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第4章 天界取材
61話 グリフォン獣舎
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エルマーの提案を採用し、帰りにもう一度見に来ることにして、次に向かったのは、二番目に見たかったグリフォンの所だ。
グリフォンは、鷲の翼と上半身にライオンの下半身を持つ、こちらも絶滅危惧種に指定されている希少動物だ。
ユニコーンよりは個体数が多く、ここ数百年で人工繁殖に成功して少しずつその数を増やしている。らしい。(解説:エルマー)
ユニコーンほど人間に対して警戒心は強くないらしく、私八人が腕を広げ手を繋ぎ輪になったくらいの幹を持つ巨木が何本か立つ広場に、数頭が自由に過ごしている。
「わぁ~、大きいね~!」
「立ち上がったら四メートルくらいあるからね。翼を広げて威圧されたら、一溜りもないよ」
「確かに。私だったら即、気を失っちゃうだろうなぁ」
一つの巨木に二~三頭ずつのんびりと過ごしているのだが、その中でも一際大きな体で翼の付け根に金色の羽が生えているグリフォンと、目が合った。
金色の瞳に縦に長い瞳孔で、観察するようにじっと見られている。
「あの一番でかいやつ、シエナの事ずっと見てないか?」
「う、うん。そうみたい」
「あれは…、長だね。ここのグリフォンは動物園内で一つの群れになってるんだけど、あの金の羽があるのは群れのリーダーだよ」
気づかない内に、何か気に障ることでもしてしまったのかなぁ。
普通に見ていただけなんだけど。
すると、そのリーダーが目を合わせたまま近づいてきた。
その威圧感に逃げることもできず、三人横並びでピシッと固まったままでいると、私が手を付いている柵の目の前で立ち止まった。
手を伸ばせば触れられるほどの距離だ。
長身のリトが見上げるほど上にグリフォンの頭はあり、私はほぼ真上を見上げているような恰好になる。
「「「…………」」」
誰も何も言葉を発することなく、体感的には十分くらいに感じるが実際は数秒だろう時間を、グリフォンと見つめ合う。
敵意は向けられていないようだけど、何なのだろうか。
言葉が通じるかはわからないが聞いてみようかと、冷や汗をかきながら思っていると、獣舎の方から「こらー!何やってんすかー!」と叫び声が聞こえてきた。
しかも少しずつ近づいてきている。
「すんません、すぐに離れさせますんで!こら!こっちに来るっす!」
飼育員さんと思われる人が、大きなグリフォンの体をぐいぐい押しているのが、視界の隅に見える。
しかし、全く動く様子のない目の前のリーダーグリフォンは、ずっと私と合わせていた視線を飼育員さんに向けた。
や、やっと解放された……
首が痛いよ……
視線が外れたことにほっとして、頭を下に向けて伸ばしながら詰めていた息を吐き出していると、「あのぉ~」とおずおずとした様子で飼育員さんが話しかけてきた。
「こいつが、あなたと話したいって言ってるんすけど…」
「え…、私とですか?」
「はいっす。あ、自分がこいつの言葉をそっくりそのまま伝えるんで、お客様はこいつに話しかけてくれればオーケーっす。人語も理解できるっすから」
グリフォンは、鷲の翼と上半身にライオンの下半身を持つ、こちらも絶滅危惧種に指定されている希少動物だ。
ユニコーンよりは個体数が多く、ここ数百年で人工繁殖に成功して少しずつその数を増やしている。らしい。(解説:エルマー)
ユニコーンほど人間に対して警戒心は強くないらしく、私八人が腕を広げ手を繋ぎ輪になったくらいの幹を持つ巨木が何本か立つ広場に、数頭が自由に過ごしている。
「わぁ~、大きいね~!」
「立ち上がったら四メートルくらいあるからね。翼を広げて威圧されたら、一溜りもないよ」
「確かに。私だったら即、気を失っちゃうだろうなぁ」
一つの巨木に二~三頭ずつのんびりと過ごしているのだが、その中でも一際大きな体で翼の付け根に金色の羽が生えているグリフォンと、目が合った。
金色の瞳に縦に長い瞳孔で、観察するようにじっと見られている。
「あの一番でかいやつ、シエナの事ずっと見てないか?」
「う、うん。そうみたい」
「あれは…、長だね。ここのグリフォンは動物園内で一つの群れになってるんだけど、あの金の羽があるのは群れのリーダーだよ」
気づかない内に、何か気に障ることでもしてしまったのかなぁ。
普通に見ていただけなんだけど。
すると、そのリーダーが目を合わせたまま近づいてきた。
その威圧感に逃げることもできず、三人横並びでピシッと固まったままでいると、私が手を付いている柵の目の前で立ち止まった。
手を伸ばせば触れられるほどの距離だ。
長身のリトが見上げるほど上にグリフォンの頭はあり、私はほぼ真上を見上げているような恰好になる。
「「「…………」」」
誰も何も言葉を発することなく、体感的には十分くらいに感じるが実際は数秒だろう時間を、グリフォンと見つめ合う。
敵意は向けられていないようだけど、何なのだろうか。
言葉が通じるかはわからないが聞いてみようかと、冷や汗をかきながら思っていると、獣舎の方から「こらー!何やってんすかー!」と叫び声が聞こえてきた。
しかも少しずつ近づいてきている。
「すんません、すぐに離れさせますんで!こら!こっちに来るっす!」
飼育員さんと思われる人が、大きなグリフォンの体をぐいぐい押しているのが、視界の隅に見える。
しかし、全く動く様子のない目の前のリーダーグリフォンは、ずっと私と合わせていた視線を飼育員さんに向けた。
や、やっと解放された……
首が痛いよ……
視線が外れたことにほっとして、頭を下に向けて伸ばしながら詰めていた息を吐き出していると、「あのぉ~」とおずおずとした様子で飼育員さんが話しかけてきた。
「こいつが、あなたと話したいって言ってるんすけど…」
「え…、私とですか?」
「はいっす。あ、自分がこいつの言葉をそっくりそのまま伝えるんで、お客様はこいつに話しかけてくれればオーケーっす。人語も理解できるっすから」
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