駒鳥は何処へ行く？

駒鳥は何処へ行く？

忠告

子どもが眠りについた頃を見計らって寝台へ戻る。
死んだように眠る子どもは、涙に浸された目元も噛み締めた唇も腫れて、色に疲れた風情が強い。
引き戻してこっち、恋欲混じりの視線など無かったように素知らぬ振りで、此の子どもは此方を見ない。
気の乗らぬ様子で褥に上がり、揺さぶり果てさせれば早々に寝台を降りたがった。
そうなれば皮肉にも早々降ろしてやることも出来ず、増々一回の床入りは長くなった。
最近気紛れに続けているゼオの雄根を弄る戯れは、いつも酷く嫌がられる。
難しい子どもだ。

此度の外出中、交わした呪いが一度、発動した気配が在った。
ゼオの気配が其処まで慌てた様でなかったので静観したが、此の子どもに其処まで近付きたい相手が居た事が意外だった。

…まあ、暫くは此の船の上。此の子どもには逃げる場所も無い。
船長は寝台に潜り込むと、ゼオを抱き込んで眠った。


今宵も子どもが眠りにつく迄の時間、外をうろつく船長に、掛かる声が在る。
「随分と酷い仕打ちだな」
「…陸の御仁が何の御用か」
霧は相手の表情を隠し、悠々と高い処をとる存在は、船長よりも断然格上だった。
「アレは俺のもの。如何扱おうが、他人にとやかく云われる筋は無い筈」

影が首を傾ける。音もなく飛んだ身体が、逆さまに船長を覗き込む。

其れこそお前、何云ってるんだ。
「アルバトロスなんてのは、勝手に飛び出し、勝手に誰かに肩入れて、勝手に墜ちるものだろう？」

其の言に眉を顰める。
アルバトロス＿アホウドリ。
余りに容易く人に捕まり数を減らす其れ。
そして其れは禍福の鳥。
生きていれば福を運び、
死しては災を寄せる。

沈黙する船長に、甲板に降り立った相手＿陸の一位は肩を竦める。
「まあ、只のお節介の忠告だ」
お前らはお前らの好きにすると良いさ。