18 / 21
祝祭
しおりを挟む
気づけたのは日ごろの賜物で、追い付けたのは運が味方した御蔭だった。
「将軍!」
神武官たちが留めようとするのを振り切って、出した大声は何とか相手に届いた。
神官たちに先導されて歩いていた上司は、驚いたのか少し目を丸くした。
「マーシィ」
「将軍、これは、どうゆう、」
全力で駆けてきた。問い質す声は、呼吸に遮られて途切れ途切れだ。
「将軍補佐殿。お控えください。マーキス将軍は既に禊を終えられた身です。」
先導を務めていた神官が、上司とマーシィの間に割って入る。
神官の言に、視線で問いただすと上司は軽く肩をすくめた。
「まあ、これも縁ってやつだろうさ」
声を荒げようとしたマーシィより早く、飄々といつもの笑みを浮かべていた上司は、ふいに目を細めると、
「元気でやれ」
強く抱擁されて_放される。
決めてしまったのだと分かった。
衝撃に呆けるマーシィをもう振り返らずに、上司は神殿の奥へと消えていった。
呆然と見送りしたその足で、宿舎に戻って袖口に仕込まれた紙片に気付いた。
気づかれぬよう袖口に滑り込まされた走り書き。
書棚の隅に資金と通行証がある。必要だったら使え。
お役目人へ奉ぜられた場合、死亡届は出されず地位は凍結させる。
ゼオ=マーキスはまだ将軍位にある。
託されたのは、団員全てを国外へ通すことのできる通行証。示すのは将軍位にある者すら食い潰す、この国のあり方への危惧だ。
将軍さえ使い潰すなら、兵など幾ばくのものか。
正規軍が儀式の為にすべて足止めされた今が好機。
溢れ出ようとする嗚咽を噛み殺し、団員を集めるためにマーシィは駆けだした。
「将軍!」
神武官たちが留めようとするのを振り切って、出した大声は何とか相手に届いた。
神官たちに先導されて歩いていた上司は、驚いたのか少し目を丸くした。
「マーシィ」
「将軍、これは、どうゆう、」
全力で駆けてきた。問い質す声は、呼吸に遮られて途切れ途切れだ。
「将軍補佐殿。お控えください。マーキス将軍は既に禊を終えられた身です。」
先導を務めていた神官が、上司とマーシィの間に割って入る。
神官の言に、視線で問いただすと上司は軽く肩をすくめた。
「まあ、これも縁ってやつだろうさ」
声を荒げようとしたマーシィより早く、飄々といつもの笑みを浮かべていた上司は、ふいに目を細めると、
「元気でやれ」
強く抱擁されて_放される。
決めてしまったのだと分かった。
衝撃に呆けるマーシィをもう振り返らずに、上司は神殿の奥へと消えていった。
呆然と見送りしたその足で、宿舎に戻って袖口に仕込まれた紙片に気付いた。
気づかれぬよう袖口に滑り込まされた走り書き。
書棚の隅に資金と通行証がある。必要だったら使え。
お役目人へ奉ぜられた場合、死亡届は出されず地位は凍結させる。
ゼオ=マーキスはまだ将軍位にある。
託されたのは、団員全てを国外へ通すことのできる通行証。示すのは将軍位にある者すら食い潰す、この国のあり方への危惧だ。
将軍さえ使い潰すなら、兵など幾ばくのものか。
正規軍が儀式の為にすべて足止めされた今が好機。
溢れ出ようとする嗚咽を噛み殺し、団員を集めるためにマーシィは駆けだした。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。



飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる