3 / 11
一章【始まり】
3.新人冒険者
しおりを挟む
大通りに見える大きな木造の建物の扉を開け、フェンリル町にある冒険者ギルド フォルードギルドの支部フェンリへ入る。
「おはようございます」
そのままカウンターへと向かうと、笑顔が眩しいと噂の受付嬢シヴィが元気よく挨拶をしてくれた。
「……おはようございます」
いつものように元気ではないかもしれないが、出来る限り取り繕った笑顔と共に俺は返事をした。
「元気がないようですが、何かありましたか?」
ギルドに向かう道中でも心配されたことがあった。俺は、そんなに分かりやすく落ち込んでいるんだろうか。
いくら後悔しないようにと、忘れようとしてもなかなか素直にはいかないようだ。
「ええ、昨日少し……忘れたいことなんですが」
失礼かもしれない、助けてくれようとした人を少なからず遠ざけてしまう。
そうわかっていても、やはり忘れたくてそう言ってしまった。
「そうでしたか、申し訳ございません」
「いえ、謝らなくても大丈夫です。俺のワガママなので」
頭を下げようとしたシヴィを見て、そんな必要ないよ、と諭す。俺の力不足で、他の人を誤らせるなんて出来ない。
「要件はなんでしょうか?」
「実は、前のパーティーを抜けたんです。なので、初めてソロで何か依頼を受けようと思いまして」
シヴィは、直ぐに受付モードに切り替えて対応してくれた。ありがたく思いながら、要件を伝えそのまま会話を続ける。
話しているうちに、ヴァイ達による俺のパーティー解消が既に行われていたことが分かり、パーティーから抜けた俺のランクは下方されBになった。Sからは落ちたが、十分なランクだろう。まずは、初心に戻ってFランクから受けてみるか。
「Fランクの依頼はありますか?」
「Fランクですね、少々お待ちください」
そして、少しするとある依頼書を持ってきた。
「Fランク依頼ですぐに出来るモノとなると、こちらはどうしょうか?」
シヴィから依頼書を受け取ると、内容確認する。
フェンリル森で薬草採取を行う新人冒険者2人の護衛か。そういえば、新人冒険者の生存率を上げるために、ベテラン冒険者にギルドから護衛依頼を出すことがあるんだったな。報酬は銅貨5枚……まぁ、こんなものだろう。
「こちらの依頼を受けようと思います。護衛対象の2人は、今どこに?」
「待合室4番に居るはずです。若い2人なので、見つけやすいかと」
「ありがとうございます、では」
「はい、ありがとうございました」
*
さて、若いと言っていたけど……。
待合室4番に入ると、俺は辺りを見渡した。
もしかして、あの2人か?
「君たちが、ワースとアスカかな?俺は、君たちの護衛依頼を受けたゲイルって言うんだけど」
俺はそう言って、依頼書を見せる。
「「あ、はい」」
「僕が、ワース=ファンで」
「私が、アスカ=ファンです」
「2人ともよろしく」
まだ14歳ぐらいだろうか。
ワースという少年は、髪が茶色で目が銀色に光っていた。腰には短剣を携えていることから剣を扱う職業だろう。
金色の髪と瞳という珍しい容貌をしているアスカという少女は、魔力が微弱ながらも魔杖を持っていることから魔法使いあたりだろう。と予想をたてる。
それにしても、背が小さいな。
「「はい。よろしくお願いします」」
「これから依頼の間、君たちと一緒に行動するんだけど、できれば2人の職業とスキルを教えてくれないかな?」
「スキル……ですか?」
「悪い、言いたくないなら言わなくていいんだ。俺は、今までそうやってパーティーの皆と共有して――確かに、パーティーでもないのに言うのおかしいよな……」
「い、いえ。そうわけではないです。その、情報は隠したほうが良いと聞いたことがあって」
「そうか……」
アスカからの、疑問に対して今まで考えていなかったことを考えさせられた。これから、俺は1人で活動することになる。臨時でパーティーを組む際は、気をつけるか。
2人の、疑問に対して自分なりの答えを返した後、俺は自分のスキル、職業などを教えられる範囲ではあるが教えた。俺が、ヴァイ達のパーティーだったって気づかれたくはないからだ。
無論、ともに活動することになったら隠し事はリスクが大きい。2人には、メリットとデメリットを教え、無暗に教えることも危険だということ、それを判断できるようになってほしいとも言っておいた。
その後、ワースが俺を信頼してくれたのか自己紹介を始めた。
「僕の職業は、魔法剣士です」
魔法剣士は、剣に属性魔法を付与して魔物と戦う職業だ。ということは、付与魔法や剣技系統のスキルを持っているってことか……。
「魔法剣士ということは剣を使うんだよな?ワースには、魔法付与が出来そうな剣を持っているようには見えないんだが」
「実は……、お金が無くてですね」
そう言われて気づく。確かに、魔法付与が可能な剣は安いものでも金貨が何十枚も必要になる高価なものだ。
「そういうわけがあったのか。話を止めて悪かったな、自己紹介を続けてくれないか」
「はい、スキルは【剣の才】【剣の魂】【聖属性の才】【属性付与の才】の4つを持っています」
悪くない、素質も十分にありそうだ。これは、Sランク冒険者も夢じゃない才能だ。
「ありがとう」
その後、簡単な質問などをしてアスカの自己紹介の番となった。
「私は、呪術師です」
呪術師……珍しいな。【呪文の才】などの呪文の扱いが上手くなるスキルを持っているのだろう。
「スキルは、【呪文の才】【呪文の魂】【闇属性の才】【魔力操作】の4つです。あとは、【呪文耐性】という、相手の呪文効果を半減するスキルも持っています」
「ありがとう。これからよろしくねワース、アスカ」
2人とも良い冒険者になるだろうな、と思いながら待合室を出て森へと向かった。
