運命の乗船

綿天モグ

文字の大きさ
上 下
116 / 125

第116話 ケンの怒鳴りこみ

しおりを挟む
 えーっとえっと、結果から話すと、アサが何で泣いてたかを知った僕が、怒ってニールの部屋に乗り込んで怒鳴ったわけなんだけど。

 夜の当直が終わって僕の部屋に来たショーンが、病人の僕がいないことに驚いてニールの部屋に飛び込み、大声を出してエネルギー不足になった僕を回収してくれたわけなんだ。

「ケン、風邪をひいてるときぐらい大人しくできませんか」
「僕は十分に休んだもん!しかも!熱は下がってたんだよ。今気分悪いのは全部ニールのせいだ!」
「それは、どういう意味ですか」
「それがね」

 ショーンにも手短にニールがサイと抱き着いていた話をした。そのせいでアサが泣いていたってこともね。

 長く大きなため息が聞こえてきて、首を振ったショーンが僕の胸まで毛布を掛けた。

「あの方は……」
「馬鹿だよね」
「それは使ってはいけない言葉です」
「じゃあなんて言えばいいの」

 ほら、「馬鹿」しかないじゃないかぁ!

「あの二人は、その後大丈夫なのですか?私が部屋に行ったとき、アサは大人しくニールの横に座っていましたけど」
「僕が怒ってきたからね!もう大丈夫なはずだよ!アサにはね、ニールなんて捨てて僕のとこおいでって言ったんだけど、「ダメ」って言われた!」
「え?!」

 僕のほうがアサとお似合いなのになー。ニールよりしっかりしてるし!

「そしたらニールが何度も謝ったの。で、恋人がいる分際で他の人に抱き着くなんてありえない!って説教してたわけなんだけど」
「はい……で、ヒートアップしすぎて熱が出たというわけですね」
「うん。多分。船長にも怒られたって言ってたし、これで反省してくれるといいよね」

 僕はいい仕事をしたのかもしれない!これでニールが浮気することはないだろうしね。万が一アサがニールを捨てることになったら僕がいるし!

 
「咳、大丈夫ですか?熱が高かった時にはそれほどせき込んでなかったと思いますが」
「ばい菌を体から出してるんだよきっと!別にどこが痛いとかないから平気平気!」

 ショーンが部屋に戻ってきたってことは、もうそろそろ寝る時間だよね。結局一度も時計確認できてないんだけど、多分それくらいなはず。


「今日はもう部屋に戻っちゃうの、ショーン?」
「え?!」

 もう!さっきから「え!」ばっかりじゃないかー。僕の言葉通じてないわけ?

「だーかーらー、部屋に戻っちゃうの?って言ってんの。だって僕の熱も落ち着いてきたし、ここにいる意味ないでしょ?」
「そうですが、熱が上がってしまったらどうしますか?」
「どうもこうも、寝るしかない気がするけど……」
「……心配なので、私もここで寝ます」

 くっつけば二人で寝れないこともないけど、本当に?!



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

神獣の花嫁

綾里 ハスミ
BL
 親に酷い扱いを受けて育った主人公と、角が欠けていたゆえに不吉と言われて育った神獣の二人が出会って恋をする話。 <角欠けの神獣×幸薄い主人公>

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

つまりは相思相愛

nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。 限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。 とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。 最初からR表現です、ご注意ください。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...