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第117話 ショーンの添い寝
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自分でケンの部屋に居残ると言ったから、それもこれも自分のせいではあるが……
「少し狭いですね」
「一人用のベッドだもん、当たり前だよ」
「すみません」
「ねえショーン、なんか最近弱気じゃない?謝ってばっかだし、僕が熱でうなされてた時も変だったし」
そうなのかもしれない。
自分ではよく分からないけれど。
忘れてた嫌な記憶を、ケンの看病で思い出してしまった。
それは、ケンのせいではなく、弱い自分のせい。
看病がトラウマなんて人に話したら笑われてしまうに違いない。
「何か悩み事があるなら僕に話してね」
「え……」
「ボクに言えなかったらニールでもいいんだよ?」
初めて出会ったときは小さくて頼りない子供だったケンの口から、大人な言葉が紡がれる。
「分かりました……」
「本当だよ?一人で抱え込んでたらいつか爆発するよ?」
狭いベッドの上ではどうしてもお互いの体温を感じる距離になってしまう。
熱は収まったのだろうが、自分より体温の高いケンの肌を布越しに感じた。
一枚の掛け布団を二人で使い、狭い狭いと文句を言いながらお互いが居心地の良い位置を見つける。
「話は変わりますが、ケンは、船生活を始める前のことを覚えてますか?」
「僕?」
背中を私の方に向けたケンが1ミリも動かなくなった。
聞いてはいけない質問をしてしまっただろうか。
船長に拾われてこの船に乗った彼にそれ以前の記憶があるのだろうか。
「おぼえて……ないかな。」
「そうですか……幼かったですもんね」
「うん……」
どことなく気まずい空気が流れた気がした。
居づらそうに体を動かしたケンに、咄嗟に手を伸ばし頭を撫でる。
「僕ね、船好きなんだ」
「船がですか?」
「んー……船がっていうより、船での生活かなー。いつでも誰かがいるでしょ?絶対一人にはならない。目が覚めてから寝るまで皆に囲まれているの」
ケンが体ごとくるっとこちらに向いた。
「最高だよね。仲間で、友達で、家族なの。ここにいれば、一生孤独にはならないなって」
「一人になるのが怖いんですか?」
「……」
その質問にケンが応えることはなかった。
「人間はね、1人じゃ生きられないんだって。船長が言ってた」
間近にある瞳が眠そうに瞬きを繰り返す。
「ショーンもだよ。一人じゃ生きられないんだよ」
「そうですね……」
「だから頼ってね」
大きく欠伸をしたケンが瞼を閉じた。
「おやすみなさい、ケン」
「ん……」
癖のある髪が私の顔を擽り、小さな寝息が胸元を触れた。
「少し狭いですね」
「一人用のベッドだもん、当たり前だよ」
「すみません」
「ねえショーン、なんか最近弱気じゃない?謝ってばっかだし、僕が熱でうなされてた時も変だったし」
そうなのかもしれない。
自分ではよく分からないけれど。
忘れてた嫌な記憶を、ケンの看病で思い出してしまった。
それは、ケンのせいではなく、弱い自分のせい。
看病がトラウマなんて人に話したら笑われてしまうに違いない。
「何か悩み事があるなら僕に話してね」
「え……」
「ボクに言えなかったらニールでもいいんだよ?」
初めて出会ったときは小さくて頼りない子供だったケンの口から、大人な言葉が紡がれる。
「分かりました……」
「本当だよ?一人で抱え込んでたらいつか爆発するよ?」
狭いベッドの上ではどうしてもお互いの体温を感じる距離になってしまう。
熱は収まったのだろうが、自分より体温の高いケンの肌を布越しに感じた。
一枚の掛け布団を二人で使い、狭い狭いと文句を言いながらお互いが居心地の良い位置を見つける。
「話は変わりますが、ケンは、船生活を始める前のことを覚えてますか?」
「僕?」
背中を私の方に向けたケンが1ミリも動かなくなった。
聞いてはいけない質問をしてしまっただろうか。
船長に拾われてこの船に乗った彼にそれ以前の記憶があるのだろうか。
「おぼえて……ないかな。」
「そうですか……幼かったですもんね」
「うん……」
どことなく気まずい空気が流れた気がした。
居づらそうに体を動かしたケンに、咄嗟に手を伸ばし頭を撫でる。
「僕ね、船好きなんだ」
「船がですか?」
「んー……船がっていうより、船での生活かなー。いつでも誰かがいるでしょ?絶対一人にはならない。目が覚めてから寝るまで皆に囲まれているの」
ケンが体ごとくるっとこちらに向いた。
「最高だよね。仲間で、友達で、家族なの。ここにいれば、一生孤独にはならないなって」
「一人になるのが怖いんですか?」
「……」
その質問にケンが応えることはなかった。
「人間はね、1人じゃ生きられないんだって。船長が言ってた」
間近にある瞳が眠そうに瞬きを繰り返す。
「ショーンもだよ。一人じゃ生きられないんだよ」
「そうですね……」
「だから頼ってね」
大きく欠伸をしたケンが瞼を閉じた。
「おやすみなさい、ケン」
「ん……」
癖のある髪が私の顔を擽り、小さな寝息が胸元を触れた。
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