駒鳥は何処へ行く？

駒鳥は何処へ行く？

人ならざる業

手配書が出ていると、告げてきたのは団長だった。
＿宿の女主人が見つけて来たものらしい。

余り出来の良くない似顔絵。
ゼオが主犯として賞金首、同行者としてリゼにも賞金が掛けられていた。

実際の優先順は恐らく逆だろうが…、何の為に探されている？
何の為にあの村を襲ったのかが、分からない。

しかし斯う来ると、都市に紛れ込んだは正解だった。
都市には自由の気風があって、其れは一部の公的権威と対立する。
とてもとても分かり易く言うと、村や町で犯罪起こしたものが逃げ込むのが都市だ。


※


市場にリゼを連れて行ったのは、後から考えれば、不正解で正解。
探されていて見つかったのはリゼだった。しかしゼオだけ追われたとして、宿屋で待つリゼには最低限の身を守る術と伝手しかない。
不正解で正解＿取り合えず、最悪ではない。

小さな体を担ぎ上げて走るゼオと、並走する数人の団員、追う男達。
細い路地を進みつつ、置いてある荷を攪乱とばかり蹴り崩す。
今日は身軽なものが多い編成。都市内を逃げるには、全くもって悪くない。
駆けあがり、跳び、何なら逆走して擦り抜ける。
最悪このまま都市を抜ける。宿屋もかなり分前払いをしているので問題ない。

誤算は、彼方あちらに付く術者の腕が桁違いであった事。


※


どれ程撒こうとも直ぐに影を見る。
何時の間にやら先回り。
「見られてるな」
と、呟いたのは誰だったか。

気付けば袋小路に追い込まれた。
おまけに此処まで来て更に気付いた。
相対する相手。剣の刃が弾かれる。＿遠隔で誰かが防壁を敷いている。
絶体絶命と云う他ない。


1つだけ心当たりがある。
己一人なら、団員達だけなら、絶対使わないと断言できる方法が。

初めて、＿ゼオは乞うた。

視界がぐらりぐらりと揺れる。
頭を攪拌されている様に気持ち悪い。
やった感想は一言。二度とやらん。

ふらふらと体勢を崩す団員は、周りにいる驚き跳び退いた存在に害意が無いと気付いている。
呆気に取られた表情の団員も居る＿如何やら他の隊の人間も纏めて移動させたものらしい。
甲板を叩く靴の音が近づいて来る。

「随分と、客が多いな。ゼオ」
「＿船長」
顎を捕られて、顔の向きを正される。
此方を覗き込む男の眼は、人外の金。

髪を揺らす潮風。此処は霧に囲まれた幽霊船。つまり此処は海の上。
ゼオが乞うて、船長悪魔が応えて喚び寄せた。

人外の術は、彼らに一瞬で千里を越えさせた。