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第62話 婆ちゃん

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田舎と言える場所に過疎が進んでいる。
故郷も同じように思えるが、実はそうならない理由が存在している。

故郷では、なぜか100歳は優に超えている老人たちがいる。
故郷で生まれ、育ち、そして町から出て、老いた頃に戻る。
そういうことを何回か見たことがある。
なぜか、60歳前後で戻ってくる。
病気を患っていたはずの人が、次の日に元気になってしまい、医師を驚かせることなど日常茶飯事。

それでいて、他者には排他的なので、新規の住民はいない。
周辺道路から、その場所に行くためには私道を通らないと行けない。
私道を使えるのは、その土地で生まれ育った者だけなのだ。
別に検問があるわけではなく、恐怖感を覚えるらしい。
なお、上空も同じで、ヘリコプターで行こうと思っても、即座に逃げ帰る。

しかし、自分たちが使いやすいように急峻な山にトンネルを通してしまうくらいの技術力と資金はあるのだ。
どこから出てるという不思議さはある。

その故郷、
本家と13家の14家で守っているものがある。
それは、地下神殿とそこに収められた巨大な鳥居である。

トーコの清水家を含めた13家で、神隠し後の現在は12家。

全ての家の中心人物は、年齢不詳の老婦人、
本名は、神宮という名で、いつからか、みんなに“婆ちゃん”と呼ばれている。

性格は、温和?ということになっている。
そう話したのは、本人。

「なんだか帰るとなったら、こっぱずかしい感じがするな」
「私なんか、もっとよ。30年ぶりなんだから」

そういえば、そうだ。
本体(?)は40歳。
行方不明になったのは、10歳くらいだったから。
もちろん、両親も弟もだったけれど。

「そうだ、おじさんは?おばさんは?」
「ん?普通に生きているわよ。死とは無関係な場所だから」
「は?」
「え?ああ、その話は後でね」

ともえ様の説明があった。
帰省するための話だったが、トーコとは別行動になる。
ログアウトしたら、こっちはこっちで帰省する。

時を同じくして、ともえ様とトーコ一家が地下ではなく地上にある神域という特別な儀式で使う場所に転移してくる。

「まずは、ログアウトだね。あ、もたもたしていたら、強制的に帰省させるから。操ってね」

そういうとともえ様が、操り人形を操作するような手草をした。

「なるべく早く準備します」
「ちょっとそこまで~という感じで大丈夫よ。帰りは、こっちで送るから」

トーコが少し寂しそうな顔付きで、

「ちょっとだけど離れちゃうのは、寂しい」
「そうだけど、少しの間だから」
「うん。キス、して」
「え」

ともえ様が見てると思って、目の前を見たら誰も居ない。
というか、部屋の中にはともえ様がいなくなっていた。

「…」

それじゃあ、いいかなと、

チュ

「なんだか、恥ずかしいな」
「そう?ともえ様が見ていても、気にならなかったけれど?」

ともえ様?
見ていた?
どこで??

「いいもの見せてもらいました」

そこには、薄らとともえ様が見えてきていた。
どうやら、周囲の光景に紛れるように佇んでいたらしい。

「光学迷彩か?」
「いえいえ、単なるかくれんぼよ」

かくれんぼ、意外と恐ろしい?
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