龍人(ひと)と人~守るもの、護るもの~

ドラゴニック

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第1章 ~信頼と信用、壁を越えて~

第2話 龍人(ひと)

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同刻砦上空、そこに1人の女性が飛んでいた。暗い顔をし、体のあちこちに傷がつき、そして、鱗の一部が剥がれた、翼を生やした女性が。
「ママ……パパ……」
悲しそうに親を呼ぶ。しかし、彼女の親はもういないのだ。彼女の名はソミナ、故郷を失った龍人である。何故彼女は親を、故郷を失ったのか、それは故郷で起こったとある出来事が要因である。

遡ること数日前、彼女は龍と人が住まう、人が共存出来る唯一の里で暮らしていた。この里は両脇が断崖絶壁であるものの、日中差し込む太陽のおかげで暖かく、植物がよく育つ自然豊かな里である。あちこちのとても大きな木と木の間に橋をかけ、人々はそこを渡り様々な場所で買い物などを行っていた。
しかし、その平和は打ち破られた。龍を嫌う人間によって里は襲われたのだ。里の人は争いを好まなかったため、武器を持たずに逃げ惑い、殺された。
彼女の母は彼女を庇い殺され、父は彼女を逃がすため仲間の龍と共に人間に立ち向かった。父は龍だが、人や仲間に優しく勇敢的、母はお淑やかで愛情を持って彼女を育てた。そんな彼女が愛する親は死んでしまった。

そして彼女は故郷を離れ、ずっと逃げ続けて来たのだ。
「うぅ……この先どうすればいいの?教えてよ……誰か……」
そう呟き、下を見る。そして
「……え?何なの、これ?」
彼女が見たのは魔物によって破壊されていく砦であった。
(どうしてあんなに魔物がいるの?どうしてアンデッドがいるの?)
その疑問を持ったまま上からじっと光景を見ていた。それもそのはず、砦を攻めていたのはオークやゴブリン、ゾンビやスケルトン、そして、本来ならこの地域にはいないはずのサイクロプスがいたからだ。彼女はとにかく魔物達が去るのを待った。

それからどれくらい時間が経っただろうか、魔物たちは破壊をし終えたのかあちこちの森や洞窟、川へと立ち去って行った。それを見届けた彼女は
(あそこで食べ物を探そう)
と思い、砦跡に降り立った。

砦に降り立った彼女が見たのは、無数の死体、崩れた建物、壊れた門や壁、さらには壊れて使い物にならなくなった鎧や武器である。
「うぅ……とても食べ物を置いてますよ、というところに見えませんね……」
吐き気を何度かもよおしたが、それでも瓦礫や倒れた木の壁などを押しのけて食べ物を探し続けた。

それから数十分、食べ物が見つかる気配は無かった。そして次の焼け跡を見た途端、その焼け跡の床に違和感を覚えた。
「あれ?あの床、なぜか一部が焦げてるだけですね」
不審に感じた彼女が焼け跡の周りを調べていくと、何故か、違和感をとても覚える、凹んだ、いや、崩れた地面があった。その時彼女はこう考えた
(もしかして、食べ物はこの先に!やっと食べ物にありつける!)
もはや食べる事しか頭に無かった彼女は、その地面の上を歩いた。この先に食べ物があると信じて。

しかし、現実は非情であった。その先にあったのは崩落したと思われる地面、食べ物が仮にあったとしても食べれたものではない。
「そんなぁ……ここまで来てそれはないよぉ……」
彼女は落胆した。目の前にあったはずの希望が絶望に生まれ変わったからだ。だが彼女は気づいた。もしもここに道があったなら他に道はあるだろう、と。
「掘り返して探してみよう」
そして彼女は崩れた地面を掘り始めた。空腹で腹が鳴ろうとも掘り続けた。

しかし、どれだけ掘っても道が出てこない。
(やっぱり食べ物なんてないんだろうか……)
と諦めかけてたその時、今掘ってる所で出てきた石がコトンと音を立てた。
「え?」
彼女は驚いた。しかし、これで分かった事もある。この石の下に何かがいる、と。彼女は石をどかし始めた。大きな石や小さな石、大小様々な石をどかし続けた。
(ここに生存者がいるかもしれない!そうなったら残ってる食べ物を!)
ただこんな時でも食べ物優先の彼女である。

それから暫くして、陽が落ちる頃
「よいしょっと」
大きな石をどかした時、何かが見えた。
「あれ?何でしょう、これ」
よく見ると、5本の指に金属の籠手、その指がピクリと動いている。生存者である。
(指が!生きてる!)
彼女は石をどかし続けた、やっと見つけた生存者を見殺しに出来なかったから。石をどかし続けていくと、その姿が明らかになっていく。凹んだ兜、壊れた2つの砲塔、腰に差してあるソード、からだを落ちてくる石から守り続けた鎧、血が出ていた跡がある足、そして、黒髪の男、何故か彼女はそれが男だと断定したのだ。
「やっぱり人がいた、でもどこかで休ませないと……」
彼女は傷つき目覚めぬ男を抱えて重いと思わせる顔をしながら男を原型をなんとか留めた家に運んだ。彼女はその後、なんとかその家にあったわずかな食料を使い、食事をし、彼にも口を開けてその食料を入れて飲み込ませた。
(食べ物を探しに来ただけなのに……でも、この人、ここの住人だったのかなぁ。もしそうだとしたら、私と同じ……)

その後、彼女は彼を寝かせたままにさ、自分は丸くなって眠った。明日からまた彼を運ぶために
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