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駒鳥は何処へ行く?
真ん中に在るもの
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しかと確認をしたわけではない。
此の世には、知るという事がリスクとなる事もある。
知らずとも予想はつく。確実に碌でもない本性と判ってはいる。
判ってはいるが背に腹は代えられぬと、幾つかの財を手に団長_ジャック・エオンは幽霊船の船長を訪ねた。
扉だな。
「冥府への門と云い換えりゃ分かり易いか」
クロの示した場所、其処に、いったい何が在るのか。
財を差し出し問うたジャックに特に勿体ぶりもせずに船長は答えた。
其の目線はジャックの渡した財の中にあった大粒の紅玉に向けられている。
指先で丸く撫で、裏表と返して灯を透かす。
「春の神が死に、地母神が去ったタイミングから、あそこに在った冥府の門は閉ざされた。魂は冥府へ迎え入れられることが無くなった。憩わず、癒されず、人生で受けた傷を其の儘に次の人生へと巡る魂は、徐々に擦り切れて最後には散っていく」
俺は地母神の去った丁度そのタイミングで生まれた。此の船は僅かだが冥府の空気穴と繋がっている。空気穴に押し込める大きさまで擦り減った魂を冥府へ押し込めるのが俺の役目と云うわけだ。
「とはいえ、俺は海からは離れられない。海、海難方面の担当しか基本していないのさ」
陸の死人の幾ばくかは、あの御仁も戦場から回収しているだろうが、他がな。
世界は本来ある道筋から外れ、過剰な一度の供給の後はもう巡りも出来ないまま。春を失い冬に取り残された。
そして今、世界は擦り切れて息も絶え絶え。
恐らく、求められているのは門を開く事だろう。
「俺達に其れをしろと」
呻く。
くっと笑い声。
ジャックが視線を戻した先で、船長の眼が灯りを弾いてギラギラと光っていた。
「どちらかと云うと、お前さんらに求められているのは護衛だろう」
そもそも“真ん中”行きは、あのお嬢さんの求めだろう?
「あのお嬢さん、奇妙に魂が保たれている。普通に巡り巡った魂で、ああも欠けが少ないって云うのはまず見ないし、あり得ない」
_おまけに魂のあの印!
「印?」
「ああ、人にしちゃ随分見えるようだが、流石に魂の印は見えないか」
俺も話には聞いていたが、実物見るのは初めてだ。
「御当人に聞くのは止めておけ。幾ら貴様がお気に入りでも、逆鱗だ。_瞬時に魂を散らされても文句は云えん」
_あの記憶ない祭祀すら、穏便に接しているのを見ろよ。
此の世には、知るという事がリスクとなる事もある。
知らずとも予想はつく。確実に碌でもない本性と判ってはいる。
判ってはいるが背に腹は代えられぬと、幾つかの財を手に団長_ジャック・エオンは幽霊船の船長を訪ねた。
扉だな。
「冥府への門と云い換えりゃ分かり易いか」
クロの示した場所、其処に、いったい何が在るのか。
財を差し出し問うたジャックに特に勿体ぶりもせずに船長は答えた。
其の目線はジャックの渡した財の中にあった大粒の紅玉に向けられている。
指先で丸く撫で、裏表と返して灯を透かす。
「春の神が死に、地母神が去ったタイミングから、あそこに在った冥府の門は閉ざされた。魂は冥府へ迎え入れられることが無くなった。憩わず、癒されず、人生で受けた傷を其の儘に次の人生へと巡る魂は、徐々に擦り切れて最後には散っていく」
俺は地母神の去った丁度そのタイミングで生まれた。此の船は僅かだが冥府の空気穴と繋がっている。空気穴に押し込める大きさまで擦り減った魂を冥府へ押し込めるのが俺の役目と云うわけだ。
「とはいえ、俺は海からは離れられない。海、海難方面の担当しか基本していないのさ」
陸の死人の幾ばくかは、あの御仁も戦場から回収しているだろうが、他がな。
世界は本来ある道筋から外れ、過剰な一度の供給の後はもう巡りも出来ないまま。春を失い冬に取り残された。
そして今、世界は擦り切れて息も絶え絶え。
恐らく、求められているのは門を開く事だろう。
「俺達に其れをしろと」
呻く。
くっと笑い声。
ジャックが視線を戻した先で、船長の眼が灯りを弾いてギラギラと光っていた。
「どちらかと云うと、お前さんらに求められているのは護衛だろう」
そもそも“真ん中”行きは、あのお嬢さんの求めだろう?
「あのお嬢さん、奇妙に魂が保たれている。普通に巡り巡った魂で、ああも欠けが少ないって云うのはまず見ないし、あり得ない」
_おまけに魂のあの印!
「印?」
「ああ、人にしちゃ随分見えるようだが、流石に魂の印は見えないか」
俺も話には聞いていたが、実物見るのは初めてだ。
「御当人に聞くのは止めておけ。幾ら貴様がお気に入りでも、逆鱗だ。_瞬時に魂を散らされても文句は云えん」
_あの記憶ない祭祀すら、穏便に接しているのを見ろよ。
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