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2章 市街戦
3話 仁VSネロ=マーテル
しおりを挟む『貴方の「閃剣」はこれからも多くの人を救う………仁、どうかジュンと葵を頼みます……貴方が護衛隊長だったこと……私はとても嬉しく思います……ありがとう…仁』
それが主の最期の言葉だった。
守れなかった。守らねばならなかった人。
貴女を失っても俺は戦っている。
戦うしか能のない俺だが
そんなことより何より……
貴女の言葉が俺には嬉しかったのだ。
「黒天流弐の太刀・閃剣!」
仁さんの必殺の一撃を
ガキィィイイイイン!!
いとも簡単に防ぐネロ。
その手には鉄扇…か?
「ふふふ、見事な太刀筋ですねー。部隊長さん?」
巨大な鉄扇の後ろから不適な笑みを送るネロ。
「…っ!!」
仁さんも納得いかない様子だ。
仁さんの黒天流はその太刀筋もさることながら、そのあまりにも鋭い剣筋ゆえ生じるソニックブーム、真空から生まれる追撃のダメージがあるはずなのだ。
なのに、ネロの鉄扇で防がれた時、ソニックブームは発生しなかった。なぜだ!?
「んー、不思議ですかー?貴方の戦い方は人形を通して観察していますし、貴方自身が有名人ですからねー。色々と話しは聞いていますよ?なので対策を取らせていただいてます」
仁は鍔迫り合いをしながら気づく。
(鉄扇が振動している?)
1度距離を取る。再び構えた仁は
「黒天流壱の太刀・音凪!!」
かなりの距離から放たれた斬撃からソニックブームが起きる!
(あれを喰らったらネロは吹き飛ぶはず………ッ!?)
スローの世界で見ていた俺の眼がソニックブームの軌跡を捉える。だが……
フッ!!
(!?…鉄扇に当たった瞬間、ソニックブームがかき消された!?)
「無駄ですよー?言ったはずです。対策をしていると」
(振動する鉄扇に何らかの術式?どちらにしろ……)
ソニックブームによる大音響ではコイツは倒せない!
「んふふふ、貴方は身体も丈夫そうですし?いい実験台になりそうだ!今から楽しみになってきましたよー」
笑みを絶やさないネロが地に手をつける!
「『魂魄操術・骸(こんぱくそうじゅつ・むくろ)』!!」
技名を唱えた瞬間、
ブン!!と紫のオーラから2人?のヒト型の人形がネロの左右に現れる。
1つは大きな鎚の武器を持つ巨大な体の人形。
1つは日本刀を携えた細身の剣士の人形。
傑は咄嗟に眼で2人を確認し驚愕する。
(この人形……強い!!さっきまで蹴散らしていた人形とは別格だ…!!)
オーラはネロと同色の紫色だ。大男のオーラは体躯と同様に巨大なオーラ。見ただけで強いとわかる。
剣士のオーラはそれに比べて小さいが、鋭い…!!しかも力を隠している節もある。
(俺じゃ足手まといだ…!時間稼ぎは何とかなるかもしれないが……)
しかし、この場で誰よりも動揺していたのは…………
「……豪?……瞬?………」
知り合い?なのか?
マズイ!仁さんは構えを解いている!
身体の大きな人形……豪が体躯に似合わねスピードで間合いを詰める!すでに巨大な鎚を振りかぶっており、当然狙いは……!!
ヂッと俺の腕を掠める鎚。
あまりの威力とスピードに、仁さんを突き飛ばした俺の腕から、かすっただけなのに鮮血が舞う。
「傑……!!」
「仁さん!!後ろ……!」
仁さんの後ろにいつの間に間を詰めたのか、瞬と呼ばれた人形が剣を振るう!
速い!仁さん程ではないが、スローで見える俺の眼でも捉えるのが厳しい速度がある!
「…ッ!!」
ガキィィイイイイン!!と俺の言葉に咄嗟に反応した仁さんが振り向きざまに剣で受ける。
しかし、
「……なぜ?……お前達が…!!」
動揺を隠しきれず、剣にも力が込められていない。
「仁さん!!……上だ!」
豪が空中にその身を踊らせ、上から巨大な鎚を叩きつけてくる!
