2 / 4
第1章 ~信頼と信用、壁を越えて~
第2話 龍人(ひと)
しおりを挟む
同刻砦上空、そこに1人の女性が飛んでいた。暗い顔をし、体のあちこちに傷がつき、そして、鱗の一部が剥がれた、翼を生やした女性が。
「ママ……パパ……」
悲しそうに親を呼ぶ。しかし、彼女の親はもういないのだ。彼女の名はソミナ、故郷を失った龍人である。何故彼女は親を、故郷を失ったのか、それは故郷で起こったとある出来事が要因である。
遡ること数日前、彼女は龍と人が住まう、人が共存出来る唯一の里で暮らしていた。この里は両脇が断崖絶壁であるものの、日中差し込む太陽のおかげで暖かく、植物がよく育つ自然豊かな里である。あちこちのとても大きな木と木の間に橋をかけ、人々はそこを渡り様々な場所で買い物などを行っていた。
しかし、その平和は打ち破られた。龍を嫌う人間によって里は襲われたのだ。里の人は争いを好まなかったため、武器を持たずに逃げ惑い、殺された。
彼女の母は彼女を庇い殺され、父は彼女を逃がすため仲間の龍と共に人間に立ち向かった。父は龍だが、人や仲間に優しく勇敢的、母はお淑やかで愛情を持って彼女を育てた。そんな彼女が愛する親は死んでしまった。
そして彼女は故郷を離れ、ずっと逃げ続けて来たのだ。
「うぅ……この先どうすればいいの?教えてよ……誰か……」
そう呟き、下を見る。そして
「……え?何なの、これ?」
彼女が見たのは魔物によって破壊されていく砦であった。
(どうしてあんなに魔物がいるの?どうしてアンデッドがいるの?)
その疑問を持ったまま上からじっと光景を見ていた。それもそのはず、砦を攻めていたのはオークやゴブリン、ゾンビやスケルトン、そして、本来ならこの地域にはいないはずのサイクロプスがいたからだ。彼女はとにかく魔物達が去るのを待った。
それからどれくらい時間が経っただろうか、魔物たちは破壊をし終えたのかあちこちの森や洞窟、川へと立ち去って行った。それを見届けた彼女は
(あそこで食べ物を探そう)
と思い、砦跡に降り立った。
砦に降り立った彼女が見たのは、無数の死体、崩れた建物、壊れた門や壁、さらには壊れて使い物にならなくなった鎧や武器である。
「うぅ……とても食べ物を置いてますよ、というところに見えませんね……」
吐き気を何度かもよおしたが、それでも瓦礫や倒れた木の壁などを押しのけて食べ物を探し続けた。
それから数十分、食べ物が見つかる気配は無かった。そして次の焼け跡を見た途端、その焼け跡の床に違和感を覚えた。
「あれ?あの床、なぜか一部が焦げてるだけですね」
不審に感じた彼女が焼け跡の周りを調べていくと、何故か、違和感をとても覚える、凹んだ、いや、崩れた地面があった。その時彼女はこう考えた
(もしかして、食べ物はこの先に!やっと食べ物にありつける!)
もはや食べる事しか頭に無かった彼女は、その地面の上を歩いた。この先に食べ物があると信じて。
しかし、現実は非情であった。その先にあったのは崩落したと思われる地面、食べ物が仮にあったとしても食べれたものではない。
「そんなぁ……ここまで来てそれはないよぉ……」
彼女は落胆した。目の前にあったはずの希望が絶望に生まれ変わったからだ。だが彼女は気づいた。もしもここに道があったなら他に道はあるだろう、と。
「掘り返して探してみよう」
そして彼女は崩れた地面を掘り始めた。空腹で腹が鳴ろうとも掘り続けた。
しかし、どれだけ掘っても道が出てこない。
(やっぱり食べ物なんてないんだろうか……)
と諦めかけてたその時、今掘ってる所で出てきた石がコトンと音を立てた。
「え?」
彼女は驚いた。しかし、これで分かった事もある。この石の下に何かがいる、と。彼女は石をどかし始めた。大きな石や小さな石、大小様々な石をどかし続けた。
(ここに生存者がいるかもしれない!そうなったら残ってる食べ物を!)
ただこんな時でも食べ物優先の彼女である。
それから暫くして、陽が落ちる頃
「よいしょっと」
大きな石をどかした時、何かが見えた。
「あれ?何でしょう、これ」
よく見ると、5本の指に金属の籠手、その指がピクリと動いている。生存者である。
(指が!生きてる!)
