拝啓、空の彼方のあなたへ -1000の手紙-

emi

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2017年

あの子が初めて見たもの

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あなたへ

先日、あの子と一緒に、夜の公園に出掛けました。
その場所で、あの子に、
どうしても、見せたいものがありました。

あの子がまだ、一度も見たことのなかったホタル。

この辺りでも、あなたの実家の方でも、
ホタルを見た話は聞かず、
見る事は出来ないのだと、ずっと思っていました。

先日、あなたと一緒にホタルを見た日のことを思い返しながら、
ふと、何処か、見られる場所が、あるような気がしました。
調べてみると、少し離れたところで、
ホタルが見られる事を知りました。

そこは、あの子がまだ小さかった頃に、
一度だけ、あなたが連れて行ってくれた公園でした。

ホタルを見るには、少し早めに着いたので、公園内を散歩しました。

静かで、いい場所だねって、
あの子は、その公園を、とても気に入った様子でした。

小さな頃、家族3人で行った事は、
覚えていないと言ったあの子だったけれど、
散歩をしながら、
あなたの事を、色々と、思い出しているようでした。

静けさの中、ポツリと、
あなたがいない事が寂しいと、
普段はあまり口にしないあの子の本音に、
胸が痛く、私も寂しかった。

そうして、あの子と2人、あなたを想いながら、
ゆっくりと、日が暮れて、
辺りは暗闇に包まれていきました。

暗闇の中、1匹のホタルを先に見つけたのは、
あの子でした。

見て、光ってる
あそこにホタルがいるよ

初めて見つけたホタルに、大はしゃぎのあの子は、
なんだか、小さな子供みたいで、可愛かった。

そうして、園内を歩きながら、たくさんのホタルを見つけました。

ホタルを見つける度に、

見て、あそこにもホタルがいるよ
あっちにも。見える?
星が飛んでいるみたいだね って、

その幻想的な光に、すっかり魅力されたあの子は、
来て良かったと、何度も言ってくれました。

また来年も、来ようね

興奮気味に、そう言ってくれたあの子の笑顔は、
無邪気に笑っていた、小さな頃のあの子の顔でした。

 
ホタルを見つけた暗闇の中、
あなたが側にいる気がしました。

それはなんだか、
寂しいと呟いた私達に、
寄り添ってくれたかのような、あなたの気配でした。


 2017.06.26
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