「おはようございます」
そのままカウンターへと向かうと、笑顔が眩しいと噂の受付嬢シヴィが元気よく挨拶をしてくれた。
「……おはようございます」
いつものように元気ではないかもしれないが、出来る限り取り繕った笑顔と共に俺は返事をした。
「元気がないようですが、何かありましたか?」
ギルドに向かう道中でも心配されたことがあった。俺は、そんなに分かりやすく落ち込んでいるんだろうか。
いくら後悔しないようにと、忘れようとしてもなかなか素直にはいかないようだ。
「ええ、昨日少し……忘れたいことなんですが」
失礼かもしれない、助けてくれようとした人を少なからず遠ざけてしまう。
そうわかっていても、やはり忘れたくてそう言ってしまった。
「そうでしたか、申し訳ございません」
「いえ、謝らなくても大丈夫です。俺のワガママなので」
頭を下げようとしたシヴィを見て、そんな必要ないよ、と諭す。俺の力不足で、他の人を誤らせるなんて出来ない。
「要件はなんでしょうか?」
「実は、前のパーティーを抜けたんです。なので、初めてソロで何か依頼を受けようと思いまして」
シヴィは、直ぐに受付モードに切り替えて対応してくれた。ありがたく思いながら、要件を伝えそのまま会話を続ける。
話しているうちに、ヴァイ達による俺のパーティー解消が既に行われていたことが分かり、パーティーから抜けた俺のランクは下方されBになった。Sからは落ちたが、十分なランクだろう。まずは、初心に戻ってFランクから受けてみるか。
「Fランクの依頼はありますか?」
「Fランクですね、少々お待ちください」
そして、少しするとある依頼書を持ってきた。
「Fランク依頼ですぐに出来るモノとなると、こちらはどうしょうか?」
シヴィから依頼書を受け取ると、内容確認する。
フェンリル森で薬草採取を行う新人冒険者2人の護衛か。そういえば、新人冒険者の生存率を上げるために、ベテラン冒険者にギルドから護衛依頼を出すことがあるんだったな。報酬は銅貨5枚……まぁ、こんなものだろう。
「こちらの依頼を受けようと思います。護衛対象の2人は、今どこに?」
「待合室4番に居るはずです。若い2人なので、見つけやすいかと」
「ありがとうございます、では」
「はい、ありがとうございました」
*
さて、若いと言っていたけど……。
待合室4番に入ると、俺は辺りを見渡した。
もしかして、あの2人か?
「君たちが、ワースとアスカかな?俺は、君たちの護衛依頼を受けたゲイルって言うんだけど」
俺はそう言って、依頼書を見せる。
「「あ、はい」」
「僕が、ワース=ファンで」
「私が、アスカ=ファンです」
「2人ともよろしく」
まだ14歳ぐらいだろうか。
ワースという少年は、髪が茶色で目が銀色に光っていた。腰には短剣を携えていることから剣を扱う職業だろう。
金色の髪と瞳という珍しい容貌をしているアスカという少女は、魔力が微弱ながらも魔杖を持っていることから魔法使いあたりだろう。と予想をたてる。
それにしても、背が小さいな。
「「はい。よろしくお願いします」」
「これから依頼の間、君たちと一緒に行動するんだけど、できれば2人の職業とスキルを教えてくれないかな?」
「スキル……ですか?」
「悪い、言いたくないなら言わなくていいんだ。俺は、今までそうやってパーティーの皆と共有して――確かに、パーティーでもないのに言うのおかしいよな……」
「い、いえ。そうわけではないです。その、情報は隠したほうが良いと聞いたことがあって」
「そうか……」
アスカからの、疑問に対して今まで考えていなかったことを考えさせられた。これから、俺は1人で活動することになる。臨時でパーティーを組む際は、気をつけるか。
2人の、疑問に対して自分なりの答えを返した後、俺は自分のスキル、職業などを教えられる範囲ではあるが教えた。俺が、ヴァイ達のパーティーだったって気づかれたくはないからだ。
無論、ともに活動することになったら隠し事はリスクが大きい。2人には、メリットとデメリットを教え、無暗に教えることも危険だということ、それを判断できるようになってほしいとも言っておいた。
その後、ワースが俺を信頼してくれたのか自己紹介を始めた。
「僕の職業は、魔法剣士です」
魔法剣士は、剣に属性魔法を付与して魔物と戦う職業だ。ということは、付与魔法や剣技系統のスキルを持っているってことか……。
「魔法剣士ということは剣を使うんだよな?ワースには、魔法付与が出来そうな剣を持っているようには見えないんだが」
「実は……、お金が無くてですね」
そう言われて気づく。確かに、魔法付与が可能な剣は安いものでも金貨が何十枚も必要になる高価なものだ。
「そういうわけがあったのか。話を止めて悪かったな、自己紹介を続けてくれないか」
「はい、スキルは【剣の才】【剣の魂】【聖属性の才】【属性付与の才】の4つを持っています」
悪くない、素質も十分にありそうだ。これは、Sランク冒険者も夢じゃない才能だ。
「ありがとう」
その後、簡単な質問などをしてアスカの自己紹介の番となった。
「私は、呪術師です」
呪術師……珍しいな。【呪文の才】などの呪文の扱いが上手くなるスキルを持っているのだろう。
「スキルは、【呪文の才】【呪文の魂】【闇属性の才】【魔力操作】の4つです。あとは、【呪文耐性】という、相手の呪文効果を半減するスキルも持っています」
「ありがとう。これからよろしくねワース、アスカ」
2人とも良い冒険者になるだろうな、と思いながら待合室を出て森へと向かった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる