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一章【始まり】

4.唐突

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 危険な魔獣が生息していない森の西に向かい歩いていると、駆け出しの頃を思い出す。
 ――久しぶりだな、ついそう呟いた。
 
 「そうなんですか?」
 
 アスカが、そう聞いてくる。
 
 「ヴァイ達と初めての依頼で来たんだよ――いや、もう忘れるべきなんだろうけどさ」
 
 ヴァイ達と初めての依頼で来た思い出の地だ。だが、もう彼らとはパーティーではなくなり、過去の忘れたい記憶となった。
 
 「そうだったんですか。あの、失礼かもしれないんですけど……その何かあったんですか?」

 「長くなるけど良いか?」

 「は、はい」

 ケジメをつける。あの時のことを、過去のこととして話すのも良いかもしれない。話してみれば案外楽になれたりしてな。
 
 「あの、ゲイルさん。僕は先に薬草採取してますね。」
 
 ワースが、何かを察したのか俺たちから離れて薬草採取を始めた。

 「ああ、よろしくな。終わったら、俺も手伝うよ」
 
 簡単によろしく、と答えて話し始めた。

 「最近のことなんだが、ヴァイ、レイ、アスノ―の3人とパーティーを組んでたんだ。でも、別れた。俺が魔王に対抗出来ないから、ヴァイ達は俺を切り離すことにしたんだ。今俺が、あいつらと一緒に居ないのは……俺が弱いからなんだ」
 
 「魔王!?……っていうことは、勇者パーティーだったんですか?」
 
 「あぁ、そうだよ。多分最高のパーティーだったと思う……」
 
 「そう、だったんですか……す、すみません。変な事聞いてしまって」
 
 「いいんだよ別に、過去の話だ。今は、俺も気にしていないしいい経験になったと思ってる」

 「それでも、今まで一緒に冒険をしてきた人達と別れるなんて私には……」

 そう言って表情を暗くするアスカを見て、パーティーを組んだばかりの気弱だった頃のレイを思い出す。そういえば、レイも死ぬかもしれない冒険者なんてしたくないって言っていたっけ。ああ、それを笑い飛ばしたヴァイも、冷静に諭したアスノーも……もう居ないんだな。

 「誰にだって、別れはある。それが、死んでしまって一生会えないっていう最悪な別れじゃないだけ……俺は嬉しいよ」

 「そう……ですね」
 
 いけないな、つい話し込んでしまった。そう思い、ワースが薬草採取に向かっていた方に振り向くがそこに姿は無かった。
 
 「ワース……?」
 
 「あれ?ワース兄ちゃん?」
 
 アスカも、異変に気付いたのか呼びかける。
 
 「何処に行ったんだ」
 
 俺が居たのに見逃した?くそっ。もし、このまま見つけられなかったら……。
 まさか……魔獣に?
 
 最悪の考えが、頭をよぎる。
 
 いや、大丈夫だ。そこまで遠くに行っていないはず。とにかく今は、探すしかない。
 【思考加速】を使いこの状況に最適なスキル、魔法を発動させる。
 
 「アスカ、ワースは俺が助ける。俺から離れるな」
 
 そう言って、アスカを抱きかかえると【存在消】を発動させ薬草採取のためにワースが向かったであろう方向へと走る。
 
 【身体能力上昇】【嗅覚】【透視】【千里眼】を活用し、全力で走りワースを探した。


 そして――
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