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第102話 階段の降り方

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「瞑想は各々で獲得してもらうが、レベルやランクが上がっても、回復上限は変わらないから注意だ。そして、今の微少魔法は、瞑想と逆の集中力が必要だ。あらかじめ、魔法行使の時間を定めておくからな」
「魔法行使の時間ですか?」
「…そうだ。朝日君」
「アーサーという名前なんですが」
「言いにくい」

視界の端にいたトーコも頷いている。
名前で呼ばれることが少ないのはそのせいか。

まぁ、トーコの場合は“お兄ちゃん”呼びをしたいのだろうけど、夫婦になってもその呼び方は、誤解の元だからな。

呼び名として、何か考えることにしようか。

「考えます」
「何を?」
「名前を。それはそうとして、魔法行使の時間とは何ですか」
「そのままの意味だ」
「いやまぁそうでしょうけれど、魔力操作との関係が分かりません」
「魔法行使の始点と終点を魔力操作で決めて、その後に必要な形へと変える。氷の針は、針の形状の固定と火の縄の造形・移動・熱伝播の抑制を決めている。もちろん慣れないと、魔法行使もそうだがMPが足らなくなる」
「先生。この中…鉢の中だとそんなに大した魔法を発動できるとは思えないのですが」
「まぁ、慣れだな慣れ。ランクが上がるということは、こういうことも出来るということだ。慣れないと、個別の魔法発動となってしまい、MPの過剰使用であっという間にMPが切れるぞ」
「まだ、私たちにはこの魔法を使えないっということですか」
「魔力操作ができれば、こうなるという一例だな」
「個別発動でMP枯渇も分からないです」
「あ~、そうだなぁ…。階段を降りるに、必要なものはなんだ?」
「え?階段を降りるだけじゃないのですか」
「質問を質問で返してどうする。もっと、良く考えろ」
「え。でも、階段を降りるですよ。他に考えようもありません」
「魔法、使えなくなるぞ。まぁ、いい。答えは、まず段差手前に“移動する”、段差上から下へ“身体を降ろす”、下の段差に着地する前に“減速する”、段差に身体を完全に“置く”…どうだ?」
「言われれば、そうですけれど、意識していませんよ」
「無意識だと言うのかも知れないが、無意識なのは“そういう風に動くと簡単”だから。脳の処理能力にも問題があってな、無意識だと脳の処理に負担が掛からない。意識的に物事をしようとすると、どうしても処理能力を圧迫するからだが、問題は集中して物事を行うことと似ていないか?」

思い返す。
階段の降り方。
無意識。
脳の処理能力。
集中して物事を行う?
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