37 / 48
駒鳥は何処へ行く?
迷宮
しおりを挟む
歩くべき道は定まった。
一歩足を踏み出した。一歩、また一歩と歩を進める。
時に哀しみ、時に喜びと遭遇した。
一歩、また一歩と歩を進める。
歩いてきた道を振り返る。
辿ってきた道は何時の間にか遠く、夢見た場処は直ぐ近くに在った。
一歩、歩を進める。また一歩と歩を進める。
そして_。
迷宮の入口は広く、此処だけ薄く日が差して、其れほど物騒とも思われない。
奇妙と云えば奇妙。寒く、其れでいて暖かい_体感すら狂っているとするならば、随分と質が悪そうだ。
残りの団員達も次々に侵入する。
本来ならば入り口近くに団員を配置する。呪具を使って迷わぬ様に糸を掛ける。
今回には其れが使えない。最後何が起こるか分からず、其れならばいっそと総員で中心を目指す。
足下は砂と砂利。乾いて積もっている。
故事に曰く、迷宮とは一本道であると云う。
※
暫く行けば、段々と視界が闇に侵される。
ランタンに火を入れて、より深くへと歩を進めた。
数人が、横に並べる幅は在った。
警戒しながらも先へ進む。
足元に、よく見れば白い物が散らばっていた。
初めに見つけた死者は、半透明で戸惑った顔。
足早に其の前を通り過ぎた。
予測よりも死霊の数は少なかった。殆どが、彷徨う風情で道を歩く。
一部のみが襲ってきた。
触れられれば冷気。凍え、痺れ、生気を奪われる。
否、襲って来ている自覚も無いやも知れぬ。
寒い冬の日に、凍える手を火に翳す事を求めるような気持ち。
しかし、其れが我らを殺す。他を殺す。
伸ばされる其の手を切り払った。
奥ほどに古い死者であるものか、先へ行けば行くほど人の形を失い、影となり、靄となる。
触れれば、束の間、何かの映像を見る_其れは、ひょっとすると誰かの記憶。
※
「何故、冬_俺達は、里に留まれぬ」
其の若い冬の言葉は、冬達を動揺させた。
皆、その様に生きて来た。
習いと答えるは簡単なれど、若い冬は其れでは納得しなかった。
幾度となく繰り返す。
「何故、俺達は、里に留まれぬ」
眼に前にどかりと座った冬を見て、少しばかり鼻白んだ。
里では其れなり、見掛けた顔。
水鏡の向こうに見掛ける顔。
「何故、俺達が留まれぬのかを訊いて回ってるって?」
冬_ベダと云う名と知った_は、揶揄う様な瞳を此方に向けた。
是と答えたは、年長に逆らうが得策では無いと考えたから。
頷く冬は、俺の私見だが、と云い置いた。
「俺達が里に留まらんのは、制限されるを好まぬからだ」
留まると云うのは制限だ。其処に帰らねばならん。
其処を己の基点に選び、更には其の中から選ばねばならん。
「夏達は良くも、有るものの中から選ぼうと思える_俺には無理だ」
なあ、若い冬よ。此の世には、帰りたくも無い故郷と云うのも存在するものだぞ。
此方の瞳を覗き込む、ベダの明るい色の瞳の其の奥に、凍え凝った冷たさが在った。
去っていく冬_父と長く話したは、結局其れが最初で最後。
其れから直ぐに、彼は死んだ。
一歩足を踏み出した。一歩、また一歩と歩を進める。
時に哀しみ、時に喜びと遭遇した。
一歩、また一歩と歩を進める。
歩いてきた道を振り返る。
辿ってきた道は何時の間にか遠く、夢見た場処は直ぐ近くに在った。
一歩、歩を進める。また一歩と歩を進める。
そして_。
迷宮の入口は広く、此処だけ薄く日が差して、其れほど物騒とも思われない。
奇妙と云えば奇妙。寒く、其れでいて暖かい_体感すら狂っているとするならば、随分と質が悪そうだ。
残りの団員達も次々に侵入する。
本来ならば入り口近くに団員を配置する。呪具を使って迷わぬ様に糸を掛ける。
今回には其れが使えない。最後何が起こるか分からず、其れならばいっそと総員で中心を目指す。
足下は砂と砂利。乾いて積もっている。
故事に曰く、迷宮とは一本道であると云う。
※
暫く行けば、段々と視界が闇に侵される。
ランタンに火を入れて、より深くへと歩を進めた。
数人が、横に並べる幅は在った。
警戒しながらも先へ進む。
足元に、よく見れば白い物が散らばっていた。
初めに見つけた死者は、半透明で戸惑った顔。
足早に其の前を通り過ぎた。
予測よりも死霊の数は少なかった。殆どが、彷徨う風情で道を歩く。
一部のみが襲ってきた。
触れられれば冷気。凍え、痺れ、生気を奪われる。
否、襲って来ている自覚も無いやも知れぬ。
寒い冬の日に、凍える手を火に翳す事を求めるような気持ち。
しかし、其れが我らを殺す。他を殺す。
伸ばされる其の手を切り払った。
奥ほどに古い死者であるものか、先へ行けば行くほど人の形を失い、影となり、靄となる。
触れれば、束の間、何かの映像を見る_其れは、ひょっとすると誰かの記憶。
※
「何故、冬_俺達は、里に留まれぬ」
其の若い冬の言葉は、冬達を動揺させた。
皆、その様に生きて来た。
習いと答えるは簡単なれど、若い冬は其れでは納得しなかった。
幾度となく繰り返す。
「何故、俺達は、里に留まれぬ」
眼に前にどかりと座った冬を見て、少しばかり鼻白んだ。
里では其れなり、見掛けた顔。
水鏡の向こうに見掛ける顔。
「何故、俺達が留まれぬのかを訊いて回ってるって?」
冬_ベダと云う名と知った_は、揶揄う様な瞳を此方に向けた。
是と答えたは、年長に逆らうが得策では無いと考えたから。
頷く冬は、俺の私見だが、と云い置いた。
「俺達が里に留まらんのは、制限されるを好まぬからだ」
留まると云うのは制限だ。其処に帰らねばならん。
其処を己の基点に選び、更には其の中から選ばねばならん。
「夏達は良くも、有るものの中から選ぼうと思える_俺には無理だ」
なあ、若い冬よ。此の世には、帰りたくも無い故郷と云うのも存在するものだぞ。
此方の瞳を覗き込む、ベダの明るい色の瞳の其の奥に、凍え凝った冷たさが在った。
去っていく冬_父と長く話したは、結局其れが最初で最後。
其れから直ぐに、彼は死んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる