩こうとしない。さらに、物音も結構聞こえるので、暗くなってきたら寝る。明るくなってきたら起きる。自然と同じ生活サイクル。
夜中に出ていくなら、きっと大きな音が街に響いたはずなのに、気が付かなかったのはおかしいのだが、その時の私は友達がもういないという事に更なるショックを受けていた。
最初の友だちがいなくなってから、1か月。様々な理由から友達がここを出ていき、私を残して全員いなくなった。平民街に限らず、スラム街でも子供がいる家族がかなりいなくなっているらしい。いなくなる理由や姿が見えなくなった時間なども平民街と同じタイミング。
でも、裕福な人たちからすれば、些細なこと。しかも、理由があっていなくなっているのだから、なおの事問題はないという。神殿の神官も、何が問題なのか?問題だと言うなら、その証拠が欲しいという。
同じような事は、2、3年ごとに起きていて、その時も問題提起をした者がいたらしい。しかし、ある時、街からいなくなってしまい、その後は消息不明。きっと消されたんだろうというウワサが出た。
ウワサは、その情報の不確かさから消えるのも早かった。いつの間にか、借金取りから逃げたという別の理由が神殿関係者と名乗る男からもたらされ、それがいなくなった理由ということで、騒いだ人や知り合いなどが納得したからだ。
しかし、問題提起した人が消えたとしても、子供を持つ家族がいなくなったのは事実。事実だけれど、神殿が関与したから、事件は終わりで、たまたまだろうということで誰も気にしなくなっていったのが現状だった。
ただ、護符や神力が子供たちがいなくなった時に限って、店先で多く見かけるのはなぜなんだろうと思っていた。使う人がいなくなったから、その分、売れ残っているのかなと…。
皮肉にも、それの答えは自分たちにその影響が来てから分かり、その時点では、どうにもできない事態になっていた。
駆けっこ友達がいなくなっても、平民街の空き家は少ない。空き家となったところに別の家族が引っ越してくるからだ。
他の街からの引っ越し組が多いので、この街で起きた子供のある家族の大量引っ越し事件は知らない人が多い。元々の住民も、言う必要のあることではないと思っているので、しばらくすれば前と同じ活気が戻るだろう。
子供もいる家族もある。
そして、引っ越してきた家族の子供だけが集まって、友達を作り、私の時と同じような駆けっこ友達が出来上がる。
私は、以前の友だちを思い出してしまうので、その子たちとは距離を置いていたら、いつのまにか、いなかったことにされていた。
私がたまに、姿を見せると近づいてくる子はいない。集まって何かを言いながら、指を向けて笑っている。それが嫌で、私がすぐに用事を済ませると家に帰る。家の中に留まっていることが多くなっていった。
そんな状況に親も何も言えなかった。
親も仲良くなった友を失ったため、私と同じような境地にあったためだ。新しく入ってきた人の中に入れないのも同じだった。
日々の生活に必要なものは、隣のおじさんのお店経由で購入…というか、提供されることが多いので困らない。おじさんのお店の細々としたこと。商品の品出しや店番、資金のやりくり、帳簿や役所に提出する書類づくり。こういうのを、おじさんと私の家族は共同でやってきた。
おじさんは奥さんと2人くらしだった。子供は、今はいない。私と同い年の女の子がいたと聞いたけれど、いつの間にかにいなくなっていたと言う。2人はそれ以上、話そうとせず、私の両親も何も言わない。
子供心に、これは聞かない方がいいと思っていた。
しかし、あの日、私たちの前に現れた女性は、私の将来の姿を想像させる存在だった。
***
エリーの愚痴
そうなっていたなら、早く言ってほしかった。
封印が解除される都度に、バックアップ体を取っていたこと。
なんでも、封印解除後の魔力は箱庭自体を破壊する程、強大強力な暴力的な魔力塊で、バックアップ体を作り、そちらへ余剰分の魔力を移していたと。
だから、ここには封印分のバックアップ体がある。3体。
本体がいるのは、別の理由。
私の中で眠るあの子のお姉さんとあの子のスペックは本来同じ。ただ、創世の女神という自覚なしと封印で成長が止まっていた。本体は、このお姉さんの情報を元に再創世したもので、厳密には本体もどき。バックアップ体からの情報逆流、お姉さんの記憶と情報逆流に基づく情報、箱庭から飛び出した瞬間の入出国記録などを駆使して、再創世体に同化。本体とした。
でも、ここにある本体とバックアップ体は、体だけ。心はなく、起こしてあげることも声を聴くこともできない。
それがちょっと、寂しいと思う。
