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第3章 いざ、天界へ!
38話 忙しない日々
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その後、編集長が手配したという記者のトンゴさんと引き合わされ、軽く自己紹介した後、ガイドブックに関して打ち合わせをした。
トンゴさんは、中肉中背で背は私と同じくらいの高さで、やや白髪交じりの短く切り揃えられた黒髪に焦げ茶の瞳をした、穏やかな顔付きのおじさん記者で、普段は園芸雑誌の編集者をしているらしい。
編集長と旧知の仲らしく、「こんな見た目だが、腕は一流だ!なんせ俺が認めた男だからな!」とトンゴさんの背中を強くバシバシ叩いて笑っていた。
リトやエルマーさんと先に顔合わせをした方がいいかと聞くと、園芸雑誌の方の締め切りが一つあるから、それが終わってからの方が有難いと言われたので、トンゴさんが二人と会うのは天界へ出発する当日ということになった。
政府の許可は、魔界の時と同様に申請してから三日後には許可が下り、トンゴさんの締め切り明けを待ってからすぐに出発することになった。
それまでの間に、私も自分の担当記事を二つ仕上げて、編集長に追加でもう一つ記事を上げろと言われている所をユリカナさんに間に入って助けてもらって、エルマーさんとも打ち合わせを兼ねた食事をし、天界へ出発するまでの間を忙しなく過ごした。
因みに、エルマーさんとの食事はリトと三人だったのだが、食事の間も、なんなら店に一緒に向かっている時から、ずっとリトは不機嫌だった。
理由を聞いても「何でもない」としか言わないし、エルマーさんと合流してからはさらに不機嫌度が上がっているのは明確なのに、入店し席に着いてもすぐ隣に椅子を持ってきて座るし、テーブルの下で手を握って来るし、打ち合わせの会話には普通に参加しているのに行動と合っていなくて、混乱してしまっており、表情に出さないようにするのが大変だった。
打ち合わせも終わり、店を出てからエルマーさんがもう一軒どうかと誘ってくれた時も、「結構だ」の一言だけ言って私を引っ張って帰ってしまった。
「もう、リト!何なの?ずっと不機嫌じゃない。何かあったの?」
「………何もない」
「何もなくないよ。エルマーさんだって、変に思ったかもしれないじゃない。これから一緒に仕事する相手なのに」
そこまで言ってから、もしかしたらこの間拗ねていたのと同じ理由なのではないかと思い当たった。
「この間はエルマーさんと仕事する事、納得してくれたでしょう?」
「仕事に関しては納得している。それでも、あの天使とシエナが一緒に居るのは嫌なんだ。……心がざわざわして落ち着かない……頭と心が別物になったみたいだ…」
最後の方は良く聞こえなかったけど、不機嫌な理由はやはりこの前と一緒らしい。
さて、どうやってこの拗ね悪魔のご機嫌を取ろうか。
近くにスイーツの店あったっけ?
その後、カフェでスイーツを食べても、しばらくの間は不機嫌なままだった。
結局リトが私の家まで送ると言って聞かなかったので、話をしながらゆっくり送ってもらって、家に辿り着くころになってようやく笑ってくれたのだった。
こんな感じで天界へ一緒に取材に行って、大丈夫なのだろうか…?
そして今日、やっと長年の夢を一つ叶えることができる。いよいよ出発の日を迎えたのだ。
朝からテンションの高い私を見送りに、お兄さんが朝早くから来てくれている。
「私は天界へは行けないから、暫くの間お別れだね。お嬢さんもリトも、楽しんでおいで」
天界には悪魔の覗き見を防止するため黒い生物が存在しておらず、地上界からも行くことが出来ないため、魔界で仕事があるお兄さんは一緒には行けないのだと説明を受けた。
「じゃあ、天使は白い生き物を使役して覗き見できるの?」
「できるよ。んー、あ、そこの白い犬が今使役されてるね。あっちの白い鳩もだね」
「悪魔はカラスをよく使役するが、天使は鳩を使役することが多いな」
地上界に生息している鳩はそのほとんどが白い。カラスも同様に黒い個体が多い。
だから、覗き見しやすいんだそうだ。
そして、魔界も天使に覗き見されないように、白い生き物は存在していないらしい。
出発直前にまた新たな発見である。
お兄さんと別れて移動し、エルマーさんとトンゴさんと合流する。
さあ、異界へ出発だ!!