「!!」
仁さんがバックステップして辛うじて躱す。
そして、腕を押さえて片膝を突く俺を守るような位置に後退してくる。
「仁さん、あの人達は……」
「…………………」
仁さんは答えない。いや、それが何よりの返事だった。
「んふふふ、覚えてらっしゃるでしょう?この2人は『大嵐』『静寂の水面』の二つ名を持つ大戦の英雄であり、『騎士団』の副隊長……つまり貴方の部下です。いえ、今は『元部下』ですか?」
離れた位置からネロが鉄扇で顔を隠しながら話す。その言葉には獲物をいたぶる残虐性が溢れている。
「いやー、大戦は実にいい実験の機会となりました。なんせ自分で手を下さなくても、優秀な兵士の死体がゴロゴロしているのですから!数には困りませんし?このように「優秀な部下」も手に入りました!」
ネロは鉄扇から顔を覗かせながら、仁さんを眺めている。言葉の銃口を突きつけるように
「しかも!彼等の実力は隊長の貴方と遜色ないレベルと伺っております。んふふふ、貴方には彼等を斬れますか?「閃剣」?」
「…………」
仁は思い出していた。
「大戦」
あの忌まわしき戦争の終盤。
我ら騎士団は劣勢に立たされていた。
いや、大戦の戦局だけでいうと我が国は優勢だった。しかし……
「何ッ!?王のもとに敵兵が!?」
兵卒の報告に一瞬思考が止まる。
「馬鹿な!?騎士団の布陣に穴などないぞ!?我らに気づかれずに王のもとになど行けるわけは……!!」
「いえっ!私もそう思いましたが……確かに敵兵です!!城の南西より「ナンバーズ」率いる一団が出現!今は、周りの部隊が辛うじて進軍を止めていますが……至急応援を…!!」
「っ!!……しかし……!」
騎士団の主力が守るこの砦は王の城に向かう為の道に配置された要所。
相手もそれをわかっており、かなりの戦力を割いてきている。しかもその中に「ナンバーズ」が2人。
番号は7と9。決して上位の者ではないが、普通の兵達では、それこそ何千人かかっても相手にならないだろう。
(俺がここからいなくなり、総崩れになればこの要所を相手は素通り出来る。そうなれば相手が流れ込み城は落ちるだろう!だが、王に何かあれば……それこそ意味が……!!)
考えがまとまらない!どうする…!!
その時だった。
ドォオオオオン!!!
と戦場から爆音が響き、相手の軍の断末魔が聞こえる。
現れたのは
「我こそは『大嵐』!名を豪!!我が戦鎚!受けれるものなら受けてみよ!!」
もう一方でも悲鳴が上がる。
「拙者、『静寂の水面』名を瞬。推して参る」
「豪…!!瞬…!!」
俺が最も信頼する部下が駆けつけてくれた!
「仁さん!!事情は聞いた!ここは俺達に任せて早く王の元に…!!」
「ナンバーズもいるようですが、なに、拙者達2人と騎士団の精鋭なら貴方の帰還まで持ちこたえてみせましょう!」
ナンバーズは強い。おそらくこの2人でさえ及ばないだろう。
だが………!!
「すまん…!!耐えてくれ!!」
するとその言葉に2人はただ笑顔を返してくれた。
その後
俺は大戦終決後に、要所の城まで戻ってきたがそこにいたのは
「仁、おかえり」
俺の信頼する部下ではなく葵さんだった。
「私が来たとき、ここの戦況は苛烈を極めてた。豪と瞬は最初にいたナンバーズ2人を討ち取ったみたいだけど、2人ともその時の負傷で………」
葵さんの言葉は途中で切れる。おそらく俺のことを思いやってのことだろう。
「葵さん。俺の部下の『最期』だ。全て知りたい」
「………うん、2人とも重傷だったけど、そこからも鬼神のごとき働きで最期まで敵の侵入を一兵も許さなかった……許さなかったんだよ?最終的には業を煮やした相手がナンバーズを4人投入。私が到着した時には2人とも討ち取られていて、私がナンバーズを返り討ちにした。でも、2人は……」
そこで葵さんは視線を砦の門を見る。
そこには、
門の前で鎚を支えに、立ったまま絶命している豪……
門の所に片膝を立てた状態で、座り込みながら息を引き取っている瞬……
最期まで敵を一兵も通さない気迫を感じる、凄絶な死に様だった。
「……豪……………瞬……」
俺は2人の傍まで行き、
「貴公達は…最期まで己が役目を果たしたな。隊長として、同じ騎士団として誇りに思う!……だが、許してくれ。俺は……何も守れなかった。王を……大切な仲間を……そして何より君達、大切な友を……!許してくれ!……すまん!!」
顔からは涙が溢れていた。
だけど2人の傍にいると、どこかまた力が湧く自分がいた。
王との約束がある。
俺は守れなかった。守れなかったのだ!
ならばせめて
王との約束を果たそう!
そしていつか、君達、友に
自信を持って、誇りを胸に会える日を……!
ガキィィイイイイン!!
鍔迫り合いが続く!
しかし、仁さんは劣勢。相手の2人が強いのも当然あるが……
(やっぱり、部下の人だから躊躇いがあるのか……!!)
だかあれは死体だ。その証拠にオーラがネロと一緒の紫だし、所々身体の腐敗が進んでいる箇所もある。
「仁さん!!」
援護にと駆けようとする俺を
「………傑!大丈夫だ!……ここは俺に任せてくれ」
仁さんに制止される。
仁さんには何か考えがあるのか?
しかし、相手の2人は強い!そんな考える余裕なんて………
豪の嵐のような連撃
瞬の精密かつ素早い斬撃
仁さんはうまく捌いているが……
ガン!!
と豪の攻撃を受けた仁さんが吹き飛ぶ!
「仁さん!!」
「……大丈夫だ……!」
でも、仁さんの頭から血が…!
すると追い打ちに瞬が間を詰めてくる!
連続攻撃を捌く仁さんだが徐々に手傷が増えていく。
「んふふふ、流石の閃剣も、この2人相手には及びませんか?んー、ならばもう一つ良いことを教えてあげますよ」
絶対に良いことではないだろう顔をしているネロはこう言った。
「『大戦』のあの時、貴方達の王の所に敵兵が来たのを知らせにきたのは、「私の人形」です。あの時、王の所には敵兵など1人もいなかったのですよ?もちろん、ナンバーズもね」
その言葉を聞いた仁さんが………
キン!と自身の刀を鞘に戻す。
「降伏ですかー?それとも戦う意志が削がれましたか?何はともあれ貴方を殺して、私の新しい部下にしてあげましょう!さあ、2人とも止めを!!」
豪と瞬が一斉に襲いかかってくる!
しかし、仁さんは構えるどころか、片手を伸ばし
「『我が剣、我が意志をここに』」
と呪文を唱えた。すると何もない所から一振の刀が現れ仁さんはそれを掴む。そして……
「黒天流秘技…終の太刀・滅風」
ザン!!と振るわれた太刀筋。その瞬間
(…音が消えた!?いや……これは!!)
音というよりも、「空間全体が止まっている」!?
(そうか!あの刀……あの刀の質量がとんでもなく「重い」んだ!」
あの刀は普通の人では到底振るえない重量を持った刀だ!
どうやったかはわからないが、仁さんはそれを持ち前の超スピードで振るうことで「空間自体を消し飛ばした」
そしてそこには仮想ではあるが「真空」が発生し………
次の瞬間弾かれた空気が急速に戻る現象により、豪と瞬、そしてネロが「空間に吸い込まれる」!!
「…………!?………!!!」
まさかの事態に何かしゃべっているネロだが、この空間では音が聞こえない!
「この技から逃れる術はない……」
仁さんは吸い込まれる豪と瞬を見ながら
「…今度は……あの世で一杯やろう」
そう言った。
(笑った?)
死体であるはずの2人が空間に消える瞬間……確かに笑ったように見えた。
そしてネロごと巻き込んだ空間の収縮は終わり
「勝った……?やりましたね!仁さん!!」
「………いや、これは……」
仁さんは何か納得いかない様子で……
ピーンポーン、パーンポーン!!
遮絶全体に学校の案内放送のような音が響き渡る!
何だ!?
『ただいま、ネロ=マーテルの人形が壊されました。これより作戦をフェーズ2へ移行します』
と機械的な音声が流れた。
これは序章……
今夜の戦いは始まったばかりなのだ!
それが主の最期の言葉だった。
守れなかった。守らねばならなかった人。
貴女を失っても俺は戦っている。
戦うしか能のない俺だが
そんなことより何より……
貴女の言葉が俺には嬉しかったのだ。
「黒天流弐の太刀・閃剣!」
仁さんの必殺の一撃を
ガキィィイイイイン!!
いとも簡単に防ぐネロ。
その手には鉄扇…か?
「ふふふ、見事な太刀筋ですねー。部隊長さん?」
巨大な鉄扇の後ろから不適な笑みを送るネロ。
「…っ!!」
仁さんも納得いかない様子だ。
仁さんの黒天流はその太刀筋もさることながら、そのあまりにも鋭い剣筋ゆえ生じるソニックブーム、真空から生まれる追撃のダメージがあるはずなのだ。
なのに、ネロの鉄扇で防がれた時、ソニックブームは発生しなかった。なぜだ!?
「んー、不思議ですかー?貴方の戦い方は人形を通して観察していますし、貴方自身が有名人ですからねー。色々と話しは聞いていますよ?なので対策を取らせていただいてます」
仁は鍔迫り合いをしながら気づく。
(鉄扇が振動している?)
1度距離を取る。再び構えた仁は
「黒天流壱の太刀・音凪!!」
かなりの距離から放たれた斬撃からソニックブームが起きる!
(あれを喰らったらネロは吹き飛ぶはず………ッ!?)
スローの世界で見ていた俺の眼がソニックブームの軌跡を捉える。だが……
フッ!!
(!?…鉄扇に当たった瞬間、ソニックブームがかき消された!?)
「無駄ですよー?言ったはずです。対策をしていると」
(振動する鉄扇に何らかの術式?どちらにしろ……)
ソニックブームによる大音響ではコイツは倒せない!
「んふふふ、貴方は身体も丈夫そうですし?いい実験台になりそうだ!今から楽しみになってきましたよー」
笑みを絶やさないネロが地に手をつける!
「『魂魄操術・骸(こんぱくそうじゅつ・むくろ)』!!」
技名を唱えた瞬間、
ブン!!と紫のオーラから2人?のヒト型の人形がネロの左右に現れる。
1つは大きな鎚の武器を持つ巨大な体の人形。
1つは日本刀を携えた細身の剣士の人形。
傑は咄嗟に眼で2人を確認し驚愕する。
(この人形……強い!!さっきまで蹴散らしていた人形とは別格だ…!!)
オーラはネロと同色の紫色だ。大男のオーラは体躯と同様に巨大なオーラ。見ただけで強いとわかる。
剣士のオーラはそれに比べて小さいが、鋭い…!!しかも力を隠している節もある。
(俺じゃ足手まといだ…!時間稼ぎは何とかなるかもしれないが……)
しかし、この場で誰よりも動揺していたのは…………
「……豪?……瞬?………」
知り合い?なのか?
マズイ!仁さんは構えを解いている!
身体の大きな人形……豪が体躯に似合わねスピードで間合いを詰める!すでに巨大な鎚を振りかぶっており、当然狙いは……!!
ヂッと俺の腕を掠める鎚。
あまりの威力とスピードに、仁さんを突き飛ばした俺の腕から、かすっただけなのに鮮血が舞う。
「傑……!!」
「仁さん!!後ろ……!」
仁さんの後ろにいつの間に間を詰めたのか、瞬と呼ばれた人形が剣を振るう!
速い!仁さん程ではないが、スローで見える俺の眼でも捉えるのが厳しい速度がある!
「…ッ!!」
ガキィィイイイイン!!と俺の言葉に咄嗟に反応した仁さんが振り向きざまに剣で受ける。
しかし、
「……なぜ?……お前達が…!!」
動揺を隠しきれず、剣にも力が込められていない。
「仁さん!!……上だ!」
豪が空中にその身を踊らせ、上から巨大な鎚を叩きつけてくる!