彼女は石をどかし続けた、やっと見つけた生存者を見殺しに出来なかったから。石をどかし続けていくと、その姿が明らかになっていく。凹んだ兜、壊れた2つの砲塔、腰に差してあるソード、からだを落ちてくる石から守り続けた鎧、血が出ていた跡がある足、そして、黒髪の男、何故か彼女はそれが男だと断定したのだ。
「やっぱり人がいた、でもどこかで休ませないと……」
彼女は傷つき目覚めぬ男を抱えて重いと思わせる顔をしながら男を原型をなんとか留めた家に運んだ。彼女はその後、なんとかその家にあったわずかな食料を使い、食事をし、彼にも口を開けてその食料を入れて飲み込ませた。
(食べ物を探しに来ただけなのに……でも、この人、ここの住人だったのかなぁ。もしそうだとしたら、私と同じ……)
その後、彼女は彼を寝かせたままにさ、自分は丸くなって眠った。明日からまた彼を運ぶために
「ママ……パパ……」
悲しそうに親を呼ぶ。しかし、彼女の親はもういないのだ。彼女の名はソミナ、故郷を失った龍人である。何故彼女は親を、故郷を失ったのか、それは故郷で起こったとある出来事が要因である。
遡ること数日前、彼女は龍と人が住まう、人が共存出来る唯一の里で暮らしていた。この里は両脇が断崖絶壁であるものの、日中差し込む太陽のおかげで暖かく、植物がよく育つ自然豊かな里である。あちこちのとても大きな木と木の間に橋をかけ、人々はそこを渡り様々な場所で買い物などを行っていた。
しかし、その平和は打ち破られた。龍を嫌う人間によって里は襲われたのだ。里の人は争いを好まなかったため、武器を持たずに逃げ惑い、殺された。
彼女の母は彼女を庇い殺され、父は彼女を逃がすため仲間の龍と共に人間に立ち向かった。父は龍だが、人や仲間に優しく勇敢的、母はお淑やかで愛情を持って彼女を育てた。そんな彼女が愛する親は死んでしまった。
そして彼女は故郷を離れ、ずっと逃げ続けて来たのだ。
「うぅ……この先どうすればいいの?教えてよ……誰か……」
そう呟き、下を見る。そして
「……え?何なの、これ?」
彼女が見たのは魔物によって破壊されていく砦であった。
(どうしてあんなに魔物がいるの?どうしてアンデッドがいるの?)
その疑問を持ったまま上からじっと光景を見ていた。それもそのはず、砦を攻めていたのはオークやゴブリン、ゾンビやスケルトン、そして、本来ならこの地域にはいないはずのサイクロプスがいたからだ。彼女はとにかく魔物達が去るのを待った。
それからどれくらい時間が経っただろうか、魔物たちは破壊をし終えたのかあちこちの森や洞窟、川へと立ち去って行った。それを見届けた彼女は
(あそこで食べ物を探そう)
と思い、砦跡に降り立った。
砦に降り立った彼女が見たのは、無数の死体、崩れた建物、壊れた門や壁、さらには壊れて使い物にならなくなった鎧や武器である。
「うぅ……とても食べ物を置いてますよ、というところに見えませんね……」
吐き気を何度かもよおしたが、それでも瓦礫や倒れた木の壁などを押しのけて食べ物を探し続けた。
それから数十分、食べ物が見つかる気配は無かった。そして次の焼け跡を見た途端、その焼け跡の床に違和感を覚えた。
「あれ?あの床、なぜか一部が焦げてるだけですね」
不審に感じた彼女が焼け跡の周りを調べていくと、何故か、違和感をとても覚える、凹んだ、いや、崩れた地面があった。その時彼女はこう考えた
(もしかして、食べ物はこの先に!やっと食べ物にありつける!)
もはや食べる事しか頭に無かった彼女は、その地面の上を歩いた。この先に食べ物があると信じて。
しかし、現実は非情であった。その先にあったのは崩落したと思われる地面、食べ物が仮にあったとしても食べれたものではない。
「そんなぁ……ここまで来てそれはないよぉ……」
彼女は落胆した。目の前にあったはずの希望が絶望に生まれ変わったからだ。だが彼女は気づいた。もしもここに道があったなら他に道はあるだろう、と。
「掘り返して探してみよう」
そして彼女は崩れた地面を掘り始めた。空腹で腹が鳴ろうとも掘り続けた。
しかし、どれだけ掘っても道が出てこない。
(やっぱり食べ物なんてないんだろうか……)
と諦めかけてたその時、今掘ってる所で出てきた石がコトンと音を立てた。
「え?」
彼女は驚いた。しかし、これで分かった事もある。この石の下に何かがいる、と。彼女は石をどかし始めた。大きな石や小さな石、大小様々な石をどかし続けた。
(ここに生存者がいるかもしれない!そうなったら残ってる食べ物を!)
ただこんな時でも食べ物優先の彼女である。
それから暫くして、陽が落ちる頃
「よいしょっと」
大きな石をどかした時、何かが見えた。
「あれ?何でしょう、これ」
よく見ると、5本の指に金属の籠手、その指がピクリと動いている。生存者である。
(指が!生きてる!)
彼女は石をどかし続けた、やっと見つけた生存者を見殺しに出来なかったから。石をどかし続けていくと、その姿が明らかになっていく。凹んだ兜、壊れた2つの砲塔、腰に差してあるソード、からだを落ちてくる石から守り続けた鎧、血が出ていた跡がある足、そして、黒髪の男、何故か彼女はそれが男だと断定したのだ。
「やっぱり人がいた、でもどこかで休ませないと……」
彼女は傷つき目覚めぬ男を抱えて重いと思わせる顔をしながら男を原型をなんとか留めた家に運んだ。彼女はその後、なんとかその家にあったわずかな食料を使い、食事をし、彼にも口を開けてその食料を入れて飲み込ませた。
(食べ物を探しに来ただけなのに……でも、この人、ここの住人だったのかなぁ。もしそうだとしたら、私と同じ……)
その後、彼女は彼を寝かせたままにさ、自分は丸くなって眠った。明日からまた彼を運ぶために
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる