駒鳥は何処へ行く?

湯月@重陽

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駒鳥は何処へ行く?

少女の日常

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リゼは人呼びの笛の音に気付いて手を止めた。
手早く身近のものを纏めてしまう。此の家の主はなかなかに厳しく、昼休みに道具の類が出しっ放しになっているのを嫌う。昼休みをとったら又作業をするのだから出しっ放しの方が作業を再開しやすいのにとリゼはいつも不満だった。

戸口を出るとリゼは走り出した。

初めに行き合ったのは斜向かいに住むトマスの息子で、リゼを見ると鼻を鳴らした。
リゼは忽ち嫌な気持ちになった。
少年は祭りや市で出会う他所の女の子達にはいい顔をする癖、リゼにばかりそんな風に失礼な態度をとる。なので、たった2人の同世代の幼馴染だとしてもリゼは彼を苦手にしていた。
そっと走る速度を緩めて距離をとる。

暫く走れば村の中心。
煮炊きの煙が秋空に上がる。
少年とほとんど間を置かずに駆け込むと、列に並んで大きな煮炊き鍋からこれまた大きな匙で取り分けられたスープと一人分のパンを受け取った。
人の群れから離れた処_それでいて丁度良く日の当たる処に腰を下ろす。
スープに固くなり始めたパンを突っ込んで浸し、匙で底に沈んだ野菜と少しの肉を掬う。
今日は当たり。肉は彼女の好きな鳥肉だった。

人の声が聞こえて彼女は耳を聳てる。

今から夫婦で動いてんのか。お熱いねー。
ちげーよ。誰があんな陰気な暴力女。
何云ってんだ。将来の夫婦じゃねーか。


聞こえてきたのは少女よりも一回り年上の青年と、件の幼馴染の声。
急に食欲がなくなった。
_此の村に同年代の男女は2人きり。
つまり他の村から嫁ぐ人が居ないならば、私が外の村に嫁がぬならば、私の夫はあの失礼な少年なのだ。

「あの子の子は生みたくない」
あの子とは良い家庭を作れない。

呟く声は、風に攫われた。
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