駒鳥は何処へ行く？

駒鳥は何処へ行く？

姉弟の事情

王はすっかり無貌の夜生まれを此の災禍の贄とする事に決めたらしい。
鋭い声は人文官の怠惰を糾弾する。
「一刻も早く探し出して殺せ！」
声は謁見の間を越えて、部屋前に詰めていた男の耳にも届いた。

一夜に生まれる赤子は一人だけではない。男も、もう何人も命を受けて殺したが、何時になったら終わるのか、終わりのない作業ではある。
隣国との仲が不穏故に命を受けて橋を落としたついで、其の近辺の無貌の夜生まれも殺して来いと云われた。アクシデントこそ在れ、命は果した心算であったのだが。

「無貌の夜生まれは未だ生きているわ」
卦を出す姉を凝視する。
王への報告には術師も同席する。姉ほどの精度は無くとも此の城の筆頭術師。生死の判定程度は出来る。

途中で飛び込んできた男の背後。駆け寄る人影が、助け起こしていた少女が一人。
生き残ったとすればあの娘。あの娘が無貌の夜生まれ。
簡単な任と見ていたが、大事に為って来ている予感がする。

「娘は今何処に居る？姉者」

姉は一つの都市の名を挙げた。