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第107話 ショーンの役立たず
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「役立たずですみません……」
自分の口から洩れた声は情けないものだった。
薬を取りに行ったニールが部屋を去ってから何時間も経っているような気がする。握った手から、ケンの体温が伝わる。力の入らない指先はカタカタと震えていて、痛々しい。
大丈夫大丈夫と繰り返さないと、自分が崩れてしまいそうだ。
こんなにも弱い人間ではないはずなのに。これでも短い人生で色んなことを経験して色々なことを乗り越えてきたと思っていたのに。
実際には、トラウマである看病をすることとなっただけで、床が崩れ落ちてしまう錯覚を起こすほどに私は役立たずの人間だったようだ。
「ショーン……?」
「ケン、起こしてしまいましたか?」
「ん……背中いた、い……」
仰向けに寝ていた体をこちらに向けると、いつも元気なケンは、眉毛を下げて「えへへ」と笑った。この子は分かっているのだろう。私が不安に思っていることを。
「シャツが汗で濡れてしまいましたね。着替えますか?」
「んー……」
熱で火照った体はうまく動かないようだ。寝そべったままのケンのシャツを四苦八苦しながら脱がせると、ブルっと背中を震わせた。
「寒いですか?」
「んー……暑いんだけど、寒い感じ」
バスタオルで体を拭いてやろうと立ち上がると、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「はい」
「俺だ」
「新手の詐欺みたいな答え方ですね」
「誰だか分かってんだろ、早く開けろ」
薬と水を手に持ったニールが扉の向こうから顔を出した。
「と、役立たずですみません……」
自分の口から洩れた声は情けないものだった。
薬を取りに行ったニールが部屋を去ってから何時間も経っているような気がする。握った手から、ケンの体温が伝わる。力の入らない指先はカタカタと震えていて、痛々しい。
大丈夫大丈夫と繰り返さないと、自分が崩れてしまいそうだ。
こんなにも弱い人間ではないはずなのに。これでも短い人生で色んなことを経験して色々なことを乗り越えてきたと思っていたのに。
実際には、トラウマである看病をすることとなっただけで、床が崩れ落ちてしまう錯覚を起こすほどに私は役立たずの人間だったようだ。
「ショーン……?」
「ケン、起こしてしまいましたか?」
「ん……背中いた、い……」
仰向けに寝ていた体をこちらに向けると、いつも元気なケンは、眉毛を下げて「えへへ」と笑った。この子は分かっているのだろう。私が不安に思っていることを。
「シャツが汗で濡れてしまいましたね。着替えますか?」
「んー……」
熱で火照った体はうまく動かないようだ。寝そべったままのケンのシャツを四苦八苦しながら脱がせると、ブルっと背中を震わせた。
「寒いですか?」
「んー……暑いんだけど、寒い感じ」
バスタオルで体を拭いてやろうと立ち上がると、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「はい」
「俺だ」
「新手の詐欺みたいな答え方ですね」
「誰だか分かってんだろ、早く開けろ」
薬と水を手に持ったニールが扉の向こうから顔を出した。
「と、サイ、ですか?」
「ショーンさんっ、お疲れ様です!」
自分の口から洩れた声は情けないものだった。
薬を取りに行ったニールが部屋を去ってから何時間も経っているような気がする。握った手から、ケンの体温が伝わる。力の入らない指先はカタカタと震えていて、痛々しい。
大丈夫大丈夫と繰り返さないと、自分が崩れてしまいそうだ。
こんなにも弱い人間ではないはずなのに。これでも短い人生で色んなことを経験して色々なことを乗り越えてきたと思っていたのに。
実際には、トラウマである看病をすることとなっただけで、床が崩れ落ちてしまう錯覚を起こすほどに私は役立たずの人間だったようだ。
「ショーン……?」
「ケン、起こしてしまいましたか?」
「ん……背中いた、い……」
仰向けに寝ていた体をこちらに向けると、いつも元気なケンは、眉毛を下げて「えへへ」と笑った。この子は分かっているのだろう。私が不安に思っていることを。
「シャツが汗で濡れてしまいましたね。着替えますか?」
「んー……」
熱で火照った体はうまく動かないようだ。寝そべったままのケンのシャツを四苦八苦しながら脱がせると、ブルっと背中を震わせた。
「寒いですか?」
「んー……暑いんだけど、寒い感じ」
バスタオルで体を拭いてやろうと立ち上がると、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「はい」
「俺だ」
「新手の詐欺みたいな答え方ですね」
「誰だか分かってんだろ、早く開けろ」
薬と水を手に持ったニールが扉の向こうから顔を出した。
「と、役立たずですみません……」
自分の口から洩れた声は情けないものだった。
薬を取りに行ったニールが部屋を去ってから何時間も経っているような気がする。握った手から、ケンの体温が伝わる。力の入らない指先はカタカタと震えていて、痛々しい。
大丈夫大丈夫と繰り返さないと、自分が崩れてしまいそうだ。
こんなにも弱い人間ではないはずなのに。これでも短い人生で色んなことを経験して色々なことを乗り越えてきたと思っていたのに。
実際には、トラウマである看病をすることとなっただけで、床が崩れ落ちてしまう錯覚を起こすほどに私は役立たずの人間だったようだ。
「ショーン……?」
「ケン、起こしてしまいましたか?」
「ん……背中いた、い……」
仰向けに寝ていた体をこちらに向けると、いつも元気なケンは、眉毛を下げて「えへへ」と笑った。この子は分かっているのだろう。私が不安に思っていることを。
「シャツが汗で濡れてしまいましたね。着替えますか?」
「んー……」
熱で火照った体はうまく動かないようだ。寝そべったままのケンのシャツを四苦八苦しながら脱がせると、ブルっと背中を震わせた。
「寒いですか?」
「んー……暑いんだけど、寒い感じ」
バスタオルで体を拭いてやろうと立ち上がると、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「はい」
「俺だ」
「新手の詐欺みたいな答え方ですね」
「誰だか分かってんだろ、早く開けろ」
薬と水を手に持ったニールが扉の向こうから顔を出した。
「と、サイ、ですか?」
「ショーンさんっ、お疲れ様です!」
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