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寄港休暇
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幽霊船といえども、普通の船と同じく寄港はあるものらしい。
港に入ったのが夕べに近く、落ち着いた頃にはとっぷり日が暮れていた。
いつもよりもソワソワしている船員が多い。
皆妙に甲板に集まってくるなと首をかしげていると、船長が現れて「今から寄港休暇」と告げて去った。
歓声を上げる船員たちは我先にと外に繰り出していく。
「ゼオ」
肩を叩かれて振り返ればズーオが居た。
「寄港休暇初めてだろ?一緒に回らないか?」
契約が問題なのだと、ズーオは語った。
幽霊船を囲むように発生する霧は、船長と契約し刻印を身に宿す船員たちを外に出したがらない。
「霧を抜けるときに2人なら問題ないけど1人だと迷うし、2人以上でも出港時間過ぎても船に戻らなかったら、迎えがくるって。契約で俺たちは船長の持ち物って扱いだから」
まあ逆に言うなら、
「刻印で船長には俺たちがどこにいるか分かるから、置いてかれるとかは心配ないぜ」
寄港休暇の資金も受け取りいよいよという時に、ゼオは幾人の船員が船に残っていることに気付いた。
「霊とか外れ気味の奴らは船に残ること多いぜ。降りたいって気が起きないんだってさ」
※
霧を抜けて下り立った港は、夜の為、シンとしていた。
「船の周りを囲んでる霧を抜ければ、俺たちも彼岸に寄ったとこから人間に戻るから。皆、鯨飲馬食したり、女や少年を買ったりするんだけど」
お前どうする?と聞かれたので、飯と答えた。
了解と頷いたズーオは遠くに聞こえる騒めきの方へ歩き出す。
夜もやっている飯屋となると、どうしても色町に近くなる。
娼館を出た後とか入る前に食事したり、店で客と待ち合わせしたりするのに便利だと話していたのは、故郷の娼婦の姐さんたちだ。
2人が入ろうとしたのも色町に隣接した夜町辺りの飯屋だった。
赤い行燈を掲げた飯屋に入ろうとしたところで、気配を感じて右を見た。
少しだけ離れたところ、大きな声は聞こえるくらいの距離に大き目の娼館が見えた。
娼館に今まさに入らんとする船長がいた。
娼館の入り口の灯りに上半身を照らし出された船長の両の手は左右に侍らした女たちの肩に回されていた。キャッキャッと何やら楽し気に笑いさざめく一行は、ゼオの目の前で娼館の中に入っていった。
「船長って悪魔なんだよな」
飯屋の卓につき、目の前に並べられた料理を食べながら、話す話題は飯屋に入る直前にみた船長についてだった。
「そういう話だけど女遊びが好きらしくてさ。陸に上がると女の子たちと遊んでるの見たって話はよく聞くよ。海に出てる時もハルピュイアの姐さんたちと宜しくやってるって噂もある」
「…へぇ」
お盛んなことで。という一言は、包と一緒に喉奥へ押し込んだ。
港に入ったのが夕べに近く、落ち着いた頃にはとっぷり日が暮れていた。
いつもよりもソワソワしている船員が多い。
皆妙に甲板に集まってくるなと首をかしげていると、船長が現れて「今から寄港休暇」と告げて去った。
歓声を上げる船員たちは我先にと外に繰り出していく。
「ゼオ」
肩を叩かれて振り返ればズーオが居た。
「寄港休暇初めてだろ?一緒に回らないか?」
契約が問題なのだと、ズーオは語った。
幽霊船を囲むように発生する霧は、船長と契約し刻印を身に宿す船員たちを外に出したがらない。
「霧を抜けるときに2人なら問題ないけど1人だと迷うし、2人以上でも出港時間過ぎても船に戻らなかったら、迎えがくるって。契約で俺たちは船長の持ち物って扱いだから」
まあ逆に言うなら、
「刻印で船長には俺たちがどこにいるか分かるから、置いてかれるとかは心配ないぜ」
寄港休暇の資金も受け取りいよいよという時に、ゼオは幾人の船員が船に残っていることに気付いた。
「霊とか外れ気味の奴らは船に残ること多いぜ。降りたいって気が起きないんだってさ」
※
霧を抜けて下り立った港は、夜の為、シンとしていた。
「船の周りを囲んでる霧を抜ければ、俺たちも彼岸に寄ったとこから人間に戻るから。皆、鯨飲馬食したり、女や少年を買ったりするんだけど」
お前どうする?と聞かれたので、飯と答えた。
了解と頷いたズーオは遠くに聞こえる騒めきの方へ歩き出す。
夜もやっている飯屋となると、どうしても色町に近くなる。
娼館を出た後とか入る前に食事したり、店で客と待ち合わせしたりするのに便利だと話していたのは、故郷の娼婦の姐さんたちだ。
2人が入ろうとしたのも色町に隣接した夜町辺りの飯屋だった。
赤い行燈を掲げた飯屋に入ろうとしたところで、気配を感じて右を見た。
少しだけ離れたところ、大きな声は聞こえるくらいの距離に大き目の娼館が見えた。
娼館に今まさに入らんとする船長がいた。
娼館の入り口の灯りに上半身を照らし出された船長の両の手は左右に侍らした女たちの肩に回されていた。キャッキャッと何やら楽し気に笑いさざめく一行は、ゼオの目の前で娼館の中に入っていった。
「船長って悪魔なんだよな」
飯屋の卓につき、目の前に並べられた料理を食べながら、話す話題は飯屋に入る直前にみた船長についてだった。
「そういう話だけど女遊びが好きらしくてさ。陸に上がると女の子たちと遊んでるの見たって話はよく聞くよ。海に出てる時もハルピュイアの姐さんたちと宜しくやってるって噂もある」
「…へぇ」
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