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第74話 とりあえず、死になさい

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「まぁ、そんなわけで、もう1つのお願いは、私の管理下で死んでもらうこと」

ぎょっとした。
いきなり死ぬとは何だ?

「特殊な空間で、実際は死なないようにして起きますので、大丈夫ですよ」
「なんだ、びっくりしたよ。死なないなら、問題ない…よね?」
「ええ。問題はありませんし、ここでの会話などは、一時的に記憶を封鎖させて頂きます。死に至るまでの体験ですので、他の情報はないですし、万が一死んでしまったら、それまでです」

なんと言うか、無責任なお願いだと思っていたが

「では、始めましょう」
「ちょっとちょっと、冗談じゃないのか」
「私は本気です。ここでは、やりにくいので上に行きましょう。トーコも付き添いますから、大丈夫」

余計心配になってしまったが、ともえ様は手を広げたり握ったり、わきわき(?)した動作で、こっちに来る。

逃げようとしたけれど、どこに行くこともできずに捕まってしまう。

「トーコ、居るわね」
「は…い。静野家に」
「彼と一緒に来るでしょ」
「はい!」

静野家にいるはずのトーコにメッセージが飛び、どういうカラクリか、トーコが現れる。

「では、ちょっとお借りします」

四姉妹にそう言うと、ともえ様とトーコでそれぞれ片腕を胸に抱えると

「天ともえの命により、天上への道を開き、我々を望む世界へ転送させよ」

周囲が光り、その光が3人を包む込むように、柱状になって空へ飛んでいく。
飛んでる。と思ったら、周囲の光が一気に強くなり、気がつくと全く別の場所に立っていた。

「ともえ様?いいんですか、関門通らずに来ちゃいましたけれど」
「いいの。いいの。ここは、私が直接管理する世界だし。融合異世界とも言うけれど」

そこは、なんで出来ているのか分からない材質。
表面は光沢があり、つるつるが見るだけで分かる。
それでいて、かなり薄い感じがする。
そこは、通路になっていて、左右に扉のようなものがあちこちにある。

「びっくりした?ここはね、ともえ天国というアミューズメントに行くための電子情報体を生成する場所なの。ここでなら、ある程度無茶ができるから」
「電子情報体」

一気に、ファンタジーがSFになった感じ。

「ある程度だからね。一応、安全装置はあるけれど、万能じゃないからもしかすると、あるかも」
「ちょっと待ってください。納得していませんし、いいとも言っていません」
「納得も承認も関係なし。やるって行ったからには、やるの」
「…はぁ」

脱力

「では、始めます。こっちへ来て」

通路にある扉の中に入り、リクライニングシートに横になる。

「まず始めに、記憶封鎖。その後に、ゆっくりじっくり感じてください」

意識が遠く、記憶もあやふやになり始めた。

「感想もよろしく」

その声を最後に、意識がすーっと消えて行ったのがわかった。
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