婚約破棄を回避しないと ~頭を打ったら前世の記憶が蘇りました!

夜空のかけら

文字の大きさ
上 下
4 / 8

4 絶縁するつもりで言った

しおりを挟む
出会ってしまった。
会うつもりはなかった。
でも、向こうから来てしまった。

一昨日とマスミの見え方が違う。
一昨日は、綺麗というより可愛いという感じが強く、貴族にはない平民ならでは?の態度や仕草が新鮮だった。
しかし今は、その一つ一つが計算され尽くしたもので、今にも罠にかけようとしているとしか思えない。
あの4人は、これが妄想だという。
そんなことはありえない。
なぜ分かってくれないのか。

「会いたかった」
「帰ってくれ」
「なぜそんなことを言うの。こんなにもあなたのことを思っているのに」

ぞわぞわする。
心が引き寄せられそうになるのを必死に押しとどめて、

「帰る」
「待って」

呼び止められたが、立ち止まることなくその場を去る。
マスミは、手を伸ばして手を掴もうとしたみたいだったが、他の4人に遮られたみたいだ。

「王子は、誇大妄想に掛っているのです。病気なのです。重病で手が着けられない。
私が治癒の祈りを与えようとしても拒否するのです」

ネアンがマスミにそう言っているのが微かに聞えた。
でも、それを否定する時間すらももったいない。
足早に馬車へ向い、時間は遅いが公爵邸に行くことにした。
明日はサージュと登校しなければ、タイミングを逃してはいけない。

*アネシス公爵邸

馬車を降り、不躾にも前触れなしで来たが、執事の案内で客間へ案内される。
アネシス公爵にこれまでのことについて謝罪とこれからについて話合わなくてはいけない。
あの4人の処遇も。

「こんな夜分にどうされた。サージュからは婚約破棄も考えて欲しいと言われているが」
「婚約破棄はしない。マスミとは縁を切るので、これまで通りサージュと婚約続行、卒業と同時に結婚のスケジュールを変えないで欲しい」
「…何があったか分かりませんが、要望は受け付けました。サージュと仲良くやってくれればそれに越したことはない」
「感謝する公爵」
「それで、4人はどうするのですか。あの者達も縁を切るのでしょうな」
「あれらはダメだ。側近失格として新たな者達を選出してもらいたい」
「そうですか、とりあえずこの話は他の4人と協議します」
「頼んだ」

他の4人とは、あの4人の当主。
つまり、宰相、騎士団長、御用商人、教祖だろう。
そして、この結末は知っている。

「明日から毎日サージュを迎えに来る」
「分かりました。サージュには伝えておきます」
「助かる」

突然の訪問だったので、簡単に話をして公爵邸を辞する。
王宮に戻りながら、明日に備えて関係者に話をせねばと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。

あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。 その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。

【完結】待ち望んでいた婚約破棄のおかげで、ついに報復することができます。

みかみかん
恋愛
メリッサの婚約者だったルーザ王子はどうしようもないクズであり、彼が婚約破棄を宣言したことにより、メリッサの復讐計画が始まった。

完結 勇者様、己の実力だといつから勘違いしてたんですか?

音爽(ネソウ)
恋愛
勇者だと持ち上げられた彼はこれまでの功績すべてが自分のものと思い込む。 たしかに前衛に立つ彼は目立つ存在だった、しかしペアを組んだ彼女がいてこそなのだが……。

処理中です...