110 / 125
第110話 ニールのピンチ!
しおりを挟む
「アサ、ただいまって、あれ?」
薬を飲んだケンはあの後スースーと寝息を立て始めて、当直が始まるまで部屋に残ると言ったショーンを残して、俺は自室に戻ってきた。
「どこ行ったんだ?」
すぐにもどる、と言ったけど、ここに戻ってくるまでに時間がかかりすぎた。
待ちくたびれて部屋を出ていったんだろう。
同じ船に乗ってるんだ、歩きまわれば見つかるはずだ。
と、楽観的に考えられるが、数か月前の事件もある。他の輩がアサを部屋に連れ込もうとするとは考えづらいが、あり得ないと拭えるような不安ではない。
綺麗好きなアサのおかげで俺たちの部屋は整理整頓が出来ている。先ほどまでここにアサがいた形跡なんてないくらい、しっかりと物は仕舞われていた。
「ケンの部屋ではないよな」
俺といなければ、大体アサはケンといるが、さっきまで俺はケンの部屋にいた。行き違いになった可能性もあるが、同じ廊下で繋がってるんだ。その可能性は少ないだろう。
と、なるとアサが行く場所は限られている。
一秒も早くアサに会いたくて、俺は部屋を出た。
肩につくまで伸びてきたアサの黒髪は、船生活をしているのが信じられないくらい艶々している。掬うと指の隙間からサラサラと零れ落ちる直毛は俺のお気に入りだ。
早くあの髪に触れて、そこに隠れた項を撫でて……
って妄想している場合じゃない。
「おい、ニールっ!」
まずは談話室を確認しようと廊下を歩いていると、背後から腕を掴まれた。
「うわっ、って、え?!船長。今日はよく会いますね」
「何呑気なこと言ってんだお前は!」
「え?!」
背中に押し付けられた手首がギシギシ音を立てそうだ。痛くて顔をしかめてもお構いなしに船長はそのままで俺の体を壁に追いやる。
「お前な、ほんっとふざけてるよな」
「はぁ?!何のことですか?!」
「自分のしたことわかってねーのか?」
俺、なんかしたか?
腕が痛いってのもあるが、サイを見つける前に船長に会ったばかりだ。その時は何も言っていなかったから、あれから俺がなんかしたってことか?
「俺は、さっきまでケンの部屋にいましたけど」
「それだけかぁ?」
「いや、それ以外してないっすよ!マジで腕痛いんで離してください!」
パッと手を離され俺はバランスを崩して額を壁にぶつけた。
「いってー」
「で、本当にそれ以外はしてないのか?」
「船長、何の脈絡もなく攻撃してこないでくださいよ」
俺を見つめる目は鋭くて、いつも以上に怖い。なんだよ、俺が何したって言うんだ?!
「アサを泣かしたら、許さねーって俺言ったよな?」
「え、アサ?!」
アサの名前が出てきて驚いた俺は身体が固まったように動けなかった。
薬を飲んだケンはあの後スースーと寝息を立て始めて、当直が始まるまで部屋に残ると言ったショーンを残して、俺は自室に戻ってきた。
「どこ行ったんだ?」
すぐにもどる、と言ったけど、ここに戻ってくるまでに時間がかかりすぎた。
待ちくたびれて部屋を出ていったんだろう。
同じ船に乗ってるんだ、歩きまわれば見つかるはずだ。
と、楽観的に考えられるが、数か月前の事件もある。他の輩がアサを部屋に連れ込もうとするとは考えづらいが、あり得ないと拭えるような不安ではない。
綺麗好きなアサのおかげで俺たちの部屋は整理整頓が出来ている。先ほどまでここにアサがいた形跡なんてないくらい、しっかりと物は仕舞われていた。
「ケンの部屋ではないよな」
俺といなければ、大体アサはケンといるが、さっきまで俺はケンの部屋にいた。行き違いになった可能性もあるが、同じ廊下で繋がってるんだ。その可能性は少ないだろう。
と、なるとアサが行く場所は限られている。
一秒も早くアサに会いたくて、俺は部屋を出た。
肩につくまで伸びてきたアサの黒髪は、船生活をしているのが信じられないくらい艶々している。掬うと指の隙間からサラサラと零れ落ちる直毛は俺のお気に入りだ。
早くあの髪に触れて、そこに隠れた項を撫でて……
って妄想している場合じゃない。
「おい、ニールっ!」
まずは談話室を確認しようと廊下を歩いていると、背後から腕を掴まれた。
「うわっ、って、え?!船長。今日はよく会いますね」
「何呑気なこと言ってんだお前は!」
「え?!」
背中に押し付けられた手首がギシギシ音を立てそうだ。痛くて顔をしかめてもお構いなしに船長はそのままで俺の体を壁に追いやる。
「お前な、ほんっとふざけてるよな」
「はぁ?!何のことですか?!」
「自分のしたことわかってねーのか?」
俺、なんかしたか?
腕が痛いってのもあるが、サイを見つける前に船長に会ったばかりだ。その時は何も言っていなかったから、あれから俺がなんかしたってことか?
「俺は、さっきまでケンの部屋にいましたけど」
「それだけかぁ?」
「いや、それ以外してないっすよ!マジで腕痛いんで離してください!」
パッと手を離され俺はバランスを崩して額を壁にぶつけた。
「いってー」
「で、本当にそれ以外はしてないのか?」
「船長、何の脈絡もなく攻撃してこないでくださいよ」
俺を見つめる目は鋭くて、いつも以上に怖い。なんだよ、俺が何したって言うんだ?!
「アサを泣かしたら、許さねーって俺言ったよな?」
「え、アサ?!」
アサの名前が出てきて驚いた俺は身体が固まったように動けなかった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。


つまりは相思相愛
nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。
限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。
とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。
最初からR表現です、ご注意ください。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる