駒鳥は何処へ行く？

駒鳥は何処へ行く？

橋

滔滔と流れる川の岸。
僅かに泡立つ水の彼方此方に木の欠片、橋の名残が顕れていた。
川面に突き出した木材は酷くささけて、随分と強い力が加わったのだと訴える。

「此れはまた、随分と酷い有様で」

呆れたように零れ落ちた言葉は、宙を空しく舞った。
しかし如何して、的確な言葉ではあった。
無残に屍を晒す橋＿元橋は、今では何の役割も果たす事が無い。
団員の感想には応えずに、首を廻らせた団長が探したのは代わりの手段。渡し舟。
橋の壊れた後、目端の利くものが代わりに舟を揃えて、「おや旦那方、如何です？」と商いに精を出しても不思議ではない。

「妙だな」

川沿いの岸は静か。見える範囲には舟の影も形もない。
主街道でない脇道と云えど、全く人通りが無いという事もないだろう。特に、こんな風にわざわざ橋を架けるような所は。

厄介事の匂いがした。

今から主街道に戻るかとも考えたが、
「なあ、団長。今から戻れば足止めをくらいそうじゃないか？ 少し剣呑だが、なあに、急いで駆け抜ければ、大した事もあるまいよ」
団員の言う通り、先を急ぎたい道行きに、労力割いて何時終わるとも知れぬ待機に付き合わされるも辛い。
仕方がないと馬首を返した。