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第102話 ニールは邪魔をされる
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「アサ、紅茶のおかわりはいるか?」
「ンー、ダイジョブ」
ケンの部屋には長居しなかった。
慌てふためき真っ青になりながら看病するショーンと、それを見て豪快に笑いながらしっかり指示を出す船長、俺とアサ、合計4人が部屋に集まればどう考えても狭くて息苦しい。
どう考えたって病人が苦しんでるってのに大人が集まってわいわいやってる場合じゃないだろう。
ってことで、2時間くらい前に心配そうにケンの手を握っていたアサと自室に戻ってきた。
倉庫の掃除が終わっていないことは気にかかるが、あと2時間で当直が始まる。それまでここでアサとの時間を楽しんでいても怒られないだろう。
いや、やっぱり少し早めにここを出て、適当にあの部屋を片付けてから仕事に行ったほうがいいか…元々って言えば、罰であの部屋掃除してたんだしな。放置したら絶対船長に怒られるよな……
「ケン、ダイジョブ?……ネツ?」
「ああ、明日には元気になってんだろ。バカは風邪ひかないって言うのにな」
「ンン?ナ、二?」
俺が言ったことを理解できなかった時のアサの困り顔は極上に可愛い。
ベッドに腰を掛け、傍に立つ俺を見上げる上目づかいの瞳が細まり、おいしそうな唇がへの字に曲がった。
頑張って俺らの言葉を勉強しているアサが愛おしい。早く会話をしたくてしょうがないという気持ちを顔に出すときもあるが、その気持ちは俺にだってある。すぐにでも、思っていることを全て伝えてほしい。
でも、今こうやってたどたどしく会話している瞬間だって大切なんだ。
きっと何年も先に、今を振り返って、この時を笑い話にする日が来るはずだから。
「ニール、ワカラ、ナイ」
「ああ、なんて言えばいいかな」
黒髪を撫でるとさらりと指の間を擽る。アサの髪は俺の髪と違って真っすぐで艶々している。船生活が長い俺の髪は太陽にも海水にも負けて痛んでいるし、色素も薄い。
「ケンはいつも元気だろ?」
「ゲンキ。ウン」
「だから明日になれば元気になると思う」
「アシ、タ……」
覚えた言葉を思い出そうとくるくる頭が回っているのが目に見える。
俺の可愛いアサは必至で理解しようと眉間にしわを寄せ始めた。
「アシタ、ケン、ゲンキ」
「そう、そうだ」
「ヤクソク?」
「はは、約束はできないな」
「ナイ?」
悲しそうな表情をさせたいわけではないが、さすがに健康の回復を約束できるような力は俺には備わっていない。
「大丈夫だ、アサ」
「ン……」
ああ、この子は友達思いだから、今本当に心配をしているのだろう。ケン、お前これ以上悪化したら許さねえ。
「!?」
ちょうどアサの唇を頂こうとした時だ。
規則正しいノックが部屋の扉を鳴らした。
「ニール!ニール!いますか!私です!あの!ケンが!助けてください!」
騒がしい奴の登場だ。
「ンー、ダイジョブ」
ケンの部屋には長居しなかった。
慌てふためき真っ青になりながら看病するショーンと、それを見て豪快に笑いながらしっかり指示を出す船長、俺とアサ、合計4人が部屋に集まればどう考えても狭くて息苦しい。
どう考えたって病人が苦しんでるってのに大人が集まってわいわいやってる場合じゃないだろう。
ってことで、2時間くらい前に心配そうにケンの手を握っていたアサと自室に戻ってきた。
倉庫の掃除が終わっていないことは気にかかるが、あと2時間で当直が始まる。それまでここでアサとの時間を楽しんでいても怒られないだろう。
いや、やっぱり少し早めにここを出て、適当にあの部屋を片付けてから仕事に行ったほうがいいか…元々って言えば、罰であの部屋掃除してたんだしな。放置したら絶対船長に怒られるよな……
「ケン、ダイジョブ?……ネツ?」
「ああ、明日には元気になってんだろ。バカは風邪ひかないって言うのにな」
「ンン?ナ、二?」
俺が言ったことを理解できなかった時のアサの困り顔は極上に可愛い。
ベッドに腰を掛け、傍に立つ俺を見上げる上目づかいの瞳が細まり、おいしそうな唇がへの字に曲がった。
頑張って俺らの言葉を勉強しているアサが愛おしい。早く会話をしたくてしょうがないという気持ちを顔に出すときもあるが、その気持ちは俺にだってある。すぐにでも、思っていることを全て伝えてほしい。
でも、今こうやってたどたどしく会話している瞬間だって大切なんだ。
きっと何年も先に、今を振り返って、この時を笑い話にする日が来るはずだから。
「ニール、ワカラ、ナイ」
「ああ、なんて言えばいいかな」
黒髪を撫でるとさらりと指の間を擽る。アサの髪は俺の髪と違って真っすぐで艶々している。船生活が長い俺の髪は太陽にも海水にも負けて痛んでいるし、色素も薄い。
「ケンはいつも元気だろ?」
「ゲンキ。ウン」
「だから明日になれば元気になると思う」
「アシ、タ……」
覚えた言葉を思い出そうとくるくる頭が回っているのが目に見える。
俺の可愛いアサは必至で理解しようと眉間にしわを寄せ始めた。
「アシタ、ケン、ゲンキ」
「そう、そうだ」
「ヤクソク?」
「はは、約束はできないな」
「ナイ?」
悲しそうな表情をさせたいわけではないが、さすがに健康の回復を約束できるような力は俺には備わっていない。
「大丈夫だ、アサ」
「ン……」
ああ、この子は友達思いだから、今本当に心配をしているのだろう。ケン、お前これ以上悪化したら許さねえ。
「!?」
ちょうどアサの唇を頂こうとした時だ。
規則正しいノックが部屋の扉を鳴らした。
「ニール!ニール!いますか!私です!あの!ケンが!助けてください!」
騒がしい奴の登場だ。
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