私たちが暮らす平民街は、商人街と違って夜になると、ほぼ真っ暗な状態。家屋から漏れる光も極力外に漏らさないようにしているから、闇に慣れている人くらいしか出歩こうとしない。さらに、物音も結構聞こえるので、暗くなってきたら寝る。明るくなってきたら起きる。自然と同じ生活サイクル。
夜中に出ていくなら、きっと大きな音が街に響いたはずなのに、気が付かなかったのはおかしいのだが、その時の私は友達がもういないという事に更なるショックを受けていた。
最初の友だちがいなくなってから、1か月。様々な理由から友達がここを出ていき、私を残して全員いなくなった。平民街に限らず、スラム街でも子供がいる家族がかなりいなくなっているらしい。いなくなる理由や姿が見えなくなった時間なども平民街と同じタイミング。
でも、裕福な人たちからすれば、些細なこと。しかも、理由があっていなくなっているのだから、なおの事問題はないという。神殿の神官も、何が問題なのか?問題だと言うなら、その証拠が欲しいという。
同じような事は、2、3年ごとに起きていて、その時も問題提起をした者がいたらしい。しかし、ある時、街からいなくなってしまい、その後は消息不明。きっと消されたんだろうというウワサが出た。
ウワサは、その情報の不確かさから消えるのも早かった。いつの間にか、借金取りから逃げたという別の理由が神殿関係者と名乗る男からもたらされ、それがいなくなった理由ということで、騒いだ人や知り合いなどが納得したからだ。
しかし、問題提起した人が消えたとしても、子供を持つ家族がいなくなったのは事実。事実だけれど、神殿が関与したから、事件は終わりで、たまたまだろうということで誰も気にしなくなっていったのが現状だった。
ただ、護符や神力が子供たちがいなくなった時に限って、店先で多く見かけるのはなぜなんだろうと思っていた。使う人がいなくなったから、その分、売れ残っているのかなと…。
皮肉にも、それの答えは自分たちにその影響が来てから分かり、その時点では、どうにもできない事態になっていた。
駆けっこ友達がいなくなっても、平民街の空き家は少ない。空き家となったところに別の家族が引っ越してくるからだ。
他の街からの引っ越し組が多いので、この街で起きた子供のある家族の大量引っ越し事件は知らない人が多い。元々の住民も、言う必要のあることではないと思っているので、しばらくすれば前と同じ活気が戻るだろう。
子供もいる家族もある。
そして、引っ越してきた家族の子供だけが集まって、友達を作り、私の時と同じような駆けっこ友達が出来上がる。
私は、以前の友だちを思い出してしまうので、その子たちとは距離を置いていたら、いつのまにか、いなかったことにされていた。
私がたまに、姿を見せると近づいてくる子はいない。集まって何かを言いながら、指を向けて笑っている。それが嫌で、私がすぐに用事を済ませると家に帰る。家の中に留まっていることが多くなっていった。
そんな状況に親も何も言えなかった。
親も仲良くなった友を失ったため、私と同じような境地にあったためだ。新しく入ってきた人の中に入れないのも同じだった。
日々の生活に必要なものは、隣のおじさんのお店経由で購入…というか、提供されることが多いので困らない。おじさんのお店の細々としたこと。商品の品出しや店番、資金のやりくり、帳簿や役所に提出する書類づくり。こういうのを、おじさんと私の家族は共同でやってきた。
おじさんは奥さんと2人くらしだった。子供は、今はいない。私と同い年の女の子がいたと聞いたけれど、いつの間にかにいなくなっていたと言う。2人はそれ以上、話そうとせず、私の両親も何も言わない。
子供心に、これは聞かない方がいいと思っていた。
しかし、あの日、私たちの前に現れた女性は、私の将来の姿を想像させる存在だった。
***
エリーの愚痴
そうなっていたなら、早く言ってほしかった。
封印が解除される都度に、バックアップ体を取っていたこと。
なんでも、封印解除後の魔力は箱庭自体を破壊する程、強大強力な暴力的な魔力塊で、バックアップ体を作り、そちらへ余剰分の魔力を移していたと。
だから、ここには封印分のバックアップ体がある。3体。
本体がいるのは、別の理由。
私の中で眠るあの子のお姉さんとあの子のスペックは本来同じ。ただ、創世の女神という自覚なしと封印で成長が止まっていた。本体は、このお姉さんの情報を元に再創世したもので、厳密には本体もどき。バックアップ体からの情報逆流、お姉さんの記憶と情報逆流に基づく情報、箱庭から飛び出した瞬間の入出国記録などを駆使して、再創世体に同化。本体とした。
でも、ここにある本体とバックアップ体は、体だけ。心はなく、起こしてあげることも声を聴くこともできない。
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