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一章【始まり】
3.新人冒険者
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大通りに見える大きな木造の建物の扉を開け、フェンリル町にある冒険者ギルド フォルードギルドの支部フェンリへ入る。
「おはようございます」
そのままカウンターへと向かうと、笑顔が眩しいと噂の受付嬢シヴィが元気よく挨拶をしてくれた。
「……おはようございます」
いつものように元気ではないかもしれないが、出来る限り取り繕った笑顔と共に俺は返事をした。
「元気がないようですが、何かありましたか?」
ギルドに向かう道中でも心配されたことがあった。俺は、そんなに分かりやすく落ち込んでいるんだろうか。
いくら後悔しないようにと、忘れようとしてもなかなか素直にはいかないようだ。
「ええ、昨日少し……忘れたいことなんですが」
失礼かもしれない、助けてくれようとした人を少なからず遠ざけてしまう。
そうわかっていても、やはり忘れたくてそう言ってしまった。
「そうでしたか、申し訳ございません」
「いえ、謝らなくても大丈夫です。俺のワガママなので」
頭を下げようとしたシヴィを見て、そんな必要ないよ、と諭す。俺の力不足で、他の人を誤らせるなんて出来ない。
「要件はなんでしょうか?」
「実は、前のパーティーを抜けたんです。なので、初めてソロで何か依頼を受けようと思いまして」
シヴィは、直ぐに受付モードに切り替えて対応してくれた。ありがたく思いながら、要件を伝えそのまま会話を続ける。
話しているうちに、ヴァイ達による俺のパーティー解消が既に行われていたことが分かり、パーティーから抜けた俺のランクは下方されBになった。Sからは落ちたが、十分なランクだろう。まずは、初心に戻ってFランクから受けてみるか。
「Fランクの依頼はありますか?」
「Fランクですね、少々お待ちください」
そして、少しするとある依頼書を持ってきた。
「Fランク依頼ですぐに出来るモノとなると、こちらはどうしょうか?」
シヴィから依頼書を受け取ると、内容確認する。
フェンリル森で薬草採取を行う新人冒険者2人の護衛か。そういえば、新人冒険者の生存率を上げるために、ベテラン冒険者にギルドから護衛依頼を出すことがあるんだったな。報酬は銅貨5枚……まぁ、こんなものだろう。
「こちらの依頼を受けようと思います。護衛対象の2人は、今どこに?」
「待合室4番に居るはずです。若い2人なので、見つけやすいかと」
「ありがとうございます、では」
「はい、ありがとうございました」
*
さて、若いと言っていたけど……。
待合室4番に入ると、俺は辺りを見渡した。
もしかして、あの2人か?
「君たちが、ワースとアスカかな?俺は、君たちの護衛依頼を受けたゲイルって言うんだけど」
俺はそう言って、依頼書を見せる。
「「あ、はい」」
「僕が、ワース=ファンで」
「私が、アスカ=ファンです」
「2人ともよろしく」
まだ14歳ぐらいだろうか。
ワースという少年は、髪が茶色で目が銀色に光っていた。腰には短剣を携えていることから剣を扱う職業だろう。
金色の髪と瞳という珍しい容貌をしているアスカという少女は、魔力が微弱ながらも魔杖を持っていることから魔法使いあたりだろう。と予想をたてる。
それにしても、背が小さいな。
「「はい。よろしくお願いします」」
「これから依頼の間、君たちと一緒に行動するんだけど、できれば2人の職業とスキルを教えてくれないかな?」
「スキル……ですか?」
「悪い、言いたくないなら言わなくていいんだ。俺は、今までそうやってパーティーの皆と共有して――確かに、パーティーでもないのに言うのおかしいよな……」
「い、いえ。そうわけではないです。その、情報は隠したほうが良いと聞いたことがあって」
「そうか……」
アスカからの、疑問に対して今まで考えていなかったことを考えさせられた。これから、俺は1人で活動することになる。臨時でパーティーを組む際は、気をつけるか。
2人の、疑問に対して自分なりの答えを返した後、俺は自分のスキル、職業などを教えられる範囲ではあるが教えた。俺が、ヴァイ達のパーティーだったって気づかれたくはないからだ。
無論、ともに活動することになったら隠し事はリスクが大きい。2人には、メリットとデメリットを教え、無暗に教えることも危険だということ、それを判断できるようになってほしいとも言っておいた。
その後、ワースが俺を信頼してくれたのか自己紹介を始めた。
「僕の職業は、魔法剣士です」
魔法剣士は、剣に属性魔法を付与して魔物と戦う職業だ。ということは、付与魔法や剣技系統のスキルを持っているってことか……。
「魔法剣士ということは剣を使うんだよな?ワースには、魔法付与が出来そうな剣を持っているようには見えないんだが」
「実は……、お金が無くてですね」
そう言われて気づく。確かに、魔法付与が可能な剣は安いものでも金貨が何十枚も必要になる高価なものだ。
「そういうわけがあったのか。話を止めて悪かったな、自己紹介を続けてくれないか」
「はい、スキルは【剣の才】【剣の魂】【聖属性の才】【属性付与の才】の4つを持っています」
悪くない、素質も十分にありそうだ。これは、Sランク冒険者も夢じゃない才能だ。
「ありがとう」
その後、簡単な質問などをしてアスカの自己紹介の番となった。
「私は、呪術師です」
呪術師……珍しいな。【呪文の才】などの呪文の扱いが上手くなるスキルを持っているのだろう。
「スキルは、【呪文の才】【呪文の魂】【闇属性の才】【魔力操作】の4つです。あとは、【呪文耐性】という、相手の呪文効果を半減するスキルも持っています」
