7 / 8
7 正しい道へ誘導するための
しおりを挟む
お茶会が終わった夕刻、父・国王に呼ばれた。
「4人の側近候補は、お前を蔑ろにしたとして籍を抜くことになった。新しい側近候補を立てることにした」
とうとう前世の記憶とほぼ合致するものが出た。
記憶では、4人は側近候補を取り消され、それまでに得た知識などでの影響を排除するため廃嫡幽閉婚約破棄となるはずだった。
しかし、籍を抜くという一段上の措置になった。
貴族籍を抜いた場合、その者は始めからその貴族家に生まれなかったことになる。もちろん、平民となる。
御用商人の場合なら、後継者として認めず文字通り家からの追放である。4人のうちで最も身分が低い平民になるだろう。いや、もしかすると犯罪奴隷扱いかもしれない。
教祖はどう判断したか分からないが、幽閉は決定だろう。
教会にはいくつかの秘儀があり、それを外部に漏らされては困るからだ。
何はともあれ、4人と学園で会うことはもうないだろう。
そして、マスミの処遇だ。
「4人とお前を唆したマスミは、既に収監してある。罪状は、国家転覆罪だ」
「国家転覆…」
記憶にもある。
彼女は、隣国の軍事国家のスパイである。
目的は、俺らを唆して自分の思い通りの傀儡に仕上げること。
現国王が諸国遊説の際に、クーデターを起こすつもりだったのだ。
国王はその計画が進んでいたことを掴んでいた。
きっと、王家の影をマスミにも付けていたのだろう。
「お前も卒業要件は全て満たしている状態だから、学園に行く必要はない。サージュも同様だから、近いうちに王宮へ住まいを移し王太子妃教育の再開しようと思っているからそのつもりでな」
「はい、分かりました」
急遽決まった内容でも、前世の記憶でも同じようなものがあった。
その時は、俺も含めて廃嫡されてしまっていたのだが。
着実に歴史は変わっている。
大丈夫、大丈夫だ。
部屋への帰り際、たまたま向かいから歩いてきた内務大臣に会った。
「内務大臣、ちょっといいか?」
「セネクス王子、なんでしょうか」
「前世の記憶…そう言えば分かるか」
「ふむ。ここでは話せませんな」
「私室へ行こう」
内務大臣を私室に隣接する客間に案内する。
「セネクス王子は、何度目ですかな」
「何度目?」
「前世の記憶と仰いましたな、最初でしょうか」
「確かに以前はこんなことはなかった」
「王族は、その身の力に国を正しい方向へ導くことができるようになっています。夢や衝撃などで何かを成す時に結果を先に見てしまうのだそうです。そこで、結果が悪ければそうならないように、結果が良ければそうなるように行動を起すのです。セネクス王子は、何か良からぬことを見て、最近の行動を変えようとしたのでしょう。それは正しく王族の力。正しい利用の仕方であれば恐ろしいものではありません。今後も助けられることが何度もあるでしょう。気を楽にしていれば良いと思います」
「そうか。大臣達はこの記憶について知っているのだな」
「記憶自体は知りません。ですが、政策実行前にその効果がどのようなものかの説明を聞けば、そして、前任者からの伝達である程度のことは知っています」
「あの記憶はそうだったのか」
聞いてみれば納得した。
恐ろしい結末を迎えないために、前世の記憶として警告が出ていたのだろう。
そして、それはこれからも似た形での警告があるという。
「警告になるか、通告になるかは分かりません。でも、それに従うだけではなく、きちんと調べて行動することも必要です。私どももセネクス王子が正しい判断をすることを望んでいますよ」
内務大臣は、そう言うと部屋を出て行った。
「4人の側近候補は、お前を蔑ろにしたとして籍を抜くことになった。新しい側近候補を立てることにした」
とうとう前世の記憶とほぼ合致するものが出た。
記憶では、4人は側近候補を取り消され、それまでに得た知識などでの影響を排除するため廃嫡幽閉婚約破棄となるはずだった。
しかし、籍を抜くという一段上の措置になった。
貴族籍を抜いた場合、その者は始めからその貴族家に生まれなかったことになる。もちろん、平民となる。
御用商人の場合なら、後継者として認めず文字通り家からの追放である。4人のうちで最も身分が低い平民になるだろう。いや、もしかすると犯罪奴隷扱いかもしれない。
教祖はどう判断したか分からないが、幽閉は決定だろう。
教会にはいくつかの秘儀があり、それを外部に漏らされては困るからだ。
何はともあれ、4人と学園で会うことはもうないだろう。
そして、マスミの処遇だ。
「4人とお前を唆したマスミは、既に収監してある。罪状は、国家転覆罪だ」
「国家転覆…」
記憶にもある。
彼女は、隣国の軍事国家のスパイである。
目的は、俺らを唆して自分の思い通りの傀儡に仕上げること。
現国王が諸国遊説の際に、クーデターを起こすつもりだったのだ。
国王はその計画が進んでいたことを掴んでいた。
きっと、王家の影をマスミにも付けていたのだろう。
「お前も卒業要件は全て満たしている状態だから、学園に行く必要はない。サージュも同様だから、近いうちに王宮へ住まいを移し王太子妃教育の再開しようと思っているからそのつもりでな」
「はい、分かりました」
急遽決まった内容でも、前世の記憶でも同じようなものがあった。
その時は、俺も含めて廃嫡されてしまっていたのだが。
着実に歴史は変わっている。
大丈夫、大丈夫だ。
部屋への帰り際、たまたま向かいから歩いてきた内務大臣に会った。
「内務大臣、ちょっといいか?」
「セネクス王子、なんでしょうか」
「前世の記憶…そう言えば分かるか」
「ふむ。ここでは話せませんな」
「私室へ行こう」
内務大臣を私室に隣接する客間に案内する。
「セネクス王子は、何度目ですかな」
「何度目?」
「前世の記憶と仰いましたな、最初でしょうか」
「確かに以前はこんなことはなかった」
「王族は、その身の力に国を正しい方向へ導くことができるようになっています。夢や衝撃などで何かを成す時に結果を先に見てしまうのだそうです。そこで、結果が悪ければそうならないように、結果が良ければそうなるように行動を起すのです。セネクス王子は、何か良からぬことを見て、最近の行動を変えようとしたのでしょう。それは正しく王族の力。正しい利用の仕方であれば恐ろしいものではありません。今後も助けられることが何度もあるでしょう。気を楽にしていれば良いと思います」
「そうか。大臣達はこの記憶について知っているのだな」
「記憶自体は知りません。ですが、政策実行前にその効果がどのようなものかの説明を聞けば、そして、前任者からの伝達である程度のことは知っています」
「あの記憶はそうだったのか」
聞いてみれば納得した。
恐ろしい結末を迎えないために、前世の記憶として警告が出ていたのだろう。
そして、それはこれからも似た形での警告があるという。
「警告になるか、通告になるかは分かりません。でも、それに従うだけではなく、きちんと調べて行動することも必要です。私どももセネクス王子が正しい判断をすることを望んでいますよ」
内務大臣は、そう言うと部屋を出て行った。
10
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説

生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。

断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】待ち望んでいた婚約破棄のおかげで、ついに報復することができます。
みかみかん
恋愛
メリッサの婚約者だったルーザ王子はどうしようもないクズであり、彼が婚約破棄を宣言したことにより、メリッサの復讐計画が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる