1 / 11
一章【始まり】
1.追放された
しおりを挟む
俺の名前はゲイル・アース。
銀髪に緑色の目を持つ俺は、ここフェンリル町を拠点に冒険者として、魔獣や魔物と戦っている。職業は、全能力魔法師としてギルドに登録していて、スキルの数は100以上、魔法もそのほとんどを行使できる。
そんな俺には大切なパーティーメンバーがいる。
それは、幼馴染でもあり始めてパーティーを組んだヴァイ。そして、2年前、ヴァイ共に冒険者をしていたときに知り合ったアスノーとレイだ。
今まで数々の依頼をこなして来た俺達は、ギルドからの信頼も厚く三大魔と呼ばれている魔獣の一体レッドドラゴンを討伐した事をきっかけに、本格的に「魔王を討伐しよう」という方針が決まった。
今日は魔王討伐に向けての作戦会議ということでギルドの部屋に来るようにとパーティーに呼び出されており、俺は遂にこの時が来たか……と勢いよく扉を開けた。
「おはよう、ちょっと早かったか?」
「よう、ゲイル」
応接室に入ってすぐ反応したのはヴァイだった。
幼馴染の彼は、赤い髪を逆立たせている青少年な風貌で仲間想いの優しい奴だ。彼のスキルは魔王に留めを刺すことが出来る【勇者】を筆頭に、【剣の才】【剣の魂】【剣の神】【覇道剣】【聖剣】の6つだ。そして、スキル【勇者】を持っていることから職業は勇者としてギルドに登録されている。
「早かったですね」
ヴァイに続いて、彼の隣にいたアスノーが言う。
アスノーは、幅広いスキルを持つ万能能力者で、その容姿は黒髪に黒目と珍しい。アスノーのスキルは、【槍の才】【槍の魂】【予測】【魔力感知】【攻撃察知】【身体能力上昇】【盗聴】【気配消】の8つで、状況に応じて的確に行使する彼はパーティーの指揮役になることも多い。18歳とパーティーの中で一番経験が豊富ということもありみんな頼りにしているパーティーリーダーのような存在だ。
「おはよう~」
気怠そうに挨拶をするのは、レイだ。彼女は暗い金色の長い髪と栗のように少し暗い茶色の目をしているパーティーで唯一の女性だ。レイは、魔法使いとして登録しており、魔法の習得や威力が上昇するスキル【魔法の才】【魔法の魂】【魔法の神】に加えて水属性、氷属性、火属性、風属性の強化スキルや【魔法感知】【魔力操作】などの補助スキルを合わせると16のスキルを持っている才女だ。
「それで、今日の話ってなんだ?」
語り掛けながらヴァイの隣へと歩みを進めていると「もう、来なくていいぞ」と耳を疑う発言がヴァイから聞こえた。
「え?」
俺は、あまりに突然の出来事に困惑し反射でそう返した。
「言っただろ。もう来なくていいって言ったんだ」
今まで、衝突したことはあったけどこんな事を言うことは無かったヴァイ。だが、ヴァイは今「来るな」つまりパーティーを追放すると、はっきりと言い切った。
「な、何でだよ?ヴァイ。今まで一緒にやってきじゃ――――」
反論しようとした俺の言葉を遮り、後ろから聞こえた声はレイのものだった。
「反論はなしよ。昨日、皆で決めたの。貴方は魔王討伐には要らないって」
「なにを言っているんだよ、理由はあるのか?今まで、長い間一緒に成長してきた仲間なのにどうして、簡単に捨てられるんだよ……」
「それに関しては私が……」
そう言って説明に入ったのは、真剣な眼差しを見せるアスノーだった。
「魔王には、ゲイルさんが持っているスキルが効かないそうなのです」
「でも魔王以外の魔物には効くはずだろ。それに、高威力の魔法だって俺は使える。強化スキルも皆の役に立つはずだろ?」
今までは、援助に全力を出して魔物に対しての攻撃はあまりする機会がなかった俺だがそれでもアスノーは俺の力を知っているはずだ。その可能性に賭けて、俺はアスノー達に訴えた。
「そうかも知れませんが、魔王との戦いにおいてゲイルさんを守って戦う余裕がないんですよ」
「いや、よく考えてくれ。強化スキルを使った後、俺は逃げに徹することだってできる。その後は別に守ってもらわずに、俺一人でどうにかするから!!だから」
「そういうわけには、いきません」
「何でだよ……お前ならわかるだろアスノー。みんなを見てきた、俺を見てきたお前なら――」
「ゲイル、頼むから言い訳は止めろ」
アスノーとの会話に横から入ってきたヴァイは、俺を突き放した。
「ヴァイ……もう一度考えてくれ、俺の実力を見せてやる。そしたら、皆の考えだって変わ――」
「ダメだゲイル。お前の意見はもう聞かない。もうパーティーメンバーじゃないんだ。幼馴染として、最期にこれを持っていけ"手切れ金"だ。金貨が100枚入ってる。足りないようなら、いつでも言え。だから、もう俺たちのことは”仲間”と呼ぶな」
その時、心のどこかにひびが入った。終わった――。
今までやって来たのに……。
『手切れ金』その言葉で確信した。
もうパーティーじゃないんだと。仲間じゃないんだと。
何か言う気力も無くなり……俺は追放された。その事実を無力にも実感してしまった。
「そうかよ。じゃあこれで、俺たちの関係は終わった。もうお前たちに会いには来ないよ。今までありがとう、それじゃあな」
そう言って、俺は応接室を後にした。
こんな、簡単に今までのことがすべて無駄になるなんてな。
未練を残しながらも、それは欲張りすぎだったのだと思ってしまい俺はギルドを飛び出した。
――もう、後悔はしない。初めから期待なんてしなければよかったんだ。
これからは自由に生きよう。
ポッカリあいた心の穴を埋めるように、俺はそう言い聞かせて街に出た。
銀髪に緑色の目を持つ俺は、ここフェンリル町を拠点に冒険者として、魔獣や魔物と戦っている。職業は、全能力魔法師としてギルドに登録していて、スキルの数は100以上、魔法もそのほとんどを行使できる。
そんな俺には大切なパーティーメンバーがいる。
それは、幼馴染でもあり始めてパーティーを組んだヴァイ。そして、2年前、ヴァイ共に冒険者をしていたときに知り合ったアスノーとレイだ。
今まで数々の依頼をこなして来た俺達は、ギルドからの信頼も厚く三大魔と呼ばれている魔獣の一体レッドドラゴンを討伐した事をきっかけに、本格的に「魔王を討伐しよう」という方針が決まった。
今日は魔王討伐に向けての作戦会議ということでギルドの部屋に来るようにとパーティーに呼び出されており、俺は遂にこの時が来たか……と勢いよく扉を開けた。
「おはよう、ちょっと早かったか?」
「よう、ゲイル」
応接室に入ってすぐ反応したのはヴァイだった。
幼馴染の彼は、赤い髪を逆立たせている青少年な風貌で仲間想いの優しい奴だ。彼のスキルは魔王に留めを刺すことが出来る【勇者】を筆頭に、【剣の才】【剣の魂】【剣の神】【覇道剣】【聖剣】の6つだ。そして、スキル【勇者】を持っていることから職業は勇者としてギルドに登録されている。
「早かったですね」
ヴァイに続いて、彼の隣にいたアスノーが言う。
アスノーは、幅広いスキルを持つ万能能力者で、その容姿は黒髪に黒目と珍しい。アスノーのスキルは、【槍の才】【槍の魂】【予測】【魔力感知】【攻撃察知】【身体能力上昇】【盗聴】【気配消】の8つで、状況に応じて的確に行使する彼はパーティーの指揮役になることも多い。18歳とパーティーの中で一番経験が豊富ということもありみんな頼りにしているパーティーリーダーのような存在だ。
「おはよう~」
気怠そうに挨拶をするのは、レイだ。彼女は暗い金色の長い髪と栗のように少し暗い茶色の目をしているパーティーで唯一の女性だ。レイは、魔法使いとして登録しており、魔法の習得や威力が上昇するスキル【魔法の才】【魔法の魂】【魔法の神】に加えて水属性、氷属性、火属性、風属性の強化スキルや【魔法感知】【魔力操作】などの補助スキルを合わせると16のスキルを持っている才女だ。
「それで、今日の話ってなんだ?」
語り掛けながらヴァイの隣へと歩みを進めていると「もう、来なくていいぞ」と耳を疑う発言がヴァイから聞こえた。
「え?」
俺は、あまりに突然の出来事に困惑し反射でそう返した。
「言っただろ。もう来なくていいって言ったんだ」
今まで、衝突したことはあったけどこんな事を言うことは無かったヴァイ。だが、ヴァイは今「来るな」つまりパーティーを追放すると、はっきりと言い切った。
「な、何でだよ?ヴァイ。今まで一緒にやってきじゃ――――」
反論しようとした俺の言葉を遮り、後ろから聞こえた声はレイのものだった。
「反論はなしよ。昨日、皆で決めたの。貴方は魔王討伐には要らないって」
「なにを言っているんだよ、理由はあるのか?今まで、長い間一緒に成長してきた仲間なのにどうして、簡単に捨てられるんだよ……」
「それに関しては私が……」
そう言って説明に入ったのは、真剣な眼差しを見せるアスノーだった。
「魔王には、ゲイルさんが持っているスキルが効かないそうなのです」
「でも魔王以外の魔物には効くはずだろ。それに、高威力の魔法だって俺は使える。強化スキルも皆の役に立つはずだろ?」
今までは、援助に全力を出して魔物に対しての攻撃はあまりする機会がなかった俺だがそれでもアスノーは俺の力を知っているはずだ。その可能性に賭けて、俺はアスノー達に訴えた。
「そうかも知れませんが、魔王との戦いにおいてゲイルさんを守って戦う余裕がないんですよ」
「いや、よく考えてくれ。強化スキルを使った後、俺は逃げに徹することだってできる。その後は別に守ってもらわずに、俺一人でどうにかするから!!だから」
「そういうわけには、いきません」
「何でだよ……お前ならわかるだろアスノー。みんなを見てきた、俺を見てきたお前なら――」
「ゲイル、頼むから言い訳は止めろ」
アスノーとの会話に横から入ってきたヴァイは、俺を突き放した。
「ヴァイ……もう一度考えてくれ、俺の実力を見せてやる。そしたら、皆の考えだって変わ――」
「ダメだゲイル。お前の意見はもう聞かない。もうパーティーメンバーじゃないんだ。幼馴染として、最期にこれを持っていけ"手切れ金"だ。金貨が100枚入ってる。足りないようなら、いつでも言え。だから、もう俺たちのことは”仲間”と呼ぶな」
その時、心のどこかにひびが入った。終わった――。
今までやって来たのに……。
『手切れ金』その言葉で確信した。
もうパーティーじゃないんだと。仲間じゃないんだと。
何か言う気力も無くなり……俺は追放された。その事実を無力にも実感してしまった。
「そうかよ。じゃあこれで、俺たちの関係は終わった。もうお前たちに会いには来ないよ。今までありがとう、それじゃあな」
そう言って、俺は応接室を後にした。
こんな、簡単に今までのことがすべて無駄になるなんてな。
未練を残しながらも、それは欲張りすぎだったのだと思ってしまい俺はギルドを飛び出した。
――もう、後悔はしない。初めから期待なんてしなければよかったんだ。
これからは自由に生きよう。
ポッカリあいた心の穴を埋めるように、俺はそう言い聞かせて街に出た。
6
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる