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船長は確かに約束を守った。ゼオが身を差し出せば、傭兵になるのに必要な知識を惜しむことなく与えた。
体を鍛え、剣を握らせ、魔術のイロハ(幸いなことに才能があった)を教えた。
船長との契約は、ほかの船員たちも薄々気づいてはいるだろうが、表立っては何も言われなかった。
ハン爺だけ、何かあれば相談しろと声を潜めて言ってきた。
船長室に呼ばれるのはかなり不定期だ。正に気が向いたときというのがしっくりくる頻度。人の世の港に停留し、女達を抱くことが出来る時には呼ばれずに、立ち寄る港が無く妖魔の姐さん方の寄り付かない海域を進む時にはよく呼ばれた。男の性欲とはそれ程に強いものかと偶さかハン爺とロープを定数括る作業の合間の世間話に出せば、ハン爺はすごい勢いで首を横に振った。
「人はさすがにあれほどじゃないぞ。まあ、この船の上じゃ、皆性欲なんて生き生きしたものはほとんど感じないがな」
船長室に呼ばれた数が両手の指の数を超えた頃からか、始めは息を切らしていた量の鍛錬を息を切らさずに完遂できるようになった頃からか、ゼオには心配事なことが出来た。
傭兵になる為に体を鍛えれば筋肉がつく。ゼオの体は順調に引き締まり、最近は徐々に背も伸びだした。ゼオが傭兵に成れるだけの力を蓄え終えるまで、船長に約束を反故にされずに続行することは可能だろうか?
何の気まぐれかゼオに手を出してはいるが、船長の女好きは周知の事実だ。
実際のところ、今までは人間の船乗りによくあるように女代わりに少年を使うということもなく、妖魔の姐さん方のいない海域は不機嫌に禁欲生活を送っていたらしい。(なのでゼオが船長に手を出され始めた頃はそれなりに水面下では騒がれていたと後からハン爺に聞いた)
女代わりに少年に手を出すようにはなったようだが、この身が男の形になればさすがに船長の食指も動かなくなるだろう。
でも、それではゼオと船長の契約が成り立たなくなる。
タイムリミット。
この体が男の形になる前に、全部修めてこの船を降りる。
ゼオは誰にも言わずにそう決めた。
キャプテンは行為の後、必ず「良い子だ」と頭を撫でた。
始めの内は抵抗していたそれも、何度もされるうちに諦めがでて、今ではすっかりされるがままだ。
「おん?ゼオお前さん声変わりじゃないか、それ」
数日前から喉が枯れ気味で、風邪か熱はとズーオが騒ぐのに居合わせた船員は何気ない調子でそう言った。
成長期だなあと目を細める見た目中年に見える男と裏腹に、ゼオは愕然と目を見張った。
声変わりが済めば、この体は男の形へと変化の舵を切る。
取引も、出来なくなる。
ああ、早く早く。この船を降りなくては。
体を鍛え、剣を握らせ、魔術のイロハ(幸いなことに才能があった)を教えた。
船長との契約は、ほかの船員たちも薄々気づいてはいるだろうが、表立っては何も言われなかった。
ハン爺だけ、何かあれば相談しろと声を潜めて言ってきた。
船長室に呼ばれるのはかなり不定期だ。正に気が向いたときというのがしっくりくる頻度。人の世の港に停留し、女達を抱くことが出来る時には呼ばれずに、立ち寄る港が無く妖魔の姐さん方の寄り付かない海域を進む時にはよく呼ばれた。男の性欲とはそれ程に強いものかと偶さかハン爺とロープを定数括る作業の合間の世間話に出せば、ハン爺はすごい勢いで首を横に振った。
「人はさすがにあれほどじゃないぞ。まあ、この船の上じゃ、皆性欲なんて生き生きしたものはほとんど感じないがな」
船長室に呼ばれた数が両手の指の数を超えた頃からか、始めは息を切らしていた量の鍛錬を息を切らさずに完遂できるようになった頃からか、ゼオには心配事なことが出来た。
傭兵になる為に体を鍛えれば筋肉がつく。ゼオの体は順調に引き締まり、最近は徐々に背も伸びだした。ゼオが傭兵に成れるだけの力を蓄え終えるまで、船長に約束を反故にされずに続行することは可能だろうか?
何の気まぐれかゼオに手を出してはいるが、船長の女好きは周知の事実だ。
実際のところ、今までは人間の船乗りによくあるように女代わりに少年を使うということもなく、妖魔の姐さん方のいない海域は不機嫌に禁欲生活を送っていたらしい。(なのでゼオが船長に手を出され始めた頃はそれなりに水面下では騒がれていたと後からハン爺に聞いた)
女代わりに少年に手を出すようにはなったようだが、この身が男の形になればさすがに船長の食指も動かなくなるだろう。
でも、それではゼオと船長の契約が成り立たなくなる。
タイムリミット。
この体が男の形になる前に、全部修めてこの船を降りる。
ゼオは誰にも言わずにそう決めた。
キャプテンは行為の後、必ず「良い子だ」と頭を撫でた。
始めの内は抵抗していたそれも、何度もされるうちに諦めがでて、今ではすっかりされるがままだ。
「おん?ゼオお前さん声変わりじゃないか、それ」
数日前から喉が枯れ気味で、風邪か熱はとズーオが騒ぐのに居合わせた船員は何気ない調子でそう言った。
成長期だなあと目を細める見た目中年に見える男と裏腹に、ゼオは愕然と目を見張った。
声変わりが済めば、この体は男の形へと変化の舵を切る。
取引も、出来なくなる。
ああ、早く早く。この船を降りなくては。
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