駒鳥は何処へ行く?

湯月@重陽

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駒鳥は何処へ行く?

迷宮

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歩くべき道は定まった。
一歩足を踏み出した。一歩、また一歩と歩を進める。
時に哀しみ、時に喜びと遭遇した。
一歩、また一歩と歩を進める。
歩いてきた道を振り返る。
辿ってきた道は何時の間にか遠く、夢見た場処は直ぐ近くに在った。

一歩、歩を進める。また一歩と歩を進める。

そして_。




迷宮の入口は広く、此処だけ薄く日が差して、其れほど物騒とも思われない。
奇妙と云えば奇妙。寒く、其れでいて暖かい_体感すら狂っているとするならば、随分と質が悪そうだ。

残りの団員達も次々に侵入する。
本来ならば入り口近くに団員を配置する。呪具を使って迷わぬ様に糸を掛ける。
今回には其れが使えない。最後何が起こるか分からず、其れならばいっそと総員で中心を目指す。
足下は砂と砂利。乾いて積もっている。

故事に曰く、迷宮とは一本道であると云う。





暫く行けば、段々と視界が闇に侵される。
ランタンに火を入れて、より深くへと歩を進めた。
数人が、横に並べる幅は在った。
警戒しながらも先へ進む。

足元に、よく見れば白い物が散らばっていた。

初めに見つけた死者は、半透明で戸惑った顔。
足早に其の前を通り過ぎた。
予測よりも死霊の数は少なかった。殆どが、彷徨う風情で道を歩く。

一部のみが襲ってきた。
触れられれば冷気。凍え、痺れ、生気を奪われる。

否、襲って来ている自覚も無いやも知れぬ。
寒い冬の日に、凍える手を火に翳す事を求めるような気持ち。
しかし、其れが我らを殺す。他を殺す。

伸ばされる其の手を切り払った。


奥ほどに古い死者であるものか、先へ行けば行くほど人の形を失い、影となり、靄となる。
触れれば、束の間、何かの映像を見る_其れは、ひょっとすると誰かの記憶。





「何故、冬_俺達は、里に留まれぬ」

其の若い冬の言葉は、冬達を動揺させた。
皆、その様に生きて来た。
習いと答えるは簡単なれど、若い冬は其れでは納得しなかった。
幾度となく繰り返す。

「何故、俺達は、里に留まれぬ」

眼に前にどかりと座った冬を見て、少しばかり鼻白んだ。
里では其れなり、見掛けた顔。
水鏡の向こうに見掛ける顔。

「何故、俺達が留まれぬのかを訊いて回ってるって?」

冬_ベダと云う名と知った_は、揶揄う様な瞳を此方に向けた。
是と答えたは、年長に逆らうが得策では無いと考えたから。

頷く冬は、俺の私見だが、と云い置いた。
「俺達が里に留まらんのは、制限されるを好まぬからだ」
留まると云うのは制限だ。其処に帰らねばならん。
其処を己の基点に選び、更には其の中から選ばねばならん。

「夏達は良くも、有るものの中から選ぼうと思える_俺には無理だ」
なあ、若い冬よ。此の世には、帰りたくも無い故郷と云うのも存在するものだぞ。

此方の瞳を覗き込む、ベダの明るい色の瞳の其の奥に、凍え凝った冷たさが在った。

去っていく冬_父と長く話したは、結局其れが最初で最後。
其れから直ぐに、彼は死んだ。

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