「ありがとう。これからよろしくねワース、アスカ」
2人とも良い冒険者になるだろうな、と思いながら待合室を出て森へと向かった。
「おはようございます」
そのままカウンターへと向かうと、笑顔が眩しいと噂の受付嬢シヴィが元気よく挨拶をしてくれた。
「……おはようございます」
いつものように元気ではないかもしれないが、出来る限り取り繕った笑顔と共に俺は返事をした。
「元気がないようですが、何かありましたか?」
ギルドに向かう道中でも心配されたことがあった。俺は、そんなに分かりやすく落ち込んでいるんだろうか。
いくら後悔しないようにと、忘れようとしてもなかなか素直にはいかないようだ。
「ええ、昨日少し……忘れたいことなんですが」
失礼かもしれない、助けてくれようとした人を少なからず遠ざけてしまう。
そうわかっていても、やはり忘れたくてそう言ってしまった。
「そうでしたか、申し訳ございません」
「いえ、謝らなくても大丈夫です。俺のワガママなので」
頭を下げようとしたシヴィを見て、そんな必要ないよ、と諭す。俺の力不足で、他の人を誤らせるなんて出来ない。
「要件はなんでしょうか?」
「実は、前のパーティーを抜けたんです。なので、初めてソロで何か依頼を受けようと思いまして」
シヴィは、直ぐに受付モードに切り替えて対応してくれた。ありがたく思いながら、要件を伝えそのまま会話を続ける。
話しているうちに、ヴァイ達による俺のパーティー解消が既に行われていたことが分かり、パーティーから抜けた俺のランクは下方されBになった。Sからは落ちたが、十分なランクだろう。まずは、初心に戻ってFランクから受けてみるか。
「Fランクの依頼はありますか?」
「Fランクですね、少々お待ちください」
そして、少しするとある依頼書を持ってきた。
「Fランク依頼ですぐに出来るモノとなると、こちらはどうしょうか?」
シヴィから依頼書を受け取ると、内容確認する。
フェンリル森で薬草採取を行う新人冒険者2人の護衛か。そういえば、新人冒険者の生存率を上げるために、ベテラン冒険者にギルドから護衛依頼を出すことがあるんだったな。報酬は銅貨5枚……まぁ、こんなものだろう。
「こちらの依頼を受けようと思います。護衛対象の2人は、今どこに?」
「待合室4番に居るはずです。若い2人なので、見つけやすいかと」
「ありがとうございます、では」
「はい、ありがとうございました」
*
さて、若いと言っていたけど……。
待合室4番に入ると、俺は辺りを見渡した。
もしかして、あの2人か?
「君たちが、ワースとアスカかな?俺は、君たちの護衛依頼を受けたゲイルって言うんだけど」
俺はそう言って、依頼書を見せる。
「「あ、はい」」
「僕が、ワース=ファンで」
「私が、アスカ=ファンです」
「2人ともよろしく」
まだ14歳ぐらいだろうか。
ワースという少年は、髪が茶色で目が銀色に光っていた。腰には短剣を携えていることから剣を扱う職業だろう。
金色の髪と瞳という珍しい容貌をしているアスカという少女は、魔力が微弱ながらも魔杖を持っていることから魔法使いあたりだろう。と予想をたてる。
それにしても、背が小さいな。
「「はい。よろしくお願いします」」
「これから依頼の間、君たちと一緒に行動するんだけど、できれば2人の職業とスキルを教えてくれないかな?」
「スキル……ですか?」
「悪い、言いたくないなら言わなくていいんだ。俺は、今までそうやってパーティーの皆と共有して――確かに、パーティーでもないのに言うのおかしいよな……」
「い、いえ。そうわけではないです。その、情報は隠したほうが良いと聞いたことがあって」
「そうか……」
アスカからの、疑問に対して今まで考えていなかったことを考えさせられた。これから、俺は1人で活動することになる。臨時でパーティーを組む際は、気をつけるか。
2人の、疑問に対して自分なりの答えを返した後、俺は自分のスキル、職業などを教えられる範囲ではあるが教えた。俺が、ヴァイ達のパーティーだったって気づかれたくはないからだ。
無論、ともに活動することになったら隠し事はリスクが大きい。2人には、メリットとデメリットを教え、無暗に教えることも危険だということ、それを判断できるようになってほしいとも言っておいた。
その後、ワースが俺を信頼してくれたのか自己紹介を始めた。
「僕の職業は、魔法剣士です」
魔法剣士は、剣に属性魔法を付与して魔物と戦う職業だ。ということは、付与魔法や剣技系統のスキルを持っているってことか……。
「魔法剣士ということは剣を使うんだよな?ワースには、魔法付与が出来そうな剣を持っているようには見えないんだが」
「実は……、お金が無くてですね」
そう言われて気づく。確かに、魔法付与が可能な剣は安いものでも金貨が何十枚も必要になる高価なものだ。
「そういうわけがあったのか。話を止めて悪かったな、自己紹介を続けてくれないか」
「はい、スキルは【剣の才】【剣の魂】【聖属性の才】【属性付与の才】の4つを持っています」
悪くない、素質も十分にありそうだ。これは、Sランク冒険者も夢じゃない才能だ。
「ありがとう」
その後、簡単な質問などをしてアスカの自己紹介の番となった。
「私は、呪術師です」
呪術師……珍しいな。【呪文の才】などの呪文の扱いが上手くなるスキルを持っているのだろう。
「スキルは、【呪文の才】【呪文の魂】【闇属性の才】【魔力操作】の4つです。あとは、【呪文耐性】という、相手の呪文効果を半減するスキルも持っています」
「ありがとう。これからよろしくねワース、アスカ」
2人とも良い冒険者になるだろうな、と思いながら待合室を出て森へと向かった。
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