遊ぶつもりでログインしたら、融合異世界という現実だった。

第56話 神族になってから

「…あの時って？」
「神隠しと言うようにトーコは、神族になってからの事を話し始めた。

「あの時、身体が変になった気がしたの。今までの身体が作り替えられるような気持ち悪い感じに。後になって教えてもらってから、あの時が何だか知ったの。それは神格から高い格に上がる際に起こる種族変異。人と言う身体が神という身体に変わるための最初の儀式」お願いした前の日。みんなが、私たち家族のことを納得させるための言葉」
「神隠し。田舎だとよくあるって聞いていたけれど」
「恐らく、私と同じかもしれないわ」
「そうだったのか。急に引っ越したのには、理由があったのか」

「でも、今は念願の結婚もできたし、あなたも同類になった。あれで良かったと思っているわ」
「…種族変異は、あるのか？」
「もう終わっているわ。元の身体の方で」

融合異世界という現実にログインしたのを否定したい。
しかし、ログインすると言うことは、ログインしている身体があるということ。

そのログインしている身体は既に神族化していると。

「神族になるとね。自分の思った年齢の姿形になることができる」
「違った形には、できないのか」
「自分以外の姿形にすると、身体を動かすことができないの。経験があるから自分自身の身体を動かすことができる」
「単純に足を伸ばすとか頭を良くするとか、できないのか」
「歩き方や今よりも頭が悪くなっていいの。どちらも経験がないから、動かすこと自体が大変。仮に動かせても、自由自在は無理ね」
「そうなのか」

今の年齢は16歳。
自分の中で一番良かった時代。
幼なじみとの思い出も遠くに行ってしまい、孤独ではあったけれど、ぬるま湯に浸かっているような感じがあった。
もちろん、今、こんな風になるとは思わなかったけれど。

「神族になった。でも、学校とかに行っていたのだろ」
「神族としての身体が確立するまでね。えーと2年くらいだったかな」
「たったの2年…か」
「あ、居たのは天界という場所で、天界1年が地上では7年半くらいになるの」
「は？」
「時差…みたいな感じ。ゆっくり時間が過ぎていくの。こっちに来た時は12歳だったから、今は16歳…だったかな」
「同い年」
「そう、あなたの今の身体も、40歳じゃなくて16歳の身体になっているわ」
「知っていたのか」
「当然。あなたの事はずっと見ていたから」

信じられないような話だったが、塔子…いや、トーコはウソを付いたことはなかった。
だから、その言葉も信じるほかない。

「ひとつ上の世界へ上がること。本城へ行くことが出来るパスをもらったから、明日、あそこに行きましょう」

そう言うと、普通の窓に戻っていた方に見えた世界樹？に指を向けた。