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駒鳥は何処へ行く?
古巣と落とし物
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辿り着いた港は何の因果か、昔、ゼオが将軍職を奉じていた国。
実はゼオにとっては、此れが目覚め以来最初の訪れである。
海峡は特に変わりなく、相も変わらず家々の煙突から、昼食を作る煙が上っている。
其れを見て、ほんの少しの安堵に息を吐く。
正直、船長に引き戻された時の事はゼオの記憶には殆どなく、気付いた時には船の中、海の上。船員達も努めて話題を避ける様子に敢えて踏み込まずに来た。
だから、どれ程酷い有様に壊されたかと思ったが…。
見廻し安心し、一歩踏み出した処で、
「其処のお兄さん、待っと呉れ!」
後ろから大声が聞こえてきた。
何事かと振り向けば、何と此方に向かって来る女が1人。
「ああ、良かった。やっと会えた。随分長く預かり物をしてたんだ」
渡された物はころりとゼオの掌に転がった。
面妖な親指の先ほどの大きさの_石?
見覚えなど無く何かを落とした覚えも無い。
_否、あった。
此れは、あの日に放り捨てて行った物。
目を見開いて、女の顔を凝視する。
にこりと笑った女の眼。此処らに良くある見慣れた色に、うっすらと金の紗が掛かる_人外の。
立方を形作る其れは光を反射しない鈍い色で、その癖、妙な重さが在った。
そんな代物だった。
あの日、ゼオから抜け落ちた心の欠片。
※
旅装に気付いた女に何処へ向けての旅かと問われ、口籠るゼオに被せるように何時の間にか近づいた団長が語る。静かに聴いて黙し、女は一つ頷くと懐から紙とペンを出して簡単な地図を描いた。
「50年ほど前までは、公にはずっと閉じていたんだ此の路は。土地も険しいし、其れだけに土地勘の有る奴らが直ぐに物取りに化けてね」
幸い海が在るから、山の路を閉じても問題無かったし。
書き上げた地図の一点を指し示す。
「此処が此の街。北上するには西に流れる川に沿って合流点を探しなよ。合流点の傍に大き目の街が在る。其処で足は手に入る筈さ」
手渡された地図を見つめ、団長は何度か頷いた。
「情報提供、有難く」
「気にしなさんな。此れだけじゃ釣り合わないほどの恩が在る」
幸運を、と云い置いて女は去っていった。
「信用が出来るか?」
「少なくとも其処らの情報通よりはな…」
何せクロは既に、海の上から煙のように消えた。地図を折り畳んで胸の内ポケットに仕舞う。
騎馬を求めるかとの声に、団長は応と答えた。
騎馬を整えるべく立ち寄った騎馬商いの店。
行先を告げて相応しい騎馬をと求めれば、砂漠用か岩山用かを選べと迫られた。
此の先は砂漠と切り立った岩山の世界。両方に適応した種は無いと云う。
交渉する隣では、砂漠を這う鱗ある動物と、岩山を跳ぶ蹄ある動物が、其々の鱗と毛皮を日の光に輝かせながら盛んに鳴き騒いでいた。
どうやら此の先、随分と景色が変わる。其処までの為に騎馬を整えるのは利に合わぬ様子。
凡その経路を告げれば、其れならば寄合いの乗物を使うのが一番と叫ばれた。
余程の事情知らずと見られたか、騎馬売りは乗物業の元締めを連れて来た。
喧々諤々お互いの条件が合ったところで、乗物屋の元締めと握手を交わす。
騎馬売りも仲介料をせしめたらしい。
実はゼオにとっては、此れが目覚め以来最初の訪れである。
海峡は特に変わりなく、相も変わらず家々の煙突から、昼食を作る煙が上っている。
其れを見て、ほんの少しの安堵に息を吐く。
正直、船長に引き戻された時の事はゼオの記憶には殆どなく、気付いた時には船の中、海の上。船員達も努めて話題を避ける様子に敢えて踏み込まずに来た。
だから、どれ程酷い有様に壊されたかと思ったが…。
見廻し安心し、一歩踏み出した処で、
「其処のお兄さん、待っと呉れ!」
後ろから大声が聞こえてきた。
何事かと振り向けば、何と此方に向かって来る女が1人。
「ああ、良かった。やっと会えた。随分長く預かり物をしてたんだ」
渡された物はころりとゼオの掌に転がった。
面妖な親指の先ほどの大きさの_石?
見覚えなど無く何かを落とした覚えも無い。
_否、あった。
此れは、あの日に放り捨てて行った物。
目を見開いて、女の顔を凝視する。
にこりと笑った女の眼。此処らに良くある見慣れた色に、うっすらと金の紗が掛かる_人外の。
立方を形作る其れは光を反射しない鈍い色で、その癖、妙な重さが在った。
そんな代物だった。
あの日、ゼオから抜け落ちた心の欠片。
※
旅装に気付いた女に何処へ向けての旅かと問われ、口籠るゼオに被せるように何時の間にか近づいた団長が語る。静かに聴いて黙し、女は一つ頷くと懐から紙とペンを出して簡単な地図を描いた。
「50年ほど前までは、公にはずっと閉じていたんだ此の路は。土地も険しいし、其れだけに土地勘の有る奴らが直ぐに物取りに化けてね」
幸い海が在るから、山の路を閉じても問題無かったし。
書き上げた地図の一点を指し示す。
「此処が此の街。北上するには西に流れる川に沿って合流点を探しなよ。合流点の傍に大き目の街が在る。其処で足は手に入る筈さ」
手渡された地図を見つめ、団長は何度か頷いた。
「情報提供、有難く」
「気にしなさんな。此れだけじゃ釣り合わないほどの恩が在る」
幸運を、と云い置いて女は去っていった。
「信用が出来るか?」
「少なくとも其処らの情報通よりはな…」
何せクロは既に、海の上から煙のように消えた。地図を折り畳んで胸の内ポケットに仕舞う。
騎馬を求めるかとの声に、団長は応と答えた。
騎馬を整えるべく立ち寄った騎馬商いの店。
行先を告げて相応しい騎馬をと求めれば、砂漠用か岩山用かを選べと迫られた。
此の先は砂漠と切り立った岩山の世界。両方に適応した種は無いと云う。
交渉する隣では、砂漠を這う鱗ある動物と、岩山を跳ぶ蹄ある動物が、其々の鱗と毛皮を日の光に輝かせながら盛んに鳴き騒いでいた。
どうやら此の先、随分と景色が変わる。其処までの為に騎馬を整えるのは利に合わぬ様子。
凡その経路を告げれば、其れならば寄合いの乗物を使うのが一番と叫ばれた。
余程の事情知らずと見られたか、騎馬売りは乗物業の元締めを連れて来た。
喧々諤々お互いの条件が合ったところで、乗物屋の元締めと握手を交わす。
騎馬売りも仲介料をせしめたらしい。
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