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降船

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船を降りるには船長の降船許可証が必要だった。
より正確に言うなら、決められた文面の書面を船長に提出し、そこに船長がサインすることで許可が下りる。刻印シンボルも効力を失うらしい。

そこでゼオは一計を案じた。教育の一環で船長に読み書きを習っていた彼は、「自分の名前の練習ばかりで飽きたから船長キャプテンの名前はどう書くのか教えてくれ」と文字練習用の羊皮紙を差し出した。綴られた船長のサインを残して他を削り取り、交戦許可証の文面を書き写す。次の休憩地へ着いたその日に船長室のデスクの上、他の書類に紛れ込ませて下船したのだ。
霧を抜けるときは緊張したが、霧はゼオを迷わせることなく外へ出した。
前々から用意していた荷物を手に目星をつけていた傭兵団の拠点へ向けて移動する間に、聞かされていた船の寄港期間は過ぎた。ゼオの前には誰も現れず、どうやら降船許可証が受領されたらしいと分かりゼオはやっと緊張を解いた。
傭兵団の門戸を叩き、入団を許されて、それきり船へは戻らなかった。




手書きの降船許可証には自分のサイン。
「随分、面白いことをするじゃあないか」
近場の気配を探ってみても、既に影も形もない。呆れるほどに逃げ足が速い。
漸くそれなりに、欲のこもった眼でこっちを見るようになってきたと思っていたが。
「まあいい。かなりの力技だがな。制約ルールは満たしてる。そこまでして逃げたいならば逃がしてやるさ」



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