トンゴさんは、中肉中背で背は私と同じくらいの高さで、やや白髪交じりの短く切り揃えられた黒髪に焦げ茶の瞳をした、穏やかな顔付きのおじさん記者で、普段は園芸雑誌の編集者をしているらしい。
編集長と旧知の仲らしく、「こんな見た目だが、腕は一流だ!なんせ俺が認めた男だからな!」とトンゴさんの背中を強くバシバシ叩いて笑っていた。
リトやエルマーさんと先に顔合わせをした方がいいかと聞くと、園芸雑誌の方の締め切りが一つあるから、それが終わってからの方が有難いと言われたので、トンゴさんが二人と会うのは天界へ出発する当日ということになった。
政府の許可は、魔界の時と同様に申請してから三日後には許可が下り、トンゴさんの締め切り明けを待ってからすぐに出発することになった。
それまでの間に、私も自分の担当記事を二つ仕上げて、編集長に追加でもう一つ記事を上げろと言われている所をユリカナさんに間に入って助けてもらって、エルマーさんとも打ち合わせを兼ねた食事をし、天界へ出発するまでの間を忙しなく過ごした。
因みに、エルマーさんとの食事はリトと三人だったのだが、食事の間も、なんなら店に一緒に向かっている時から、ずっとリトは不機嫌だった。
理由を聞いても「何でもない」としか言わないし、エルマーさんと合流してからはさらに不機嫌度が上がっているのは明確なのに、入店し席に着いてもすぐ隣に椅子を持ってきて座るし、テーブルの下で手を握って来るし、打ち合わせの会話には普通に参加しているのに行動と合っていなくて、混乱してしまっており、表情に出さないようにするのが大変だった。
打ち合わせも終わり、店を出てからエルマーさんがもう一軒どうかと誘ってくれた時も、「結構だ」の一言だけ言って私を引っ張って帰ってしまった。
「もう、リト!何なの?ずっと不機嫌じゃない。何かあったの?」
「………何もない」
「何もなくないよ。エルマーさんだって、変に思ったかもしれないじゃない。これから一緒に仕事する相手なのに」
そこまで言ってから、もしかしたらこの間拗ねていたのと同じ理由なのではないかと思い当たった。
「この間はエルマーさんと仕事する事、納得してくれたでしょう?」
「仕事に関しては納得している。それでも、あの天使とシエナが一緒に居るのは嫌なんだ。……心がざわざわして落ち着かない……頭と心が別物になったみたいだ…」
最後の方は良く聞こえなかったけど、不機嫌な理由はやはりこの前と一緒らしい。
さて、どうやってこの拗ね悪魔のご機嫌を取ろうか。
近くにスイーツの店あったっけ?
その後、カフェでスイーツを食べても、しばらくの間は不機嫌なままだった。
結局リトが私の家まで送ると言って聞かなかったので、話をしながらゆっくり送ってもらって、家に辿り着くころになってようやく笑ってくれたのだった。
こんな感じで天界へ一緒に取材に行って、大丈夫なのだろうか…?
そして今日、やっと長年の夢を一つ叶えることができる。いよいよ出発の日を迎えたのだ。
朝からテンションの高い私を見送りに、お兄さんが朝早くから来てくれている。
「私は天界へは行けないから、暫くの間お別れだね。お嬢さんもリトも、楽しんでおいで」
天界には悪魔の覗き見を防止するため黒い生物が存在しておらず、地上界からも行くことが出来ないため、魔界で仕事があるお兄さんは一緒には行けないのだと説明を受けた。
「じゃあ、天使は白い生き物を使役して覗き見できるの?」
「できるよ。んー、あ、そこの白い犬が今使役されてるね。あっちの白い鳩もだね」
「悪魔はカラスをよく使役するが、天使は鳩を使役することが多いな」
地上界に生息している鳩はそのほとんどが白い。カラスも同様に黒い個体が多い。
だから、覗き見しやすいんだそうだ。
そして、魔界も天使に覗き見されないように、白い生き物は存在していないらしい。
出発直前にまた新たな発見である。
お兄さんと別れて移動し、エルマーさんとトンゴさんと合流する。
さあ、異界へ出発だ!!
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