「!!」
仁さんがバックステップして辛うじて躱す。
そして、腕を押さえて片膝を突く俺を守るような位置に後退してくる。
「仁さん、あの人達は……」
「…………………」
仁さんは答えない。いや、それが何よりの返事だった。
「んふふふ、覚えてらっしゃるでしょう?この2人は『大嵐』『静寂の水面』の二つ名を持つ大戦の英雄であり、『騎士団』の副隊長……つまり貴方の部下です。いえ、今は『元部下』ですか?」
離れた位置からネロが鉄扇で顔を隠しながら話す。その言葉には獲物をいたぶる残虐性が溢れている。
「いやー、大戦は実にいい実験の機会となりました。なんせ自分で手を下さなくても、優秀な兵士の死体がゴロゴロしているのですから!数には困りませんし?このように「優秀な部下」も手に入りました!」
ネロは鉄扇から顔を覗かせながら、仁さんを眺めている。言葉の銃口を突きつけるように
「しかも!彼等の実力は隊長の貴方と遜色ないレベルと伺っております。んふふふ、貴方には彼等を斬れますか?「閃剣」?」
「…………」
仁は思い出していた。
「大戦」
あの忌まわしき戦争の終盤。
我ら騎士団は劣勢に立たされていた。
いや、大戦の戦局だけでいうと我が国は優勢だった。しかし……
「何ッ!?王のもとに敵兵が!?」
兵卒の報告に一瞬思考が止まる。
「馬鹿な!?騎士団の布陣に穴などないぞ!?我らに気づかれずに王のもとになど行けるわけは……!!」
「いえっ!私もそう思いましたが……確かに敵兵です!!城の南西より「ナンバーズ」率いる一団が出現!今は、周りの部隊が辛うじて進軍を止めていますが……至急応援を…!!」
「っ!!……しかし……!」
騎士団の主力が守るこの砦は王の城に向かう為の道に配置された要所。
相手もそれをわかっており、かなりの戦力を割いてきている。しかもその中に「ナンバーズ」が2人。
番号は7と9。決して上位の者ではないが、普通の兵達では、それこそ何千人かかっても相手にならないだろう。
(俺がここからいなくなり、総崩れになればこの要所を相手は素通り出来る。そうなれば相手が流れ込み城は落ちるだろう!だが、王に何かあれば……それこそ意味が……!!)
考えがまとまらない!どうする…!!
その時だった。
ドォオオオオン!!!
と戦場から爆音が響き、相手の軍の断末魔が聞こえる。
現れたのは
「我こそは『大嵐』!名を豪!!我が戦鎚!受けれるものなら受けてみよ!!」
もう一方でも悲鳴が上がる。
「拙者、『静寂の水面』名を瞬。推して参る」
「豪…!!瞬…!!」
俺が最も信頼する部下が駆けつけてくれた!
「仁さん!!事情は聞いた!ここは俺達に任せて早く王の元に…!!」
「ナンバーズもいるようですが、なに、拙者達2人と騎士団の精鋭なら貴方の帰還まで持ちこたえてみせましょう!」
ナンバーズは強い。おそらくこの2人でさえ及ばないだろう。
だが………!!
「すまん…!!耐えてくれ!!」
するとその言葉に2人はただ笑顔を返してくれた。
その後
俺は大戦終決後に、要所の城まで戻ってきたがそこにいたのは
「仁、おかえり」
俺の信頼する部下ではなく葵さんだった。
「私が来たとき、ここの戦況は苛烈を極めてた。豪と瞬は最初にいたナンバーズ2人を討ち取ったみたいだけど、2人ともその時の負傷で………」
葵さんの言葉は途中で切れる。おそらく俺のことを思いやってのことだろう。
「葵さん。俺の部下の『最期』だ。全て知りたい」
「………うん、2人とも重傷だったけど、そこからも鬼神のごとき働きで最期まで敵の侵入を一兵も許さなかった……許さなかったんだよ?最終的には業を煮やした相手がナンバーズを4人投入。私が到着した時には2人とも討ち取られていて、私がナンバーズを返り討ちにした。でも、2人は……」
そこで葵さんは視線を砦の門を見る。
そこには、
門の前で鎚を支えに、立ったまま絶命している豪……
門の所に片膝を立てた状態で、座り込みながら息を引き取っている瞬……
最期まで敵を一兵も通さない気迫を感じる、凄絶な死に様だった。
「……豪……………瞬……」
俺は2人の傍まで行き、
「貴公達は…最期まで己が役目を果たしたな。隊長として、同じ騎士団として誇りに思う!……だが、許してくれ。俺は……何も守れなかった。王を……大切な仲間を……そして何より君達、大切な友を……!許してくれ!……すまん!!」
顔からは涙が溢れていた。
だけど2人の傍にいると、どこかまた力が湧く自分がいた。
王との約束がある。
俺は守れなかった。守れなかったのだ!
