駒鳥は何処へ行く?

湯月@重陽

文字の大きさ
上 下
26 / 48
駒鳥は何処へ行く?

真ん中に在るもの

しおりを挟む
しかと確認をしたわけではない。
此の世には、知るという事がリスクとなる事もある。
知らずとも予想はつく。確実に碌でもない本性と判ってはいる。
判ってはいるが背に腹は代えられぬと、幾つかの財を手に団長_ジャック・エオンは幽霊船の船長を訪ねた。


扉だな。

「冥府への門と云い換えりゃ分かり易いか」

クロの示した場所、其処に、いったい何が在るのか。
財を差し出し問うたジャックに特に勿体ぶりもせずに船長は答えた。
其の目線はジャックの渡した財の中にあった大粒の紅玉に向けられている。
指先で丸く撫で、裏表と返して灯を透かす。

「春の神が死に、地母神が去ったタイミングから、あそこに在った冥府の門は閉ざされた。魂は冥府へ迎え入れられることが無くなった。憩わず、癒されず、人生で受けた傷を其の儘に次の人生へと巡る魂は、徐々に擦り切れて最後には散っていく」
俺は地母神の去った丁度そのタイミングで生まれた。此の船は僅かだが冥府のと繋がっている。空気穴に押し込める大きさまで擦り減った魂を冥府へ押し込めるのが俺の役目と云うわけだ。

「とはいえ、俺は海からは離れられない。海、海難方面の担当しか基本していないのさ」
陸の死人の幾ばくかは、あの御仁も戦場から回収しているだろうが、他がな。
世界は本来ある道筋から外れ、過剰な一度の供給の後はもう巡りも出来ないまま。春を失い冬に取り残された。

そして今、世界は擦り切れて息も絶え絶え。
恐らく、求められているのは門を開く事だろう。

「俺達に其れをしろと」
呻く。

くっと笑い声。
ジャックが視線を戻した先で、船長の眼が灯りを弾いてギラギラと光っていた。

「どちらかと云うと、お前さんらに求められているのは護衛だろう」
そもそも“真ん中”行きは、あのお嬢さんの求めだろう?
「あのお嬢さん、奇妙に魂が保たれている。普通に巡り巡った魂で、ああも欠けが少ないって云うのはまず見ないし、あり得ない」
_おまけに魂のあの印!

「印?」

「ああ、人にしちゃ随分見えるようだが、流石に魂の印は見えないか」
俺も話には聞いていたが、実物見るのは初めてだ。

「御当人に聞くのは止めておけ。幾ら貴様がお気に入りでも、逆鱗だ。_瞬時に魂を散らされても文句は云えん」
_あの記憶ない祭祀すら、穏便に接しているのを見ろよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...