駒鳥は何処へ行く？

駒鳥は何処へ行く？

森＿故郷

耳に聴こえる鳥の声。柔らかな光が瞼の向こうを明るく照らす。
そして清々しい森の香り。

瞼を開く。
地の底。地の最奥。そんな処に居た筈が、其処は何時の間にやら森の中。
懐かしい、森の中。
何処へ行けば良いのかは分かる。

下草を踏み、枝をそっと手で避けながら、歩を進める。
夏達も殆ど寄り付かぬ、冷たい水の泉の畔。
此の世界の真ん中に聳え立つ一本の大樹。
其の根元。
私達の代々の墓が在る。
懐から小さな壺を取り出す。
壊れないよう、失くさないように術を掛けておいたは正解だった。

両の手で土を掘る。
小さな壺だから、穴も小さくて充分だ。
「おやすみなさい。私の春」

唇寄せてそっと囁き、
そして、愛しい対を穴へと埋めた。