ならばせめて
王との約束を果たそう!
そしていつか、君達、友に
自信を持って、誇りを胸に会える日を……!
ガキィィイイイイン!!
鍔迫り合いが続く!
しかし、仁さんは劣勢。相手の2人が強いのも当然あるが……
(やっぱり、部下の人だから躊躇いがあるのか……!!)
だかあれは死体だ。その証拠にオーラがネロと一緒の紫だし、所々身体の腐敗が進んでいる箇所もある。
「仁さん!!」
援護にと駆けようとする俺を
「………傑!大丈夫だ!……ここは俺に任せてくれ」
仁さんに制止される。
仁さんには何か考えがあるのか?
しかし、相手の2人は強い!そんな考える余裕なんて………
豪の嵐のような連撃
瞬の精密かつ素早い斬撃
仁さんはうまく捌いているが……
ガン!!
と豪の攻撃を受けた仁さんが吹き飛ぶ!
「仁さん!!」
「……大丈夫だ……!」
でも、仁さんの頭から血が…!
すると追い打ちに瞬が間を詰めてくる!
連続攻撃を捌く仁さんだが徐々に手傷が増えていく。
「んふふふ、流石の閃剣も、この2人相手には及びませんか?んー、ならばもう一つ良いことを教えてあげますよ」
絶対に良いことではないだろう顔をしているネロはこう言った。
「『大戦』のあの時、貴方達の王の所に敵兵が来たのを知らせにきたのは、「私の人形」です。あの時、王の所には敵兵など1人もいなかったのですよ?もちろん、ナンバーズもね」
その言葉を聞いた仁さんが………
キン!と自身の刀を鞘に戻す。
「降伏ですかー?それとも戦う意志が削がれましたか?何はともあれ貴方を殺して、私の新しい部下にしてあげましょう!さあ、2人とも止めを!!」
豪と瞬が一斉に襲いかかってくる!
しかし、仁さんは構えるどころか、片手を伸ばし
「『我が剣、我が意志をここに』」
と呪文を唱えた。すると何もない所から一振の刀が現れ仁さんはそれを掴む。そして……
「黒天流秘技…終の太刀・滅風」
ザン!!と振るわれた太刀筋。その瞬間
(…音が消えた!?いや……これは!!)
音というよりも、「空間全体が止まっている」!?
(そうか!あの刀……あの刀の質量がとんでもなく「重い」んだ!」
あの刀は普通の人では到底振るえない重量を持った刀だ!
どうやったかはわからないが、仁さんはそれを持ち前の超スピードで振るうことで「空間自体を消し飛ばした」
そしてそこには仮想ではあるが「真空」が発生し………
次の瞬間弾かれた空気が急速に戻る現象により、豪と瞬、そしてネロが「空間に吸い込まれる」!!
「…………!?………!!!」
まさかの事態に何かしゃべっているネロだが、この空間では音が聞こえない!
「この技から逃れる術はない……」
仁さんは吸い込まれる豪と瞬を見ながら
「…今度は……あの世で一杯やろう」
そう言った。
(笑った?)
死体であるはずの2人が空間に消える瞬間……確かに笑ったように見えた。
そしてネロごと巻き込んだ空間の収縮は終わり
「勝った……?やりましたね!仁さん!!」
「………いや、これは……」
仁さんは何か納得いかない様子で……
ピーンポーン、パーンポーン!!
遮絶全体に学校の案内放送のような音が響き渡る!
何だ!?
『ただいま、ネロ=マーテルの人形が壊されました。これより作戦をフェーズ2へ移行します』
と機械的な音声が流れた。
これは序章……
今夜の戦いは始まったばかりなのだ!
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ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
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